ダオ医師（右）

ファム・ビック・ダオ医師は、ハノイ医科大学病院に25年間勤務する耳鼻咽喉科の専門医です。ダオ医師は県レベルのサテライト病院を建設するというプロジェクトを初めて立案した人で、このプロジェクトによって、県レベルの病院が精密な技術に接近し、患者は質の高い医療サービスを提供されるようになったほか、往復の安い交通費を払うだけでよく、中央病院の過密状態が緩和されるようになりました。

ダオ医師は次のように語りました。

（テープ）

「医科大学の学生時代に、この職業に就くことが出来るかどうかよく考えていました。というのは、医科大学入学試験直後の最初の講座が解剖学講座だったからです。これは、私にとって強迫観念でした。それから、解剖実習用遺体安置室に足を運んだときには、頭がぐるぐる回って、何も考えることができませんでした。他の大学に入学しようと思っていました」

ダオ医師にとって、人が仕事を選ぶんじゃない、仕事が人を選ぶのです。というのは、彼女は医学の最も基本的な科目を恐れた若い学生だったときから、現在まで、様々な困難、試練を乗り越え、人を救う事業において一定の成功を収めた優れた医師として成長したからです。

ダオ医師が2015年に「県レベルのサテライト病院プロジェクト」を立案する前にも、ベトナムでは多くの病院が「サテライト病院プロジェクト」を実施しました。しかし、この試みは、中央病院から省レベル病院、そして省レベル病院から県レベル病院への技術移転を目指すことでした。これらの試みを実現することで、県レベル病院での診療・治療は効率化されませんでした。北部山間部各省の僻地にある各県の病院に赴き、慈善的診療治療を行うたびに、ダオ医師はこうした試みを変えようと思っていました。

テレヘルス（遠隔診療）による診断

ダオ医師はさらに次のように語りました。

（テープ）

「当時、私たちは、県レベルの病院の医師、看護婦の専門的業務の質を向上させる必要があると思っていました。実際、中央病院の県レベルの病院の医療スタッフへの直接的なサポートは、とても大きな効果がありました」

それから、ダオ医師と同僚たちは、「県レベルのサテライト病院プロジェクト」を立案することになりました。彼女たちは、幾つかの県レベルの病院でこのプロジェクトを試験的に実施しました。北部山間部ラオカイ省ムオンクオン県病院での試験運用について、ダオ医師は次のように語りました。

（テープ） 

「当初、ムオンクオン県病院への通院患者は一日あたり50人～100人しかいませんでしたが、この病院がハノイ医科大学病院のサテライト病院になってから、一日500人～600人も訪れるようになりました。この成果は、住民たちが、県レベルの病院の診療・治療の質に満足していることを示しています」

ムオンクオン県病院での最初の成功は、ダオ医師たちが、全国各地において「県レベルのサテライト病院プロジェクト」を実施するための原動力となりました。特に、新型コロナウイルス感染症による社会的隔離措置が適応されている間、このプロジェクトの成果が表れました。つまり、患者は、家から離れた病院に行かずに、付近の県レベルの病院で診療・治療を受けられたということです。

ダオ医師はまた次のように語りました。

（テープ）

「新型コロナの流行期間中に、肺炎と胸水を引き起こした高齢者がいました。以前、県レベル病院なら、こうしたケースを処分できませんでした。患者は、車で6時間もかかるハノイの病院まで搬送されなければなりませんでした。しかし、現在では、テレヘルス（遠隔診療）を利用して、診断後に、ムオンクオン県病院の医療スタッフがサポートできます。これにより、患者は一週間後に退院しました」

ダオ医師は、診療・治療を行う傍ら、ハノイ医科大学の耳鼻咽喉科の講師として活躍しています。50歳を超えているダオ医師は、後輩の医師に25年間にわたる知見を共有したいようです。

ダオ医師はさらに次のように語りました。

（テープ）

「患者と常時接触することは、私に情熱をもたらしました。また、講義に参加して、学生たちと接触するたびに、彼らに私の仕事のやりがいを伝えたいのです。自助努力だけでは、わずかな患者の治療しかできません。しかし、私から知見や情熱などを受けついた学生、若い医師たちは、全国各地でそれらを活用できるのです。こうしたことで、さらに多くの患者を治療することが出来ます」

ダオ医師にとって、患者の治療の成功は、大きなモチベーションとなっています。