離脱プロセスにおけるEUと英国の立場の違い

EU=欧州連合は、EU離脱をめぐるイギリスとの交渉を前に、まずは離脱の条件をめぐる交渉を優先し、将来の経済関係についての交渉は後回しにする指針を採択し、自由貿易協定の交渉も同時に行いたいとするイギリスの立場との違いが鮮明になっています。
離脱プロセスにおけるEUと英国の立場の違い - ảnh 1 写真:AFP/TTXVN

EU=欧州連合は、EU離脱をめぐるイギリスとの交渉を前に、まずは離脱の条件をめぐる交渉を優先し、将来の経済関係についての交渉は後回しにする指針を採択し、自由貿易協定の交渉も同時に行いたいとするイギリスの立場との違いが鮮明になっています。

去る4月29日、ベルギーの首都ブリュッセルで、EUのイギリスを除く27加盟国は、3月のイギリスの離脱通告後初の首脳会議を開き、離脱の条件や交渉の進め方などについて協議しました。

離脱交渉の原則を採択

今回の会議は離脱交渉の原則となる交渉指針を採択しました。指針はFTA=自由貿易協定など将来関係と離脱条件の並行協議を望むイギリスに応じず、離脱条件の解決をまず目指す内容です。相互に居住する加盟国とイギリスの国民の権利、清算金などへの対処がEU側の最優先となっています。実際の交渉入りは6月8日のイギリス総選挙後でしたが、EUは指針を基にさらに詳細な「交渉指令」を5月中に定めることになります。最大600億ユーロ(約7兆円)ともされる清算金にはEU予算への拠出金などだけでなく、指令でイギリス所在のEU機関の移転費用も指令で上積みする方向です。居住者の権利でも生涯に渡って今の権利を保証し、離脱後に呼び寄せられた家族に対する同等の権利付与なども求める方針です。移民の制限を目指すイギリス側には厳しい条件となるようです。

条件交渉で「十分な進展」があったとEU側が判断した場合、第2段階の将来の関係についての協議に入ります。トゥスク欧州理事会常任議長は「離脱の影響を受ける市民と家族の権利の保障はイギリスとEUにとっての最優先事項だ」と語りました。イギリス側はEU離脱の金銭的条件の協議と将来の広範な関係に関する二つの協議を並行することを求め、「手切れ金」の支払いにも難色を示しています。

ドイツのメルケル首相は4月27日、イギリスがEUを離脱すれば「ほかの加盟国と同等の権利を得ることはできない」と国会で述べると共に「そのような幻想を抱いている者もいるが、時間の無駄だ」とも強調し、EU離脱はイギリスに不利益をもたらすと警告しました。

英国とEU間のコンセンサスを得にくいようだ

EUに対して1カ月前に正式に離脱通知したイギリスのメイ首相は、よりよい条件を勝ち取ろうと意気込みました。EU側は結束して、イギリスに厳しい姿勢を示していまが、イギリスが加盟国の分断に動くのではないかとも警戒しています。メイ首相は、総選挙を6月8日に前倒しして実施することにしました。4月27日の支持者集会では、メイ首相は「相手側は27カ国で敵対しようとしている。状況を不安定にし、経済成長への甚大なリスクになる」とEU側の姿勢を非難しました。また、「交渉には強く安定した指導力が必要だ」と述べて、政権の方針への支持を呼びかけました。

EUとイギリスの離脱をめぐる交渉は、6月に行われるイギリスの総選挙後に本格化しますが、移民を制限する一方、経済への影響を抑えるため自由貿易交渉は進めたいイギリスとの立場の違いが鮮明となり、厳しい交渉になることが予想されます。

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