バオニンさんの『戦争の悲しみ』に対する中国の学者の評論

(VOVWORLD) -『戦争の悲しみ』は、作者にも重なる経歴を持つ主人公キエンのベトナム戦争従軍時の悲惨な体験、そして、戦後の生活についての断片的なエピソードを、フラッシュバックのように積み重ねて物語られています。
バオニンさんの『戦争の悲しみ』に対する中国の学者の評論 - ảnh 1     中国語版=CS-Booky 

ご機嫌いかがですかみなさん。ハノイ便りの時間がやって参りました。

ベトナム人の作家バオ・ニンが執筆した小説「戦争の悲しみ」(原題:Noi buon chien tranh)は1987年に出版直後から、あらゆる側面で旋風を巻き起こしました。その後、この小説は国内外で多くの賞を受賞したほか、日本語を含め、20カ国の言語に翻訳されました。

最近、この小説が中国語に翻訳されました。今日のこの時間はバオニンさんの『戦争の悲しみ』に対する中国の学者の評論についてお伝えします。

『戦争の悲しみ』は、作者にも重なる経歴を持つ主人公キエンのベトナム戦争従軍時の悲惨な体験、そして、戦後の生活についての断片的なエピソードを、フラッシュバックのように積み重ねて物語られています。

個々のエピソードは、兵士としての記憶も、戦後になって小説を書き始めることなども含めて、作者自身の体験に基づいていますが、全体としてはフィクションとなっています。

この小説が各国で翻訳され、世界各国で高い評価を得ました。 日本では1997年に翻訳・出版され、2008年に『池澤夏樹個人編集 世界文学全集』に改訳版が収録されました。池澤は「戦争に関する文学である以上に悲しみについての文学である」「ベトナム戦争が生んだいちばんいい作家がバオ・ニンである」と評しています。

ドイモイ事業が進められていた時代における文学の代表的な作家といわれる、バオ・ニン(Bảo Ninh)さんの「戦争の悲しみ」が、ベトナム文学協会、イギリス、デンマークの文学賞を受賞しました。また、韓国で開かれたアジア文学賞2018の地域文学賞を受賞しています。同作は2016年に韓国で別の賞を、日本でも2011年に日本経済新聞社の日経アジア賞を受賞しました。

これまで、この小説は世界20カ国の言語で翻訳されてきましたが、最近、中国の翻訳者の夏霧さんはこの小説を中国語に翻訳しました。これを受け、作家バオニンは次のように語りました。
(テープ)
「『戦争の悲しみ』が中国語に翻訳されたことを受け、嬉しく思っています。この本は英語を始め、多くの言語に翻訳されましたが、ベトナムに隣接していて、世界大国である中国語に翻訳されたのは今回が初めてです。他の言語と比べて、中国語に翻訳されるのは質的に異なるものだからです。」

この翻訳作品が正式に発行される前、『戦争の悲しみ』の一部が中国のいくつかの新聞に掲載されており好評を博しました。中国の現代文学の有名な小説家である閻連科(エン・レン・カ)さんは「戦争の悲しみは戦争を題材とした東方の最高の作品である」としました。

バオニンさんの『戦争の悲しみ』に対する中国の学者の評論 - ảnh 2      翻訳者夏霧さん

一方、この本を発行したCS・ブッキー社の代表王遠哲さんは次のように語りました。

(テープ)

「この本を読んだ時、感無量でした。戦争をテーマにした作品で、このようなものを読んだことはありません。それぞれの読者の心の底にある文学性に触れました。バオニンのこの作品は戦争をテーマとした世界の第一級の作品の一つと言えます。」

一方、『戦争の悲しみ』を翻訳した夏霧さんは「この小説を読む度に、泣いてしまう」と打ち明けました。20年間にわたり、北京大学でベトナム文学を研究、講義してきた夏霧さんは「この作品はベトナムの小説の伝統的芸術手法を超えて、思想的、芸術的に大きな価値がある」と評価しました。

これまで、夏霧さんは『戦争の悲しみ』だけでなく、ベトナムの多くの文学作品を翻訳してきました。夏霧さんの話です。

(テープ)

「ベトナム語とベトナム文学は、私に世界に向かう特別な扉を開きました。これを通じて、私はベトナムのこと、そして、ベトナムと中国との関係、中国と世界との関係を深く理解するようになりました。ベトナム文学の研究を通じて、ベトナム人の友人とベトナムを研究している世界の学者との関係を持つようになりました。今後、私はどこに行っても、ベトナムの文学に関心を寄せ続けます」

夏霧さんが翻訳した『戦争の悲しみ』中国語版は優秀作品とされています。これはベトナムに対する翻訳者の見識と愛情を表われでしょう。

今日のハノイ便りは、バオニンさんの『戦争の悲しみ』に対する中国文学者の評定についてお伝えしました。

それでは、今日はこのへんで。



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