ユネスコの国際識字賞を受賞した『農村部に本を』という活動



ハー  こんにちは、ハーです。

ソン こんにちは、ソンです。

ハー 今日のハノイ便りは、ベトナムで行われているある活動についてということですが。

ソン はい。ハーさんは、ユネスコの国際識字賞は知ってますか?

ハー そういう賞があるのは初めて知りました。識字は、読み書きできることですよね?

ソン そうです。識字教育の分野での効果的な活動に対して与えられる賞です。昨年2016年の国際識字賞に、ベトナムのグエン・クアン・タックさんが提唱した「農村部に本を」というプログラムが選ばれたんです。

ハー すごいですね。今日はその活動をご紹介するんですね。

ソン そうです。まず、グエン・クアン・タックさんについてお話します。

ハー どんな人なんですか?


ユネスコの国際識字賞を受賞した『農村部に本を』という活動 - ảnh 1
(写真:tuoitre.vn)

ソン タックさんはベトナム中部ハティン省の出身です。この地方は経済的に豊かなところと言えないんですが、向学心のある人が多いと言われています。

ハー 何か理由があるんですか?

ソン 貧しさから抜け出すには、学問を身に付けることが1番という考えがあるようです。

ハー なるほど。タックさん自身もそうだったんですか?

ソン そうなんです。やはり恵まれない家庭に育ったタックさんは、そういった人達が本を手に入れる機会が少ないということをよくわかっているんです。

ハー それで「農村部に本を」という活動を始めたんですね。

ソン はい。1999年にハティン省にある大学を卒業したタックさんは、高収入を得られる仕事につきました。

ハー 勉強をがんばった甲斐がありましたね。どんな仕事ですか?

ソン 英語の通訳など、いくつか経験したそうです。でも、それを辞めて、ずっと心に描いていた夢の実現に向けて動き出したんです。

ハー 夢のために経済的な物を捨てるというのは、なかなかできませんよね。

ソン そうですね。タックさんの夢だったこのプログラムは、ベトナム農村部の子供たちの読書習慣を作り出すのが目的です。農村部に図書館と本棚を作るというものです。

ハー プログラムはいつから始まったんですか?

ソン 2003年です。

ハー ええ、すごい。もう15年くらいやってるんですね。相当な覚悟がないと続けられないですよね。タックさんに話を聞いています。

(テープ)

「初めはハティン省で、個人の家に本棚を作りました。親戚など血縁関係のある人達が利用できるその家系の本棚です。その後、北部のタイビン省で、『農村部に本を』というプログラムを本格的に始めました。今では、タイビン省から北部の港湾都市ハイフォン、ホン川デルタ地方のナムディン省、ハイズオン省、フンイエン省、バクニン省、東北部のバクザン省などハノイ周辺の地方や、北部山岳地帯のソンラ省や中部のタインホア省、ゲアン省、ハティン省などに活動は広がっています。初めにハティン省で作った本棚は8台でしたが、今は400台になっています。」

ハー タックさん、がんばっていますね。この活動の資金はどこから来るんでしょう?タックさんの自分のお金ですか?

ソン 初めは、自分のお金と何人かの個人からの寄付金によって、家系の本棚を作っていたそうです。その後、各地方の行政府と社会からの支援を得るため、こういった本棚がもたらす効果を積極的にPRしたということです。

ハー 基本的な質問ですが、本棚は棚だけでなくて、本も一緒にそこに寄付するというものですよね?どんな方法で宣伝したんでしょう?

ソン 一例としては、日本で言ういわゆるどぶ板活動でしょうか。タックさんは2010年におよそ1800キロメートルを歩いて、ベトナムを縦断しました。

ハー ええ?ベトナムを歩いて縦断ですか?それだけでもすごいのに、活動をPRしながらですよね?

ソン そうなんです。歩きながら、『農村部に本を』という活動への参加を人々に呼びかけたということです。こういった並外れた努力もあって、現在はベトナム国内外の多くの人からの支援があります。

ハー 広めたい、知ってほしいというタックさんの強い思いもあると思いますけど、活動理念もそれだけしっかりしているんですよね。

ソン はい。このプログラムは、農村部での慢性的な本不足を解消すると同時に、読書による知的水準の向上や社会的責任の分かち合いという狙いもあるんです。

ハー 社会的責任の分かち合いというのは、どういうことでしょう?

ソン 活動に参加することで、それぞれが社会の中で役割を持ち、それを果たすという責任と意識を身に付けるということです。

ハー なるほど。自分のことだけでなくて、他人のことも考えるという意識ですね。具体的な活動としては、本の寄付、本棚作りですか?

ソン 本棚作りと、その管理人を置くなどして、人々に本をより身近に感じてもらうためのいろいろなことを行っています。

ハー 管理人?ですか?本棚は個人の家に設置してあるんですよね?

ソン 初めはそうだったんですが、段々規模が大きくなってきて、本棚をいくつか集めて小さい図書館のようになっているところが増えてきたんだそうです。

ハー なるほど。活動の規模が大きくなると、それだけお金もかかってきますよね。資金は寄付がメインですか?

ソン そうです。こつこつと集めて、この10年でベトナム全土の26の省や市で9千の図書館を建設したそうです。

ユネスコの国際識字賞を受賞した『農村部に本を』という活動 - ảnh 2


ハー
この『農村部に本を』という活動の意義と成果は、ベトナムだけでなく、世界中の国が参考になるものとなっているそうです。ベトナムのファム・サイン・チャウ外務次官補の話です。

(テープ)

「このプログラムは大きな成功を収めています。農村部の人々の読み書きの力の向上に大きく貢献したことによって、ユネスコの国際識字賞2016に選ばれたのです。」

ハー さらに、チャウ外務次官補は、「この活動が勉学を奨励する社会作りにいい影響を与えている」と話します。

(テープ)

「この賞はベトナムにとって特別な意義を持っています。ベトナムは向学心が旺盛な国であり、貧しい人々が直面している困難を分かち合うことができる国だということです。誇りに思っています。」

ハー 現在、ベトナム全土でおよそ5千台の本棚が作られ、農村部に住むおよそ20万人が本に親しむことのできる環境が作られました。

ソン タックさんは、2020年までに農村部のおよそ2千万人がこのプログラムの恩恵を受けられるようにするという目標を掲げています。

ハー タックさんの話です。

(テープ)

「本棚を30万台設置する目標です。ゼロから1台作るまでには長い時間がかかりました。1台から10台まではそれより短い時間で、10台から100台まで作った時は、より時間が短縮できました。100台から1000台まではさらに短い時間でできたので、1万台から30万台まではあっという間だと思っています。3年以内に全国各地に、本棚が設置されると信じています。」

ハー このプログラム『農村部に本を』は、これからもタックさんの強い信念のもとで、目標を次々と達成していくのではないでしょうか。では、おしまいに一曲お送りしましょう。

(曲)

今日のハノイ便りは、去年のユネスコの国際識字賞を受賞した『農村部に本を』という活動についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで

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