ベトナム、少子高齢化対策で人口政策を大きく転換

(VOVWORLD) - ベトナムで、急速に進む少子高齢化に対応するため、人口政策を見直す動きが本格化しています。

ベトナムの高齢者は現在、約1,610万人で総人口の16%以上を占めています。高齢化のスピードは世界でも最も速く、2049年には4人に1人が60歳以上になる見通しです。今後、医療や社会保障の負担が極めて大きな課題となります。

一方で出生率も急速に低下しています。2050年には女性1人あたり1.63人、2100年には1.38人まで下がると予測されています。人口を維持するために必要な水準、女性1人あたり2.1人を大きく下回る数字です。

こうした状況を受けて、今月10日に開かれた国会では、新しい人口法案をめぐる討論会が行われ、様々な対策が議論されました。

企業の支援参加を促す

ベトナム、少子高齢化対策で人口政策を大きく転換 - ảnh 1グエン・ホアン・ウエン議員

出生率を維持するためには、国の努力だけでなく、企業の協力が欠かせないという意見が相次ぎました。

中部クアンガイ省選出のト・ヴァン・タム議員は「企業が柔軟な産休制度や財政支援など、労働者への支援策に協力すれば、出生率の維持は実現可能になる」と述べました。

北部ハイフォン市選出のグエン・ティ・ヴィエット・ガー議員は、特に工業団地や都市部、女性労働者の多い地域で、託児所や生後6か月からの保育施設を整備する必要性を強調しました。

南部テイニン省選出のグエン・ホアン・ウエン議員は次のように訴えています。

(テープ)

「公立と民間の保育サービスの発展を支援し、2人の子どもを持つ家庭には個人所得税を減税するなど、持続可能で実効性のある政策を追加すべきです。これは直接的な支援で高い効果があり、低出生率に悩む他の国々の政策とも合致しています」

不妊治療への支援拡大を

もう一つの大きな課題として、不妊症の増加が取り上げられました。ベトナムには約100万組、人口の約7.7%にあたる不妊に悩む夫婦がいます。しかし治療費は非常に高額で、医療保険の適用範囲も限られているのが現状です。

ハイフォン市のガー議員は、不妊支援を現代の人口政策における重要な要素として位置づけるべきだと主張しました。

(テープ)

「人口を維持するには『出産が少ない人々』だけでなく、『産みたいのに産めない人々』にも目を向けなければなりません。不妊夫婦への財政支援や技術支援、心理カウンセリングを提供するとともに、不妊治療への社会的な偏見を減らし、他の病気と同じように支援すべき医療問題として捉える必要があります。不妊支援は人口維持に役立つだけでなく、市民が父親や母親になる権利を守る、国の人道性を示すものです」

少数民族地域への支援も

ベトナム、少子高齢化対策で人口政策を大きく転換 - ảnh 2少数民族女性のための
リプロダクティブ・ヘルスケアガイド

少数民族が多く住む山間部などの地域では、別の課題があります。

これらの地域では出生率は女性1人あたり4人から4.3人と、全国平均の2倍以上です。しかし問題は、約20%から24%の女性が医療支援なしで自宅出産していることです。子どもを適切に育てる環境が整っていないのです。
議論では、医療、教育、交通などのインフラ整備を進めるとともに、少数民族の女性の経済的な地位を向上させ、出産について自分で決められるよう支援していく必要性が指摘されました。

「人の数」から「人の質」へ

今回の国会での議論は、ベトナムの人口政策の考え方が根本的に変わりつつあることを示しています。

人口問題はもはや「何人いるか」ではなく、「人間の質がどうか」、そして「社会が人々の発展を支える環境を整えているか」という問題なのです。
出生率の維持、不妊支援、育児支援、柔軟な産休制度、少数民族地域の発展といった解決策は、すべて一つの共通した目標に向けられています。それは、すべての国民の権利と生活の質を守ることです。

ベトナムは今、人口政策を人間開発政策として捉え直す、新しいアプローチへと転換しようとしています。

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