欧州の難民危機をめぐる問題


欧州の難民危機をめぐる問題 - ảnh 1
ハンガリーとクロアチア国境地域への難民の流入(写真:AFP)



EU=欧州連合は、中東やアフリカなどから大量の難民が押し寄せている問題に直面しています。現在、この問題にどう対応するかをめぐり、各国間で深い亀裂が入っています。難民問題をめぐる各国の不和はEUの価値を揺るがし、ユーロ圏改革などへの一致団結した行動力を弱める可能性があると指摘されています。しかし、利益もあるとの意見もあります。

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所などによりますと、紛争や貧困に苦しむ中東やアフリカから欧州への難民の流入はおよそ50万人規模に膨らんでいます。死者も数千人に達しています。そして、今後もさらに増えていく可能性もあります。

難民がもたらす利益

OECD=経済協力開発機構は22日、移民に関する報告書を公表し、その中で、シリア情勢の不安定さからEUに押し寄せる難民数は過去最高を記録すると予測した上で2015年に最大100万人の難民申請があり、35万~45万人分が認められるとの見通しを示しました。「短期的には難民に対応したり、支援したりするのはコストがかかる」と説明しています。しかし、こうした取り組みが長期的には難民をその国に溶け込ませるカギになると主張しています。「適切な対策を取れば、経済、とりわけ税収や社会保障での貢献がある」とも解説しています。報告書によりますと、最近のシリアからの難民は、1990年代のユーゴスラビア難民よりも学歴や技能が高いということです。スウェーデンに在住していたシリア人の40%以上は少なくとも高校を出ており、アフガニスタンの20%やエリトリアの10%に比べると高いです。こうした人材に言語習得や職業訓練などの支援をすることがプラスの経済効果につながると分析しています。

試練も大きい

しかし、実際、現時点で、難民問題は欧州諸国に多くの困難をもたらしています。難民危機は、EUの無力さや不仲、冷酷な面を浮き彫りにしており、加盟国同士が非難合戦を繰り返し、ポピュリズム政治と反イスラム感情が助長されていることで、欧州統合の理想も傷つけています。しかし、欧州が新たな難題への共同対応策を見つけるまでには当面、足並みの乱れや非難の応酬は避けられないかもしれません。難民受け入れでEU各国に公平な分担を求めるドイツのメルケル首相は先週、「世界中がわれわれを見ている」と発言し、「もし欧州が難民問題で失敗すれば、欧州と普遍的人権の固い結びつきは壊れ、もはやわれわれが夢見た欧州ではなくなるだろう」と警鐘を鳴らしました。さらに、テロリストは難民とともに欧州に侵入する可能性も浮上しています。これは、各国の国家安全保障問題にとって深刻な試練と見られています。

欧州は、かつてないほど困難な状況に陥っています。今後どのような措置が取られるかは焦点となっていますが、徹底的な解決策はまだないとの悲観的な見方も出ています。

 

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