全国各地の春祭り

(VOVWORLD) -毎年の旧暦1月6日に、ハノイ郊外ミドック県フォンソン村にあるフォン寺祭りが始まります。でも、その前の2日夜に、フォン寺には参拝客で賑わっています。

ホアイ: リスナーの皆さん、今日は。ホアイと申します。本日は、「全国各地の春祭り」をテーマにした特別番組を送りします。どうぞお楽しみください。

(音楽)

ホアイ: 本日の特別番組にゲストとして登場される方は、ベトナム民間文芸協会副会長のチャン・ヒュウ・ソン博士です。

ソン博士: リスナーの皆さん、明けましておめでとうございます!

(音楽)

ホアイ: リスナーの皆さん、ベトナム民間文化の研究者であるソン博士は長年にわたって、ベトナムの伝統的祭りを研究してきました。

本日、ソンさんと共にベトナム全国各地の春祭りについて話しようと思いますので、お楽しみください。ソンさん、よろしくお願いします。

ソン博士: はい、よろしくお願いします。

ホアイ: それでは、リスナーの皆さんに、ベトナムにおける春祭りの賑やかな雰囲気をお伝えしましょう。

(音楽)

ホアイ: ソンさん、春祭りの賑やかな様子をお聴きになったご感想はいかがでしょうか?

ソン博士: とても嬉しいですよ。これらの祭りに参加したくなりました。

ホアイ: ソンさん、祭りに初めて参加されたのは、いつ頃ですか?

ソン博士: 初めて祭りに参加したのは、15~16歳の頃でした。私の故郷は少数民族サンジウ( San Diu) 族の人々の居住地です。毎年、旧暦12月27日になると、サンジウ族の人たちは、現地にあるビンイエン市場に集まって、伝統的民謡「ソン・コー」を歌いました。サンジウ族の若い男女たちは、相手の歌声を通じて、愛を告白する習慣もあります。私は、これらの民謡が好きになり、この民間文芸の研究の道に入ったのです。

ホアイ: これまでに、数多くのベトナムの祭りの研究成果を公表されてきましたが、祭りを作り出す要素はなんでしょうか?

ソン博士: 2つの要素があると思います。それらは、コミュニティの力、それからその祭りの影響力と神聖さですね。

ホアイ: ベトナムにおける春祭りの特徴はなんでしょうか?

ソン博士: 春の祭りは、一年の幕開けですから、人々はその祭りに参加して、良い年を迎えられるように、祈りたいのです。例えば、モン族には、健康と豊作を祈る「ガウタオ」祭りがあります。また、ザイ族には、豊作を祈願する「ロン・ポック」祭りがあります。あるいは、キン族、チャム族、クメール族に人々は、一年中がいい天候であること、人々が無事であることを願う祭りを行っています。

ホアイ: ソンさんがこれまでに、色々な祭りに参加されたと思いますが、それぞれの祭りに対する思いはどんなものでしょう?

ソン博士: 感想というのは、言い表しにくいですね。モン族の「ガウタオ」祭り、ザイ族の「ロン・ポック」祭りに10回以上、ザオ族の成人式にも呼ばれる「カップサック」祭りに約15回も参加しました。祭りに参加するたびに、色々な面白さを体験しました。

ホアイ: 何度も春の祭りに参加しても、誰もが、その祭りの楽しい空間に身を尽くすことでしょう。

ソン博士: 本当ですね。ですから、私と他の人たちは、いつも春祭りに参加した時にそのような気分を持ちました。

ホアイ:お聴きいただいた歌は「フォン寺参り」でした。

ところで、ソンさん、本日は、旧暦1月2日になりました。全国各地で、春祭りが始まったようです。

ソン博士: 春になると、少数民族が多く住んでいる山間部へ出かけて、春祭りに参加したいです。この新暦2月中に、全国では祭りが相次いでいます。祭りに参加して、人々は、懐かしい故郷に戻ったような感じを受けながら、何か新しいことを発見したような感じになりますよ。

ホアイ: それでは、リスナーの皆さんと一緒に、幾つかの春祭りに参加してみましょう。

ソン博士: じゃあ、行きましょうか。山間部ならバイクか、馬に乗って行きます。あるいは、平野部ならば、車で行けますね。

(音楽)

毎年の旧暦1月6日に、ハノイ郊外ミドック県フォンソン村にあるフォン寺祭りが始まります。でも、その前の2日夜に、フォン寺には参拝客で賑わっています。フォン寺は、ベトナム仏教の聖地として、人々に親しまれているお寺郡の一つです。ハノイからフォン寺まで車で約1時間半かかります。フォン寺はフオンティック山の頂上に位置していますが、お寺へ行く途中の道には、神社や、お寺、洞窟、祠など大小あわせて10数箇所に礼拝所が設けられています。フォン寺に行くためには、「イエン」と名づけられた川を1時間ほどで手漕ぎボートで渡ります。この時期に、イエン川の船着場は、いつものように多くの人出で賑わいます。フォン寺祭りは、旧暦1月6日から3ヶ月も続き、年平均数百万人の仏教徒を集めています。

