ベトナムの環境汚染問題


山崎  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りはベトナムの環境汚染問題についてお伝えします。

山崎 うーん、これはなかなかシビアと言うか、かなり差し迫った問題じゃないですか?

ソン そうなんです。今年の初めから、ベトナム全土で環境汚染関連の事件が50件以上発生しています。その中で、ベトナム中部で魚の大量死をもたらした台湾系の製鉄所による汚染廃水事件には国内外から批判が殺到しました。

ベトナムの環境汚染問題 - ảnh 1

山崎 私が今年4月にホイアンに旅行した時は、泊まったホテルに「魚の汚染問題があるので、当ホテル以外ではシーフードは避けてください」というお知らせが置いてあったんです。かなり深刻だったんですよね。

ソン はい。そんなこともあって、10月に行われた国会でも環境問題について取り上げられました。国会経済委員会が、来年2017年の経済社会発展計画での重要項目として、大きな環境汚染を引き起こした企業、組織を政府が厳しく処分することを求めました。

山崎 今までは多少大目に見ていたんですね。確かにこれだけたくさんの外国企業がベトナムに進出してきていて投資額もそれなりだと、経済を優先させてしまう現状もわからなくもないです。

ソン そうなんです。この十数年、ベトナム経済は著しい発展を見せています。大体7%前後の経済成長率を維持しているんです。

山崎 すごいですね。投資する側にそれだけの優遇政策を取っているからというのもありますよね。

ソン はい。ベトナム政府は、投資環境を改善したり、あらゆる経済部門の成長を奨励したりするなど、できる限り生産活動に便宜を図っています。それによって、ベトナムで企業の設立ブームが起きていて、いたるところで工場などが建てられているんです。

山崎 外国企業だけじゃないんですね。ベトナム企業もとなると、相当な数ですよね。それだけビジネスが活性化すれば雇用も増えますね。反面、経済が発展すると弊害も出てきます。それが環境問題ですね。

ソン そうです。工場から出る煙や廃水が環境汚染につながっています。資源環境省によりますと、廃水処理システムが整っていない工業団地はベトナム全土で25%に上っています。大きな環境汚染を引き起こしている、工場などの生産施設は300という数になっているんです。

山崎 これはいいんでしょうか?日本だと社会の大問題になると思います。地方だけかと思いきや、都市部でもそうなんですよね?

ソン はい。ハノイでは、およそ400ある工場の中で、廃水処理システムを持つところはわずか4分の1にとどまっています。ホーチミンでは、住宅地に散在している3000の工場を一か所に集める計画がありますが、これらの工場はほとんどが中小企業なんです。

山崎 と言うと、公害や環境対策などはしていないですか?

ソン そうなんです。ハノイやホーチミンだけでなく、工場が集まるハイフォン市やナムディン省、ハイズオン省などでも環境問題が大きな課題となっています。

山崎 ベトナムで有名な工業都市の名前が挙がりますね。それぞれ、日系企業も多く進出しているところです。

ソン そうですね。ベトナム全土で、ベトナムの環境保護法に違反している工場の割合は4分の1というんです。

山崎 もう「多いですね」と言うより、大丈夫ですか?

ソン 心配ですね。環境保護法に違反すると、罰金が課されます。ひどい違反の場合、工場閉鎖になりますが、これが簡単には行かないんです。多くの問題が発生します。

山崎 失業者が増えるということですか?

ソン そうです。例を挙げてみます。ベトナム北部、タイグエン省にタイグエン鉄鋼会社という企業があります。

山崎 タイグエン省。お茶で有名ですね。

ソン はい。この鉄鋼会社の工場設備は30年以上前に作られました。そこからの工業廃水や排気などが環境汚染を引き起こしています。法律に従えば、この工場は閉鎖となりますが、そうなると、1万3千人の従業員が職を失うことになります。更に、その下請け企業や出入り業者で働いているおよそ7万人にも影響が出るのは必至なんです。

山崎 ううーん、ジレンマですね。中小企業だけでなくて、これだけ従業員のいる会社でも環境対策への投資を行えないんですね。雇用の維持が環境破壊に繋がっているというのは、すぐに何とかしないとだめだと思うんですが。

ソン 本当にそうです。でもこれは、発展途上国に共通する難しい課題なんです。難問の解決へ向けて、ベトナムのグエン・スアン・フック首相は、社会全体に環境保護を呼びかけました。

山崎 どんな内容ですか?

ソン ベトナム国内外からの投資は奨励するが、環境対策をしている投資プロジェクトしか誘致しない、また2020年までに大きな環境破壊を引き起こしている生産施設の処分を徹底させるという方針を明らかにしたんです。

山崎 それによる失業者対策はどうですか?

ソン 実際、経済成長率が鈍化する地方も出てくると思いますが、政府は失業者の増加に対応する措置をとって、環境問題を解決することを決めました。

山崎 一時的に豊かになったとしても、必ず環境汚染の弊害は出てきますからね。健康に暮らせなければ国は繁栄しません。

ソン そうですね。フック首相も、人々の環境保護への認識を高めることが重要な対策の一つだと訴えました。何も考えず生産だけを続けるという考えは決して許されない、としています。

ベトナムの環境汚染問題 - ảnh 2

山崎 意識改革が一番大事ですね。

ソン そうですね。最近、ベトナムでは、環境保護の運動が広がってきています。若者をはじめ、多くの人たちが積極的に参加しています。中部のダナン市には「きれいなダナンのために行動する会」というボランティアグループがあるんです。

山崎 いいですね。率直に言うと、ベトナムはゴミの出し方、分別などもされていませんし、環境問題に関する一般の人の考え方はまだまだと思っていました。そういうボランティアグループの存在は大きいですね。

ソン はい。グループは毎日、ダナンのビーチでゴミ拾いをしています。メンバーは300人を超えています。

山崎 どんどん増えてほしいですね。ボランティアグループ「きれいなダナンのために行動する会」メンバー(グエン・コン・ズイ・コイさん)の話です。

(テープ)

「ダナンは海の街で、海はダナンのセールスポイントですが、ゴミの多いビーチもあるんです。ポイ捨てする人がいるからです。ゴミ拾いで海をきれいにすることはもちろん、人々の環境問題への意識を高めようと思っています。」

山崎 「きれいなダナンのために行動する会」は、いろいろな人に環境について考えさせるよい例として評価されているようです。ダナン市民(グエン・ヴァン・タンさん)の話です。

(テープ)

「ボランティアの人たちがやっていることは、すごくいいと思います。今までゴミをその辺に捨てていた多くの人はボランティアの活動を見て、決められたところにきちんとゴミを捨てるようになりました。これからも、ああいうボランティア活動が盛んになるといいです。」

山崎 環境を生かすも殺すも自分達なんですよね。環境汚染から健康被害が出て、本当に自分達自身を生かすも殺すも、になってしまうので、怖いです。大切に守っていかないとだめですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ベトナムの環境汚染問題についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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