ライチャウ省のモン族 蜜蝋で布の模様を描く職人技を受け継ぐ

(VOVWORLD) - 西北部ライチャウ省に暮らす少数民族モン族は今もなお、多くの伝統的な職業を大切に継承しています。伝統的な職業は生計を立てるためだけではなく、モン族の歴史やアイデンティティを物語るものでもあります。その中で、蜜蝋で布の模様を描く職人技は代々受け継がれています。
ライチャウ省のモン族 蜜蝋で布の模様を描く職人技を受け継ぐ - ảnh 1蝋描き用の小刀で線を引きます。

モン族の民族衣装を作るための布の素材は、地元で栽培される亜麻の靱皮から採った繊維です。亜麻はアマ科の一年草ですが、高さが約1メートルほどあり、葉は小さく、線形で互生する植物です。衣装は手作りで、女性たちは布づくりからすべて自分たちの手で行います。衣装には思い思いの刺繍とろうけつ染めが施されます。丁寧に仕上げるため、一年に1、2枚しか作れません。蝋描きには蜜蝋が使われます。下書きも無しに、四角いマスだけを目安にして,正確な幾何学模様を描いていきます。銅版の隙間に蝋を溜め、蝋描き用の小刀で線を引きます。この小刀は、大小さまざまあり、描く模様によって数種類を使い分け、蝋の落ちる量によって、線の太さに変化をつけて模様を描いていきます。ほそく細かい模様を描くときは、小さな刀を使いますが、中に入る蝋が少ないため、何度も何度も小刀を蝋につけ、めまぐるしく描いていきます。

その後は、蝋描きした布を染める藍染の作業です。蝋で文様を描いた布は、一度水に浸し、藍液に10分程度浸けておきます。布を取り出すと、空気に触れることで、徐々に緑っぽい色から藍色に変わっていきます。30分程度したら再度、藍液に浸し、これを好みの色になるまで繰り返します。繰り返すごとに、モン族の民族衣装のような黒に近い濃紺になっていきます。染め終わった布は、熱湯に入れ、蝋を取り除き、よく水洗いして乾燥させ、長い藍染めの作業が終わります。

ライチャウ省タンウィエン県ファーム村に暮らすハン・ティ・ザンさんは、何百種類もある模様は、モ ン族の人々が代々受け継いできたものであると述べ、次のように語りました。

(テープ)

「子どもの頃、おばあさんとお母さんが蜜蝋で布の模様を描くさまをよくみていました。大きくなってから、蝋描きを教えてもらいました。それ以来、ずっとこの仕事をして、その技術を子どもにも教えています。モン族の伝統文化を次の世代に伝えていきたいからです」

ライチャウ省のモン族 蜜蝋で布の模様を描く職人技を受け継ぐ - ảnh 2蜜蝋で布の模様を描く職人技が代々受け継がれています。

ベテラン職人の努力により、蜜蝋で布の模様を描く職業は多くの若者を引き付けているようです。タンウィエン県フオイバック村に暮らすザン・ア・トゥアさんの話です。

(テープ)

「蜜蝋で布の模様を描く職業は伝統的な職業で、歴史、文化の面でも美術面でも独特な価値を持っています。若者である私たちは、昔から伝わるこの職業を守り、私たちの後の世代にも受け継がれるようにしています。これはモン族の伝統文化の保存に貢献するでしょう」

現地行政府も、蜜蝋で布の模様を描く職業を文化財として見なしており、モン族の人々にその職業の保存を奨励する対策を講じています。タンウィエン県ファーム村人民委員会のホアン・フィ・フン委員長は次のように語りました。

(テープ)

「現在、ファーム村には、蜜蝋で布の模様を描く職業に従事している女性がおよそ50人いて、彼女たちは15歳から45歳までです。この職業は世代から世代へと口承で伝えられています。この職業の保存と開発を図るため、村は毎年、蜜蝋で布の模様を描くコンテストや民族衣装のファッションショーなどを行っています。そのため、美術性の高い職業は今もなお、大切に保たれています」

現在、モン族の女性が秘伝の技術で作られた布とその衣服などは国内外の観光客に好まれるお土産となっており、地元住民の収入増加に役立っています。

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