チュニジア情勢

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チュニジア暫定政府の緊急会議
(写真:AFP)

北アフリカのチュニジアでは、野党幹部の暗殺をきっかけにイスラム系の政権と世俗派(せぞくは)の野党の対立が深まるなか、憲法を制定するための議会が一時停止されることになり、政治情勢が混迷の度合いを深めています。

チュニジアでは先月25日、イスラム系の政権を批判していた世俗派の野党連合の幹部が暗殺されたことを受けて、野党の支持者らが政権を退陣に追い込むまで抗議行動を続けるとして、連日、大規模なデモを行っています。

こうしたなか、今月6日に開かれた憲法を制定するための議会で、定員の3分の1近くのおよそ60人の議員が内閣の総辞職などを求めて議会を欠席しました。

欠席した議員の中には、野党だけでなく与党の議員も含まれていて、議長は「政権と野党勢力の対話が行われるまで議会を停止する」として、憲法制定議会の一時停止を宣言しました。

世俗派野党幹部、ブラヒミ制憲議会議員の暗殺事件に抗議して先月27日までに、世俗派などの同議会議員52人が辞職しました。同議会の定数は217議席です。世俗派は議会解散や挙国一致政権の樹立を求めています。

野党にとって、エジプトでムスリム同胞団出身のモルシ氏が軍によって大統領職を解任されたことが追い風となっており、イスラム系の政権を退陣させ、憲法を制定するための議会を解散させることを狙っています。数週間後には、暫定議会が憲法の草案を取りまとめ、新たな選挙関連法を成立させることになっていました。

2年前の民主化運動で長期独裁政権が崩壊して、「アラブの春」の先駆けとなったチュニジアでは、民主的な選挙でイスラム系の政権が誕生しましたが、今年2月に続いて先月にも野党の幹部が暗殺されたことで、与野党の対立はさらに深まっています。

政権側は今年10月までに憲法を制定し、12月には議会選挙を行いたいとしていますが、憲法制定議会の停止によってスケジュールに遅れが出るのは避けられず、チュニジアの政治情勢は混迷の度合いを深めています。

これを受け、チュニジア暫定政権のラライズ首相は先月29日、国営テレビを通じ、総選挙を12月17日に行う意向を表明しました。穏健派イスラム政党アンナハダが主導する政権の退陣を求める世俗派のデモが拡大する中、民意を問う姿勢を示して混乱収拾を図ったとみられます。

ケンブリッジ大学のマチーゼン氏は「短期的視点で考えるならば、アラブの春に対する湾岸諸国の回答はセクト主義でした。

しかし、経済の多様性の欠如、若年層の失業率増加、政治改革を要求する時代的背景、近隣諸国の統制力低下などの要因で、新しい答えを見つけなくてはならないであろう」と述べています。

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