錦織を夢中に織っているエデ族の女性

エデ族の民族衣装は、芸術的、美術的な表情があると評価されています。エデ族の女性は、濃紺の手織り木綿のボートネックの長袖シャツを着用します。そして、くるぶしまでのロングスカートを巻きます。エデ族の女性が歩くとスカートについた飾り糸が軽く揺れて、とても可愛く見えます。一方、エデ族の男性は、前掛けのような布とＶネックの長袖シャツを着用します。男性のシャツは女性より長めです。

エデ族の伝統的な錦織の模様は身のまわりの自然を反映しています。草や花、動物が典型的な模様です。エデ族の錦の特徴は配色に示されています。色とりどりの糸を作るため、エデ族の人々は古くから伝わってきた経験によって、木の葉や皮、根を使って、糸を染めます。白と黒は錦の主要な背景色として選ばれます。その他、赤と黄色もよく使われます。

ダクラク省ブオンマートート市クエボン村に暮らすホー・ヌン・ビャさんは今年70歳ですが、60年間以上もの間、手織りの経験があります。ビャさんは、糸を染めてから機織り機で十数本から数十本の糸を組み上げて模様を描くと述べ、次のように語りました。

（テープ）  

「模様によって組み上げられる糸の数は違います。15本と17本の糸を組み上げるのが一般的ですが、27本の時もあれば、35本のこともあります。模様の描き方が一番難しいのは型押し模様です。」

エデ族の服装によって模様の形や配置が違います。そのため、その模様を見るだけで男性と女性の服装を区別することができます。また、日常生活で着る服装と、儀式用の服装の模様は異なります。そして、模様はその服装を着用する人の社会的地位や豊かさなどを示しています。

ダクラク省クロンアナ県ドライサプ村に住むベテラン職人ホ・ヤ・クブオさんによりますと、エデ族の錦織の模様を施す技術の中で、最も難しいのは「クテ（Kteh）」という技術です。クテは糸とビーズを合わせて模様を描く技術です。この模様は衣服の裾に付けられるのが一般的です。クブオさんは次のように話しました。

（テープ）

「かつて、クテ技術は儀式用の服装や、社会的地位が高い人の衣服に使われてきました。これは難しい技術なので、誰もができるわけではありません。現在も、できる人は少ないですよ。」

クテ技術によって施された模様

ブオンマートート市エアカオ村の錦織生産協同組合の組合長ホー・ヤム・ブクロンさんによりますと、典型的な模様は草や花、動物などですが、模様には決まりがあるわけではなく、職人の創造性によって様々なものです。これにより、エデ族の錦織は多様性があり、女性の器用さとその苦労を示すものであると評されています。ブクロンさんの話です。

（テープ）

「錦織を作るには約1年がかかります。梳綿や糸繰り、糸染、織りなどいろいろな工程があります。織った後、針で衣服を作りますが、これもかなり時間がかかります」

現在、日常生活でエデ族の民族衣装を着る人は少ないですが、伝統的な祭りや行事、儀式などでは、民族衣装は依然として欠かせない存在です。また、エデ族の錦織は観光客に好まれるお土産となっています。そのため、錦織をつくる職業はエデ族の女性に安定した収入をもたらしています。ダクラク省クロンボン県エアトルル村に暮らすベテラン職人ホー・ブロン・クヌルさんは次のように語りました。

（テープ） 

「私は15歳にして錦織を覚えました。今は子どもと孫のほか、多くの女性にその技術を伝えています。その中で、錦織コンテストで賞を獲得した優秀な人もいます。エデ族のこの伝統的な職業の回復と開発を目指しています」

エデ族の錦織を作る職業は衰退したときもありましたが、現在はエデ族の村に足を運べば、女性たちが錦織を夢中に織り、模様を描く風景がよく見られます。