​ECB、3会合連続で金利を据え置き 今後の方針は示さず

(VOVWORLD) - ECBはこの1年間で合計2%ポイントの利下げを実施し、その後は金利を据え置いています。ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で、当面は政策変更に慎重に対応していく姿勢を示しました。

欧州中央銀行(ECB)は30日に開かれた理事会で、主要政策金利である中銀預金金利を3会合連続で2%に据え置くことを決定しました。ECBは、貿易の混乱という逆風に直面しているものの、低インフレのもとで安定した成長を維持しており、ユーロ圏経済は不確実性の中でも底堅さを見せていると指摘しました。これにより、現行の金融政策は適切な水準にあるとの見方を改めて示しましたが、今後の方針については明確な手がかりを示しませんでした。

金利据え置きは市場の予想どおりでした。ECBは声明で、「インフレ率は中期的な目標である2%に近い水準にあり、理事会の物価見通しに対する評価はおおむね変わっていない」と説明しました。また、「厳しい国際環境にもかかわらず、経済は拡大を続けている」とした上で、強い労働市場や堅調な民間部門のバランスシート、過去の利下げの効果が経済を下支えしていると述べました。

ECBはこの1年間で合計2%ポイントの利下げを実施し、その後は金利を据え置いています。ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で、当面は政策変更に慎重に対応していく姿勢を示しました。

ラガルド総裁は会見で、欧州とアメリカの通商合意、パレスチナ自治区ガザでの停戦、米中首脳会談で合意された関税引き下げなどを挙げ、「経済成長の下振れリスクは和らいでいる」と述べました。そのうえで、「金融政策の観点から、われわれは良好な位置にある」と説明し、「これは『固定的な』立場ではないが、この状態を維持できるよう必要なことはすべて行う」と強調しました。ただし、今後の金利の道筋に関する質問には答えませんでした。

同日発表されたユーロ圏の第3四半期GDP速報値は前期比0.2%増となり、市場予想を上回りました。ラガルド総裁は「現時点で経済成長に特段の不満はない」と述べましたが、一方で物価リスクについては「後退したとは言えず、全体としては均衡が取れた状況にある」との認識を示しました。

市場では、ECBが来年半ばまでに今回の利下げ局面で「最後の1回」となる追加利下げを行う確率を40〜50%程度と見込んでおり、今回の決定を受けても市場の見方は大きく変わっていません。

ノルデア銀行のエコノミスト、ヤン・フォン・ゲリッヒ氏は「ECBが利上げにも利下げにも近くないことが改めて確認された」と述べ、「状況の変化はあり得るが、ECBは当面、金利を変更しないだろう」との見方を示しました。

ドイツ銀行の欧州担当チーフエコノミスト、マーク・ウォール氏は「経済の回復力がECB内のハト派を抑え、政策(利下げ)の停止を支えている」と分析しました。コメルツ銀行のエコノミスト、ヨルク・クレーマー氏も「ECBにとって利上げのハードルは非常に高く、中銀預金金利は2.0%に据え置かれる可能性が最も高い」と述べました。

ECBは12月の次回理事会で新たな経済見通し(スタッフ予測)を公表する予定で、初めて2028年までの見通しが含まれる見通しです。関係筋によりますと、2028年もインフレが下振れする明確な証拠が示されれば、12月の理事会で利下げを議論する正当な理由になるとの意見がある一方、長期予測は慎重に受け止めるべきだとする見方もあり、次回理事会では意見の分かれが予想されています。(ロイター)

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