中部ホイアン在住のUSUDA Reikoさんのエッセイ

(VOVWORLD) - タイトル:「私の思い出」

10年ひと昔と言いますからふた昔前のこと、私の忘れられないハノイでの思い出です。

早朝、旧市街のホテルから散歩に出かけた時のことでした。スーッと私の横を走り抜けたバイクを運転していたのは白いアオザイを纏ったほっそりした高校生。彼女は100mほど先で停車し、路上の簡易食堂の椅子に腰をおろしました。彼女の前にだされた食べ物は、遠目には真っ白い丸いお団子のようでした。登校途中の女子高校生は朝食に何を食べるのかしら?興味を持った私は、彼女のいる屋台へ近寄っていきました。

中部ホイアン在住のUSUDA Reikoさんのエッセイ - ảnh 1  茹でたアヒルの孵化寸前卵の中身

彼女のいるテーブルに近づいた私は、彼女の前の皿をのぞき込みました。と、そこには鼠色がかった濡れた鳥の羽らしきものがありました。いったいそれが何なのか、私には瞬時には理解ができませんでした。彼女はそれを食べ終わると再びバイクに跨って颯爽と走り去っていきました。彼女が去ってしばらくして私がようやく理解したのは、‘それがアヒルの孵化寸前の卵を茹でたものだ’ということでした。

その瞬間、二つのことが私の頭の中を駆け巡りました。一つは卵の状態です。その卵の中身はまさに孵化寸前です。人は生物の命を食して生きていることを改めて理解したのでした。日ごろスーパーマーケットなどで買い物をし、切り身になった動物を無感動に食してきた私です。アヒルの孵化寸前の卵を見て、日ごろ何気なく口にしてきた食材に大きな感謝の気持ちを覚えました。ベトナムの多くの方は現在でも動物を食さない精進の日を守っていらっしゃいますよね。そこには食材となった動物たちへの感謝の気持ちが込められています。これは素晴らしい習慣だと思いました。

もう一つは孵化寸前のアヒルの卵の栄養です。簡易食堂の方に聞いてみましたら、活力の源だそうです。疲れているときには、アヒルの孵化寸前卵を2個食べることもあるそうです。この卵を完食して学校に向かった高校生の後ろ姿に‘勉強頑張ってね!’と私はエールを送ったのでした。

ハノイの早朝散歩で見たこの風景はまさに‘目から鱗’。単なる旅行者だった私がこの日の体験の後、食文化に限らずベトナム文化に関心を深めていったのは当然のことです。現在に至るまでベトナム文化への興味は尽きることがありません。ありがとうベトナム!

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