(VOVWORLD) - ベトナムでは今年7月から、地方行政組織を二層制に再編する大規模な改革が始まりました。導入から4ヶ月が経過した現在、初期段階としては順調な滑り出しを見せています。
この改革は、全国34の省と市で実施されているもので、行政機構をスリム化し、業務の重複を減らして効率を高めることが狙いです。また、行政と住民との距離を縮めることも目指しています。ベトナムにとって、ここ数十年で最も抜本的な地方行政改革だといえます。
(写真:VOV) |
順調な立ち上がり
運営開始から4ヶ月、新しい体制は概ね円滑に機能しています。住民や企業の行政手続きは、以前より迅速に処理されるようになり、待ち時間も短縮されました。部門間の連携も改善されています。
注目されるのは、行政サービスの姿勢が変わってきたことです。住民に自分で何とかするよう求めるのではなく、行政側が住民に寄り添う「伴走型」のサービスへと転換しつつあります。
ファム・ティ・タイン・チャー副首相は、国会で、この改革の本質について次のように説明しました。
(テープ)
「これは単なる組織の見直しではありません。行政の在り方そのものを根本から変える、包括的な改革なのです。権力のあり方、制度、行政の運営方法、公務員の役割、そして国の発展目標まで、あらゆる面に影響を及ぼします。この改革は、現場の切実な課題に応えるために始まったものですが、同時に世界の流れにも沿ったものであり、ベトナムが次の発展段階に進むための土台となるものです」
今後の課題
一方で、新しい体制ゆえの課題も見えてきました。
まず、人材の問題です。村レベルの職員は平均で41人ほどいますが、新しい業務に対応できる能力を十分に備えた人材がまだ不足しているといいます。
また、情報システムの連携や、部門間の責任の明確化といった課題も残されています。
政府は今後、改革を軌道に乗せるため、6つの重点施策を進める方針です。
第一に、法律や制度の整備です。国会では前回の会期で34本、今回の会期ではさらに49本の法律を制定する予定で、年末までに制度の基本的な枠組みを完成させるとしています。
第二に、人材育成です。特に村レベルの職員について、2026年から2030年にかけて、適切な人員配置を行うための体制を整えます。
そのほか、地域ごとの発展計画の見直し、財政メカニズムの整備、そしてデジタル化の推進も進められます。行政手続きへの人工知能の活用や、電子政府の構築、さらには住民のデジタルリテラシー向上にも力を入れていく方針です。
トー・ラム党書記長は今月5日の演説で、この改革が国の資源を成長の原動力に変え、持続可能な発展につながると強調しました。
改革はまだ始まったばかりですが、ベトナムは着実に、より効率的で住民に近い行政の実現に向けて歩みを進めています。