ベトナム中部高原ダクラク省で、ムオン族の伝統的な農耕儀礼「カイハー(開下の儀)」が今年も執り行われました。

タンラップ地区にあるラクソン廟では、旧暦正月七日の早朝から、ゴングと銅鑼の音が響き渡りました。伝統衣装に身を包んだ老若男女が廟に集まり、新しい農期の始まりを告げるこの儀式に臨みました。

(ムオン族のゴングの音)

カイハーはムオン族の故郷、北部ホアビン省に古くから伝わる農耕儀礼です。北部から移住してきた人々がダクラク省に根を下ろして五十年余り。その間も変わらず受け継がれてきました。儀式を主宰するムオン族の「モー」――伝統的な祈祷師――ブイ・ヴァン・タインさんは、カイハーの意義を次のように語ります。

(録音:タインさんの言葉)

「この村が平穏無事でありますように。田では稲が、丘では玉蜀黍やサツマイモが、害虫にも病気にもやられませんように。村人には不幸な出来事がなく、ただ婚礼の祝いごとだけがあり、みなが一年を平穏に過ごせますように。」

タンラップ地区には現在、北部各地から移住してきたムオン族の廟が七つあります。正月七日から十日にかけて、各廟が順番に儀式を行い、春の初日から続くにぎわいをつないでいきます。

準備は数週間前から始まります。供え物を丁寧に整え、厳かに飾り付けてこそ、誠心誠意の願いが届くと信じられているからです。同じ地区に暮らすブイ・ティ・ホイさんは次のように話してくれました。

(録音:ホイさんの言葉)

「元日からもう準備を始めていました。当日の早朝から豚や鶏を屠り、ご飯を炊き、餅を包んで、昨夜は一睡もしませんでしたよ。でもこうして子や孫たちが一緒に準備することで、民族の風習を自然に覚えてくれるでしょう。」

(ゴングの音)

儀式のあとは祭りの場となります。長老たちが綱引きやコン玉投げで口火を切り、若い世代に伝統を守る大切さを伝えます。続いてレスリング、麻袋跳び、柱登り、玉投げなどの民俗遊びが次々と繰り広げられ、廟の周辺は終日熱気に包まれました。

今年はカナダ人旅行者のマーク・シュミットさんも祭りに加わりました。

(録音:マークさんの言葉)

「招待していただき、大変光栄です。コミュニティや家族、そして国をつなぐ素晴らしい祭りだと思いました。このような機会にまた立ち会えることを願っています。」

ダクラク省のムオン族が守り続けてきたカイハーの儀。それは単なる農耕の節目ではなく、故郷の記憶を新天地でつなぎ、次の世代へと渡す、生きた文化の営みです。今年も人々は新しい農期を、希望とともに歩み始めました。