少数民族の“囲炉りを大切にする”文化


ホアイ
  こんにちは、ホアイです。 

ソン  こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは少数民族の囲炉りについてお伝えしようと思います。

ホアイ 多民族国家ベトナムには54の民族が一緒に住んでいますが、その内、キン族は総人口の9割を占めています。残りの53の民族は少数民族で、それぞれは独特の文化を誇りにしています。しかし、多くの少数民族に共通する一点があります。それは、“囲炉りを大切にする”文化です。

少数民族の“囲炉りを大切にする”文化 - ảnh 1

ソン 現代は生活様式が変わり、電気やガスのシステムキッチンの調理器具が流行っていますが、多くの少数民族の家では、必ず囲炉りを置かなければならないという習慣が今なお保たれていますね。

ホアイ はい。少数民族の囲炉りは単なる調理器具ではなく、その民族の文化や、習慣、信仰、考え方などを物語るものでもありますからね。

ソン そうですね。少数民族はどんなものにでも魂があると考えています。特に、囲炉りには竈の神が棲んでいて、その家族の面倒を見てくれているということです。それでは、幾つかの少数民族の囲炉りについてご紹介しましょう。

ホアイ はい。まず始めはモン族から。2009年の国勢調査によりますと、モン族の人口はおよそ110万人で、54民族の中で8番目です。モン族の精神生活にとって、囲炉りはとても重要な存在で、タブーがたくさんあります。ハノイ市内にあるベトナム民族学博物館の研究者ヴィ・ヴァン・アンさんは次のように語っています。

(テープ)

「モン族は、囲炉りの設置を重大なことと考えています。かつてはもちろんでしたが、今も変わりません。家を建てた時、囲炉りの設置で経験が豊富な人に頼んで、囲炉りを設置してもらいます。設置した後、すぐフライパンを上に載せます。モン族は自分のフライパンを貸すのをタブーとしています。貸すしかたければ、石を1個囲炉りの中央に置かなければなりません。」

ホアイ モン族の家には必ず囲炉りが2つあります。大きい囲炉りは真ん中の居間にあります。そこでは、毎日煮炊きしたり、冬は寒さ対策としての役割を果たしたりする場所ですが、神様や先祖を祀る神聖な場所でもあります。だから、よそ者がここに入るときは所有者の許可が必要です。

少数民族の“囲炉りを大切にする”文化 - ảnh 2

ソン それに対し、小さい囲炉りは真ん中の居間の後ろの部屋にあります。小さい囲炉りは、豚の餌や酒造りのためのものです。小さい囲炉りもタブーがあります。例えば、足を囲炉りに置いたり、火箸で囲炉りを叩いたりすることは禁じられています。もしそんなことをすれば、飼っている豚などが病気にかかりやすい、大きくなりにくいと考えるんです。

ホアイ 一方、ベトナム中部ゲアン省に集中的に居住しているコ・ム族の家は大小を問わず、3つの囲炉りを設置しなければなりませんね。

ソン そうですね。コ・ム族の家は高床式の家で、部屋が3つあるのが一般的です。一つ目の囲炉りは、右の部屋にあって、毎日の食事をつくるための場所です。そして、その囲炉りの周りの空間は居間として来客を接待する場所でもあります。

ホアイ 2つ目の囲炉りは、真ん中の部屋にあります。この囲炉裏は先祖を祀るところで、「祀る囲炉り」とも呼ばれています。そして、3つ目の囲炉りは左の部屋にあって、おこわを作るためだけに使用されます。

ソン コ・ム族の考えでは、囲炉りは火の神様の生まれ変わりであり、生命と繁殖を象徴するものです。これらの3つの囲炉りのうち、真ん中の部屋にある「祀る囲炉り」はコ・ム族の精神生活に欠かせない存在で、最も重要な囲炉りです。

ホアイ 結婚式や長寿祝いなど家族の重要な行事は、「祀る囲炉裏」の空間で行われます。先ほどの文化研究者ヴィ・ヴァン・アンさんは次のように話しました。

(テープ)

「囲炉りに関するコ・ム族の信仰の特徴として、先祖を祀るための囲炉りはその目的にしか使われないということです。先祖は神様のような存在で、清らかさを求めるんです。そのため、先祖を祀る儀式で、牛肉などを供え物として使われますが、供え物を調理する時、この「祀る囲炉り」以外に、他の囲炉りを使ってはいけません。」

ホアイ ベトナム北西部に居住している少数民族ハニー族の中にも必ず囲炉りがあります。ハニー族は水と火を大切にしていて、その中で、水は生活の源で、火は生活を維持する力だと考えるのです。囲炉りは家族の暮らしを守ってくれる竈神の家で、家族の生活で重要な位置を占めています。

ソン ハニー族は、火は石から生まれたと考えているので、囲炉りの中には石が一つ置かれてあります。これは神聖な石で、竈神の具現とされています。

ホアイ ハニー族が日常生活のほとんどを過ごすところは囲炉りの周りです。囲炉りは、煮たり焼いたりおかずを作るところであり、神聖な空間でもあります。そのため、囲炉りはタブーがたくさんあります。例えば、石に足をのせることや、石を火箸や棒で叩くことなどが禁止されます。  

ソン 囲炉りの手入れをするのは女性だけで、囲炉りを見ると、その家の女性の性格がわかるとよく言われています。毎朝起きて、すぐ女性が最初にやるのは囲炉りに火をつけてお湯を沸かすことです。これは、神様のおかげで、家族の面倒をよくみているという意味です。そして、お正月や祝日には、囲炉りに火をつけるのは神様と先祖の恩に報いるという意味があります。

ホアイ 囲炉りはベトナム中部高原地帯テイグエン地方に居住している各少数民族にとっても重要な存在です。ラグライ族の家の中にいつも火をつける囲炉りがあります。 囲炉りの周りは家族団らんの場所で、祖父母が子や孫に叙事詩や昔話を語る習慣があります。

ソン 叙事詩を朗読するのはどこでも良いですが、囲炉りの周りが一番いい雰囲気だとよく言われています。囲炉りの炎がともる幽玄な雰囲気の中で、叙事詩の精神をより体感できるような気がするんでしょうね。

ホアイ ラグライ族の他、エデ族やバナ族などテイグエン地方に住むほとんどの少数民族は囲炉りを日常生活でも精神生活でも重要な存在とされています。囲炉りの炎は家族の豊かさや愛情を象徴しているのかもしれませんね。

では、おしまいに一曲お送りしましょう。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、少数民族の囲炉りについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。


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