ベトナムの少数民族であるテイ(Tay)族、ヌン(Nung)族、タイ(Thai)族の民謡テン(Then)の儀式が12日、南米北西部にあるコロンビアで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の政府間委員会で無形文化遺産に登録されました。この出来事はこれらの各少数民族の人々は自らの独特な民謡の儀式の維持、保存に対する責任感をより深く認識し、この文化遺産の保存にさらに力を入れるようになります。

テンは北部山岳地帯に住むターイ( Tay)族、ヌン族などの少数民族の文化生活と切り離せないものとなっています。ターイ族の言葉ではテンは天地の「天」という意味ですから、テンを歌う人は村人を代表して、神様に豊作と幸福、豊かな生活を祈る人のことをいいます。

順調な天候を祈る民謡テンのほか、長寿、男女の幸せな愛、幸運などを祈るテンもあります。祭典で演奏されるテンのほか、日常生活で歌われているテンは故郷の旅情や人々の美しさを讃えるものもあります。

民謡テンは山岳地帯の多くの地方で歌われていますが、それぞれの地方によって、少し違います。ランソン省の民謡テンは切ないメロディですが、トェンクアン省の民謡テンのリズムが速く、そして、ハ・ザン省の民謡テンはゆるやかなリズムです

テンの儀式は、3つの民族の精神的生活の拠りどころとして欠かせないもので、彼らのヒト、自然界、宇宙観を反映しています。儀式ではテンの長老が供え物をし、傷病の快癒や豊作、新年の幸運などを祈願して、民族の言葉で歌ったり、楽器を演奏したりします。女性が集団で踊る群舞もあります。

テンの儀式は口伝で次の世代に伝承されます。長老は儀式に関連する技能や秘事の伝授において、重要な役割を担っています。一部の長老は年に約200回の儀式を行っています。現在テンの長老は817人(男性213人、女性604人)。うちテイ(Tay)族が439人、ヌン族が328人、タイ(Thai)族が233人、その他が27人となっています。

北部山岳地帯バクカン省バクカン市に住む優秀芸人称号をもつリュ・ディン・バオ( Luu Dinh Bao) さんは今年78歳ですが、38年にわたり、テンの儀式を行ってきました。バオさんは「テンはテイ族、ヌン族、タイ族にとって精神的な糧であると明らかにし、次のように語りました。

（テープ）

「テン(Then)の儀式がユネスコの無形文化遺産として認定されたことを嬉しく思っています。これはこの儀式を子孫に伝えるための原動力になります。次の世代に伝えないと、この儀式は失われることでしょう。」

一方、バクカン省に住んでいる民謡テンの儀式の芸人マー・チュン・チョクさんは優れた歌声で有名になっています。チョクさんは民謡テンを歌うクラブを結成し、この伝統的民謡を維持、保存すると共に、観光客に紹介するため上演しています。

チョクさんの高床式の家は民謡テンを教える場所でもあります。チョクさんは民謡テン(Then)の儀式がユネスコの無形文化遺産として認定されたことを受け、とても嬉しく思っています。

（テープ）

「民謡テンを教えている私は現在、テイ族、ヌン族などの少数民族の若者がこの民謡に興味を持っていることを知っています。これは私の仕事の原動力となっています。今後も、若い世代に民謡テンを教えることにさらに取り組んでいます」

一方、北部山岳地帯ランソン省はテンの儀式を執り行う場所の一つです。現在、同省では民謡テンを歌う１００のクラブが活動を行っています。ランソン省文化スポーツ観光局のフアン・バン・ホア( Phan Van Hoa) 副局長は次のように語りました。

（テープ）

「テン(Then)の儀式がユネスコの無形文化遺産として認定されたことから、今後も、テンの維持、保存に引き続き取り組みます。具体的に、私達は文化スポーツセンターや各村、地区の民謡テンを歌うクラブに対し、民謡テンをさらに普及するよう案内します。」

また、近年、ハノイで、民謡テンを公演するプログラムが常時に活動を行っており、少数民族だけでなく、ハノイを始め、各地の人々に民謡テンの価値を紹介してきました。

現場の音

ランソン省の民謡保存協会のチェウ・トゥイ・ティン( Trieu Thuy Tien) 副会長は次のように語りました。

（テープ）

「民謡テンを普及させることは大都市を含め、全国各地の人々に紹介するのは私達のテンの愛好者だけでなく、多くの人々の願いです。これはテンの儀式の価値を広く紹介するチャンスとなります。ハノイの人々と外国人観光客も民謡テンが好きです。」

テンの芸人は普段から民謡テンが広く知られるように取り組んでいます。

今年最後のハノイ便りは少数民族の民謡テン(Then)の儀式の維持、保存についてお伝えしました。それでは今日はこの辺で。