英離脱後のEU将来像構築 難航


イギリスを除くEU欧州連合27カ国は先週、ブリュッセルで首脳会合を開きましたが、イギリス離脱後のEUの将来像について合意を達成しないまま、終了しました。

加盟国首脳はEUの礎となったローマ条約調印から60周年となる25日、ローマで記念式典を開きます。その際には今後10年のEUの方向性などを示す宣言を採択する予定です。27カ国の首脳は今回の会合で草案などを基に宣言の内容について意見交換しました。

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ユンケル欧州委員会委員長

統合速度多様化 思惑の違いは大きく

EUはイギリスの離脱決定に加え、各国で反EUを掲げる政党が台頭し、アメリカのトランプ大統領もEUに批判的な姿勢を示すなど逆風にさらされ、結束の在り方が問われています。

首脳会合に先立ち、フランスとドイツ、イタリア、スペインの各国首脳はパリ郊外のベルサイユで非公式に会談しました。4首脳は希望する一部の国々が先行して欧州統合を進められるよう、統合速度に幅を持たせることが重要との認識で一致しました。イギリスがEU離脱を決め、結束が揺らぐ欧州を立て直す狙いがあります。

フランスのオランド大統領は記者団に「団結は一律性を意味しない」と説明し、欧州統合を深める様々な計画で、国によって参加する時期を早めたり遅らせたりできるよう柔軟性を持たせることが必要だと訴えました。

一方、ドイツのメルケル首相は「欧州市民はいくつかの国がより早く進むことを受け入れねばならない」と主張しています。スペインのラホイ首相も、「スペインはEU統合で先頭を走りたい」と語り、EU統合速度の多様化を支持する姿勢を示しています。

その後の首脳会合では、すべての加盟国が足並みをそろえて統合を進めるこれまでの原則を見直し、統合速度の多様化を進める案についても話し合われました。

しかし、ポーランドやハンガリーなどEUに後から加盟した中東欧の国々には、EUの主要国が進める統合に取り残され、不利益を被るとの危機感があります。スロバキアのフィツォ首相は「共同宣言が誰も救えず、傷つけ合うだけの国家の利害集団になってしまう可能性がある」と牽制しています。

EUの団結 重要

こうした状況を前に、EUの統合速度を多様化するこの案を提唱している欧州委員会のユンケル委員長は「ヨーロッパを再び東西に分断するものだとの見方も出ているがそのような意図はなく、原点はあくまでEUの結束だ」と述べました。

一方、トゥスク欧州理事会常任議長は加盟各国イギリスのEU離脱後の団結維持を呼びかけました。また、「例外なくすべての加盟国が欧州の統合に向けて努力する必要がある」と述べたものの、EU離脱後に関するイギリスとの交渉がまもなく行われる背景の中で、EU統合速度の多様化について考える理由があるとしています。

政治アナリストによりますと、EU統合速度の多様化の案について加盟国の足並みを揃えるのは難航しており、東西欧州の亀裂が浮き彫りになっています。


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