洪水とともに

(VOVWORLD) -ベトナム南部のメコンデルタ地域では、毎年8月から11月にかけて、メコン川の上流で洪水が発生します。
洪水とともに  - ảnh 1 コイ科のリンと呼ばれる魚はメコンデルタ地域の特産物として知られる。

その為、川沿いの多くの地域が浸水します。しかし、この定期的な洪水は、この地域の住民にとって、自然災害という認識ではなくなっています。洪水と共に生活するという考えなのです。洪水は、農地を休ませ、メコンデルタ地域全体の土壌に砂や粘土を運んでくるからです。更に、洪水シーズンにはメコン川の水位が上昇して、上流から下流に、多くの水と共に大量の魚介類が流れてきます。そこで、地元住民は農作業の代わりに、豊かな水産物の水揚げで生計を立てているのです。特に、コイ科のリンと呼ばれる魚は、メコンデルタ地域の特産物として知られます。体長10センチほどの小さい魚ですが、新鮮なものは銀色でぴかぴかと光っていて、おいしいと評判です。リンを使った料理は、現地の住民はもちろん、国内外からの観光客にも人気があります。メコンデルタ最大の都市、カントー市の市場では、一キロ当たり20万ドン、日本円でおよそ千円ほどになる時もあるそうです。地元に住むお年寄りの話です。

(テープ)

「リンが好きな人が増えたので、販売価格は高くなりましたね。前はとても安かったんですよ。リンのように安い、という言葉があったほどだけど、今は市場で、1、2を争うぐらい値段が高いです。」

洪水とともに  - ảnh 2

洪水シーズンに忙しいのは、水産物の水揚げだけではありません。カントー市内の網作りが盛んな村は、活気のある雰囲気で賑わいます。ある工場は、一日に平均で200個もの網を販売します。そこで、この時期には、一つの工場で100人から300人を雇うことになります。今年は昨年に比べて、10パーセントから20パーセント売り上げが増えたそうです。網を作っている会社社長の話です。

(テープ)

「お客さんが前の年より増えています。今年の洪水の時期が、いつもより早かったからです。」

メコンデルタ地域の洪水は、地元住民の雇用の創出にもつながっています。多くの漁業関係者が、洪水のお陰で余裕のある生活を送れていると言います。そのうちの1人の話です。

(テープ)

「今年は川の水量が増えて、リンなどの魚介類がたくさんいます。なので、今は漁獲に精を出しています。メコン川沿いに住む私たちは、主に稲作と漁業で生活しているので、洪水は天からの恵みなんです。」

洪水とともに  - ảnh 3   果物の水上マーケットが活気づく

例年より早い洪水は豊富な水産物をもたらしましたが、自然保護ということから、メコンデルタ各省の行政当局は住民に水産物の乱獲防止を呼び掛けています。成長していない稚魚や繁殖期間中の魚の捕獲の禁止などです。一方この時期は、川の水位が上がって水上マーケットが活気づきます。洪水の時期であっても、メコンデルタ地域の各地は、多くの観光客で賑わうのです。

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