シリア情勢をめぐる問題

(VOVWORLD) - シリアで支配地域を広げてきたクルド人勢力に対し警戒を強める隣国のトルコが軍事作戦に乗り出し、シリアの内戦の構図がより複雑になることで、こう着状態のままの和平協議が一層難航することが懸念されます。

トルコ軍は20日、「国境地帯の治安を守るため」として、シリア国内のクルド人勢力に対する軍事作戦を開始しました。シリアのクルド人勢力は、アメリカの支援を受けて過激派組織IS=イスラム国の掃討作戦で活躍する一方、内戦の混乱に乗じる形で一方的に自治を宣言し、トルコと接する北部の国境地帯で支配地域を広げてきました。

シリア情勢をめぐる問題 - ảnh 1      シリア国境付近で展開されたトルコの戦車

これに対してトルコは、この勢力が自国内のクルド人武装組織とつながっていて、アメリカが供給してきた武器がトルコへの攻撃に流用されるおそれがあるなどと警戒を強めていました。

センシティブな作戦

今回の作戦の一環として、トルコ軍は、シリア北部の都市アフリン周辺にあるクルド人勢力の拠点100か所余りに空爆と砲撃を行い、クルド人勢力もこれに応戦しています。

これまで、トルコは、アメリカが「イスラム国」の掃討のためにクルド勢力を支援していることに反発しており、シリアのクルド人民兵組織YPG=人民防衛部隊を「テロ組織」として敵視していますが、この作戦は、シリア北部の対トルコ国境地帯からYPGを排除することが目的とみられています。

特に、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、「アフリンの後、その東方に位置するマンビジからのYPG排除を目指す」と述べました。一方、トルコのユルドゥルム首相は21日、「軍事侵攻に踏み切る前に、アメリカとロシア、イランに事前に計画を知らせた。

アメリカからは作戦に対する明確な反対はなかった」と明らかにしましたが、アナリストらは、「トルコがアメリカが支援するクルド人武装勢力への本格的な軍事作戦を行うことで、今後、同盟関係にあるトルコとアメリカの関係が悪化する可能性がある」との懸念を示しています。また、この作戦はさらにシリアでの人道的危機を深刻化させる恐れもあります。

シリア情勢をめぐる問題 - ảnh 2      シリア国境付近で展開されたトルコの部隊

人道的危機の深刻化

これに関し、24日、国連は、シリア国内の避難民がおよそ5000人に上っていると発表し、市民が十分に保護されていないおそれがあるとの懸念を示しました。中には、内戦で国内のほかの地域からのがれ、キャンプで暮らしていた家族がさらに避難を余儀なくされたケースもあるということです。

他方、この作戦がロシア主導によるアサド政権と反体制派が話し合う「シリア国民対話会議」の開催に悪影響を与えることも指摘されています。ロシア外務省は「ロシア政府はこの知らせに懸念を抱いている。われわれは双方に対して自制を呼び掛ける」と表明しています。

シリア情勢は不安定が続いていますが、トルコのこの作戦により、さらに複雑化されます。従って、この国での内戦を終結させ、平和を取り戻すための道のりはより遠くなるはずです。

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