イエン川の船着場からフオン寺に行く途中に、チン祠、ティエンチュー寺を先に通って、お供え物を捧げて、お祈りをします。

参拝者の話を聞いてみましょうか。

「新年に当たり、家族全員でお寺参りに行きたくなりました。お寺参りすることで、子どもたちによい行いや、正しく考え、正しい行動をさせたいと期待するのです。」

チン祠とティエンチュー寺を参拝した後は、ボート乗りを楽します。そそり立つ山々の間を抜けているイエン川の静かな流れにのって、雄大な景観を眺めると、のんびりとした素朴な風景が見えてくることです。ボートを降りると、参拝者は、山を登り、山頂にあるフォンソン洞窟をめざします。

春の楽しい雰囲気の中で、北部山岳地帯トェンクアン省ディンホア県に住むテイ族やヌン族など、各少数民族の人々は豊作を祈るため開かれるロントン(Long Tong)祭りを行います。今年のロントン祭りは旧暦1月9日と10日の両日、フーディン村で開かれます。祭りの日に、村にある田畑で、土を耕す儀式が行なわれます。ディンホア県に住むテイ族出身の女性マー・テイ・チャム( Ma Thi Cham) さんは次のように語りました。

「新年に、田を耕す人は村の高齢者、または、最も健康はいい人です。この儀式は村人の健康と豊作を祈願するためのものです。祭りに、大勢の人々が参加し、耕す人々を鼓舞します」

ロントン祭りの一環として、田植え競技大会が開かれます。太鼓の音と村人に熱心に応援する中で、伝統的民族衣装を身にまとった女性たちが手早く苗を植えます。その他、ロントン祭りには様々な民間遊戯が開かれます。夜になって、やっとこの祭りが終わります。

毎年、旧暦1月12日と13日の両日、北部バクニン省のリム村で、地元の人々はクアンホ民謡を歌うリム祭りが開かれます。これは地元の伝統的文化習慣となっています。40年間にわたり、民謡クアンホを研究してきた民間文化研究者グェン・フン・ビ( Nguyen Hung Vi) 氏は次のように語りました。

(テープ)

「リム祭りに参加する人々は年越しに増えています。祭りには世界無形文化遺産として認定された民謡クアンホが歌われます。」

リム祭りはバクニン省の文化と信仰を示しています。祭りには男女のグループが集まって歌を掛け合う「歌垣」に似た民謡がリム村の至るところで歌われます。民謡クアンホを歌う芸人はいずれも伝統的衣装を身にまとっています。これと同時に、リム村にある家々では縁起もののキンマやお茶をふるまい、誠意をこめてもてなします。一度、リム祭りに参加するならば、その体験は忘れられないでしょう。

ホアイ: リスナーの皆さん。以上、毎年ベトナム各地に開かれる8000もある祭りの中のいくつかの祭りについて簡単にお伝えしました。ソンさん、これらの祭りの美しさをもうちょっと続けましょうか?

ソン博士:フォン寺祭りに参加すると、私たちは春の自然の美しい風景を堪能できます。私たちは小舟に乗ったり、石の階段を上ったりしていて、足が疲れますが、「南無阿弥陀仏」と念仏を称えながら行くと疲れを感じません。また、クアンホ民謡の発祥地であるバクニン省のリム祭りに行くと地元の伝統的文化だけでなく、民謡クアンホの歌い手との特別な関係が伝わります。

ホアイ:春祭りにはなぜ、このような美しさがありますか?

ソン博士: 春は一年の始まりです。年の始めはだれもが新しい物事や最も素晴らしい物事について考え、悪いこと、嫌なことを避けるからです。春の祭りに行く人々の心は誰もが楽しい気持ちで溢れています。

ホアイ: このような祭りはベトナム人の精神生活に多くの価値がありますね。

ソン博士: そうですね。人々が春の祭りに行くのは源に戻るような感じを受けます。春の祭りに参加する人々はいずれも共同体の精神を実感し、だれもがベトナムの先祖に思いを馳せます」

ホアイ: リスナーのみなさん。以上、ベトナムの春祭りについてお伝えしました。長年にわたり、祭りを研究してきたソン博士は春の祭りの意義についてどう思われますか?

ソン博士: 春祭りは多くの価値があります。まずはじめに、春祭りは歴史的価値があります。ベトナムで開かれる春祭りの中には民族の英雄や、稲を作る神様など国に功労があった人物を祀るものが多いです。第二は職業村の祭りを始め、祭りに参加すると先祖の創造性を深く理解できます。」

ホアイ: ベトナムが国際社会への参入を進めている中で、春祭りはどんなメッセージを持つでしょうか?

ソン博士: ベトナムの祭りの価値を理解すればするほど、ベトナム文化の多様性を尊重する重要性を実感できます。創設70周年にあたり、ユネスコは多様性の尊重という提言を強調しました。54の民族が共存しているベトナムの祭りには文化の多様性を鮮明に示されています。私達はその多様性を維持、発展させるならば精神面での価値が保たれるだけでなく、観光の発展にも有利な条件が生まれることでしょう。

リスナーの皆さん。ここで、「各地の春祭り」に関する特別な番組が終わります。この番組を拝聴いただき、ありがとうございます。ベトナムの春祭りについて様々な面白いお話をされたソン博士、どうもありがとうございます。

ソン博士: ごきげんよう!

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