ウクライナ問題をめぐりロシアとアメリカ、EUの対立
ウクライナ情勢の緊迫の度を増している背景の中で、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島への軍事介入をめぐり、アメリカとEU欧州連合、及びロシアとの対立が深化してきました。
米大統領、記者団にロシアに対する措置を発表
アメリカのオバマ大統領は3日、ホワイトハウスで、記者団に対し、ロシアを孤立化させる一連の経済的、外交的な措置を検討していると表明しました。欧米とロシアの貿易・投資の停止やG8=主要8カ国からのロシア追放のほか、ロシア政府高官を対象にしたビザ発給の停止や資産凍結なども検討されています。大統領はまた、プーチン政権に対し、このまま介入を続けるか、外交的手段を用いて国益を実現するか「二つの道」があると迫りました。一方、アメリカ国防総省は、ロシアとの全ての軍事交流を凍結すると発表しました、軍事演習や互いの艦船の寄港などが含まれるということです。
こうした中、EUは3日、ブリュッセルで緊急外相理事会を開き、ロシアがウクライナ問題で緊張緩和に向けた対応を取らなければ「的を絞った措置」を導入するとして限定的な制裁検討の方針を固めました。理事会声明は、「ロシアが軍を撤退させない場合、EUがロシアと行っている査証手続きの緩和交渉を停止する」と明記しました。声明は「標的を絞った方策を検討する」としてさらなる制裁の可能性を示しましたが、ロシア軍に対する撤退期限は設けませんでした。その一方、声明は平和的解決に向け、EUが国連やOSCE=全欧安保協力機構と共に調停努力を続ける方針を示しました。EUは6日、ウクライナ情勢をめぐって緊急首脳会議を開く予定です。
この動きを受け、ロシアのプーチン大統領はクリミアへの軍事介入はウクライナの過激派により脅かされているロシア人住民の保護と事態収拾を目指すものだ」と主張しました。
実際、EUはロシアに対する制裁を警告しましたが、資産凍結や武器禁輸などの制裁は見送られ、ロシアとの正面からの対決を避けました。バルト海諸国など、一部のEU諸国は、石油・天然ガスをすべてロシアからの輸入に頼っています。ドイツ、フランス、イタリアなどの主要国も輸入する天然ガスの25~35%はロシア産です。
長期的には調達先の多様化が必要で、アメリカや中東からの天然ガス輸入も可能とみられます。ただ、中欧諸国などでは輸送コストがかさむため、隣国からの輸入に頼らざるを得ないとみられます。また、欧州では、キプロス、イタリアなど一部の国がロシアとの経済関係が深く、EU内でのコンセンサス形成は難しいとしています。ロンドンにもロシア出身の富裕層が多数住んでおり、イギリスも富裕層に対する制裁には難色を示すとみられています。
専門家らはロシアによるクリミア半島の掌握は、冷戦終結後の国際関係システムに最大の試練を与えたと分析しました。しかし、試練を乗り越えるためには制裁を適用することではなく、開放的かつ正直な対話を行う必要があるとしています。