テイグエン地方の象文化

(VOVWORLD) - テイグエン地方は象の生息地で、人と象が一緒に暮らしていることでも知られています。象に関する文化はこの地方の豊かな文化の一部です。

山崎 こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン こんにちは、ソンです。先々週のハノイ便りで、ベトナム中部高原地帯のドラ文化についてお伝えしました。

山崎 ドラがたくさんの種類があることやトーン、音階を持っているのに驚きました。で、中部高原地帯は日本のガイドブックなどにはタイグエン地方と書いてあるんですが、ベトナム語の発音ではテイグエンになるんですよね。

ソン そうなんです。VOVも前まではタイグエン地方と言っていたんですが、ベトナム東北部にタイグエン省という省があって、そちらと区別をするためにも、よりベトナム語の発音に近いテイグエン地方と言っています。

山崎 外国の地名は日本語にするとちょっと違う読み方になるものがありますからね。そして、ドラ文化の話ですか?

ソン いえ、今日のハノイ便りは、テイグエン地方の象文化をご紹介します。

テイグエン地方の象文化 - ảnh 1

山崎 象は動物の象ですか?

ソン そうです。17の少数民族が住むテイグエン地方には様々な文化があるんですが、この前お伝えしたドラ文化の他、象に関するものもあるんです。

山崎 そういえばドラ文化の時に、貴重な財産としてのドラは象2頭分になるいう例えが出てきました。それだけ象は身近で大切なものなんですね。

ソン はい。テイグエン地方は象の生息地で、人と象が一緒に暮らしていることでも知られています。象に関する文化はこの地方の豊かな文化の一部なんです。

山崎 知りませんでした。タイなどでは象に乗るツアーなんかもありますけどね。

ソン テイグエン地方にもありますよ。また後でご紹介します。ところで、日本とベトナムは、江戸時代に象で関係があったのは知ってますか?

山崎 江戸時代。何でしょう?

ソン 1728年、オスとメス2頭の象が、徳川の8代将軍、吉宗に献上されるため、ベトナムから長崎に連れてこられました。メスは長崎に到着後、3ヶ月で死亡しましたが、オスは陸路で長崎から江戸に向かって歩き、大人気だったそうです。

山崎 へええ。初めて聞きました。今でも象は動物園などに行かないと見られないですからね。街中で見た江戸時代の人は大興奮だったんじゃないですか?

ソン そうですね。長崎から2か月ちょっとで江戸に着いたそうですが、私は4年前に長崎でその話を聞いて、感動しました。

山崎 象は重い物などを運ぶ働き者というイメージがありますけど、一歩一歩歩いていく姿を想像すると、ほんと感動しますね。テイグエン地方は象の生息地ということですが、今はどのぐらいの数がいるんですか?

テイグエン地方の象文化 - ảnh 2

ソン 統計によりますと、ベトナム全土での野生の象はおよそ120頭で、その7割はテイグエン地方に生息しています。そして、人間が飼っている象は45頭で、そのほとんどがテイグエン地方にいます。

山崎 昔はもっといたんですか?

ソン はい。ベトナム全土にいたんですが、森林開発が進んだことから象の生息地がなくなって、現在はテイグエン地方やベトナム中部に限られています。

山崎 先ほどソンさんが、テイグエン地方では人と象が一緒に暮らしているという表現をしましたけど、大事な存在なんですね。

ソン そうです。テイグエン地方では、昔から、象は権威と財産のシンボルです。また、畑に行って作物を運んだり、建築資材を運んだりする重要な働き手でもあります。象は村の一員として人間と同じように考えられています。例えば、象が生まれたら名付けの儀式、象の健康を祈る行事、象の結婚式、出産を祝う行事、葬儀など、象に関する祭りや行事が盛んです。

山崎 人間と同じですね。一生の節目節目のイベントですよね。

ソン はい。象は天からの授かりものだと考えられているんです。中でも頻繁に行われているのが、象の健康を祈るものです。象を癒す行事、とも呼ばれています。

山崎 大事にされてますね。

ソン そうですね。これは象が重労働をした後に行われます。神様に象の健康を祈る儀式の後、バナナやトウモロコシ、サトウキビなど象の好きな食べ物を食べさせてやるんです。

山崎 至れり尽くせりですね。それだけ象が働いてくれてるんですよね。テイグエン地方のダクラク省に住む象の飼い主(ダン・ナン・ロン)の話です。

(テープ)

「象が大きな仕事で1、2週間がんばった後に、象を癒す行事をします。栄養面や精神面でも、おつかされさまと感謝の気持ちをこめて、ゆっくりしてもらいます。大変な労働の後にねぎらうのは、象に対しても同じです。人間と同じですから。」

山崎 こういうコメントを聞くと、テイグエン地方の人がどれだけ象を思っているかわかりますね。他のダクラク省の住民(イ・ジュット)の話です。

(テープ)

「私たちは象を家族の一員と考えています。象の世話は大変な時もありますが、みんなで面倒を見ます。話せないだけで、人間のように、愛情や喜び、悲しみ、怒りを持っているんです。」

山崎 言葉がなくても、もうわかるんですね。象とそれに関する文化は、この地方に欠かせないものですね。

ソン はい。象に関する祭りや行事の中で、1番大規模な物は、春にダクラク省で行われる象祭りです。

山崎 象祭り。1年に1回ですか?

ソン 2年に1回です。少数民族の狩りの技術や勇敢さを見せるための伝統行事です。野生の象も多いヨックドン国立公園や周辺の村などから、自慢の象が集まります。

山崎 どれくらい集まるんですか?

ソン その年によって違いますが、平均で20頭ぐらいです。

山崎 象祭りの内容はどんなものでしょう?

テイグエン地方の象文化 - ảnh 3

ソン 象のレースや象のダンス、重い物の運搬ショー、川渡り競争などいろいろあります。象達のサッカーの試合もあるんですよ。

山崎 前にテレビで見たことがあります。大きい体で小さいボールを蹴るのが上手なんですよね。

ソン そうなんです。象のレースも面白そうですよ。広い平地で、象は並んでレースを待ちます。静寂が辺りに広がりますが、ホルンのような民族楽器の合図で、象使いの乗った象達がレースを始めます。応援の歓声が響き渡ります。

山崎 象のレースなんてなかなか見られないですからね。ソンさんは見たことありますか?

ソン ないです。それから、今は野生の象を獲ることは禁じられているんですが、昔やっていた野生象の捕獲方法のデモンストレーションが象祭りで見られるんです。

山崎 盛りだくさんの内容ですね。これは地元の人だけでなくて、観光客も行けるんですか?

ソン はい。この頃は象祭り目当てに、テイグエン地方に行く観光客が増えつつあります。

山崎 私も見てみたいです。動物好きの子供には最高ですよね。

ソン そうですね。象に乗ってのジャングルツアーも観光客に人気があるそうです。象は、テイグエン地方の観光を活性化させる大事な要素の一つとなっています。

山崎 本当ですね。それによって、象の飼育や保護も適切に行われるようになるといいですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ベトナム中部高原地帯テイグエン地方の象文化についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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