カイディン帝廟

1993年に、ベトナム初となるユネスコの世界遺産ができました。それが中部の古都フエの建築物群です。具体的にいうと、ベトナム最後の王朝である「阮朝」の王宮を中心に、歴代13代にわたる阮朝時代にできた建築物を指しています。その中で、歴代の皇帝が眠る陵墓はどれもみな美しく、その時代の皇帝の価値観や趣向、時代が反映されていると評され、国内外の観光客をひきつけています。

現在、フエ遺跡群には、7つの陵墓が残っており、各々が建築的に独創性を持つだけでなく、総体として阮朝の歴史的な流れをも体現化しています。フエの陵墓は、明・清朝時代に確立された中国の陵墓を参考に、共通要素として、河か池を前面にあり、拝庭、碑亭、段台状テラス、寝殿（礼拝殿）、石棺の５つの要素から構成されています。しかし、中国の陵墓に倣う一方で、阮朝の皇帝達は各々自らの趣味に合わせて陵を計画したため、共通の要素を持つにもかかわらず、各陵墓は驚くべき多様性を見せます。また、配置計画におけるフエの自然環境の巧みな利用も共通した特徴です。

カイディン帝廟

陵墓の中で最も有名なのは12代カイディン（啓定）帝の陵墓で、カイディン帝廟と呼ばれています。カイディン帝廟は、1920年から12年の歳月をかけて建設されました。カイディン帝の時代は中国の影響が薄くなり、フランスの統治下の時代でした。中でもカイディン帝はフランスの美術文化に魅せられた皇帝の一人で、積極的にフランス文化を建築物に取り入れました。そのため、カイディン帝廟はコンクリートの駆体にガラスや陶器のモザイクで飾った壁、教会建築なども取り入れたユニークなデザインで、観光客の間では歴代帝廟の中でも一番人気のある帝廟です。

カイディン帝廟

フランスの華やかな装飾や思想をこよなく愛したカイディン帝ですが、実際はそれだけにとらわれることなく、東洋美も建築様式に取り入れています。カイディン帝自体は特定の信仰宗教をもたなかったため、不特定の宗教建築が使われているのも、この陵の特徴です。

観光客に人気がある帝廟として、カイディン帝廟のほか、ミンマン（明命）帝2世の陵墓です。７つの陵墓のうち最もバランスよく配置されているのが明命帝廟です。王国の積極的な設計者であったミンマン帝は、この陵においても厳格である陵と優雅な大庭園をひとつに融合させることを試み、それは見事に成功しました。

ミンマン帝廟

入り口から約1キロあるお墓まで色鮮やかな建物が点在し、池に橋を架けたり、高低差をつけるなど立体的な演出で参拝者を楽しませてくれます。芸術性に優れた庭園と評されているミンマン帝廟に足を運ぶならば、だれもがその落ち着いた雰囲気の中で癒されることでしょう。ドイツから来た観光客の感想です。

（テープ）

「ここの風景は緑が多くて、素晴らしいです。新鮮な空気を肌で感じることができます。また、ここの建築はヨーロッパとはかなり違い魅力的です。」

ミンマン帝廟

カイディン帝廟は西洋と東洋が融合し、ミンマン帝廟は自然を大切にする価値観で有名であるのに対し、皇帝トゥドクク（嗣徳）帝4世の陵墓は、詩人であり哲学を好んだトゥドクク帝の性格を反映することで有名です。陵墓の中心に大きな蓮の池を配置した風雅な庭園があります。そのほか敷地内には住居やお寺を建てて、生前から別荘として愛用していました。

トゥドゥック帝廟

トゥドゥック帝は、池のほとりに立つ釣殿で詩を書いたり、釣りを楽しむことを好んでいたと言われています。釣殿は欧米人にとっても癒しスポットのようで、代わる代わる階段を下りて緑色の池に足湯のように浸かっています。

イギリスから来た観光客の話です。

（テープ）

「ここの建築はイギリスの建築と異なります。フエの陵墓は、様々な建築物があり、その時代の流れを物語っているという感じがします。」

トゥドゥック帝廟

フエ遺跡群の陵墓は国内外の観光客にとって魅力的に観光スポットであり、子どもに国の歴史を教える効果がある場所でもあります。トゥアティエンフエ省フーヴァン県のフージエン小学校は2年ごとに、フエへ遠足に行っています。この小学校の教師ファン・アイン・トゥアンさんは次のように話しました。

（テープ）

「遠足は、生徒にとってベトナムの歴史について理解を深めるよいチャンスです。遠足後、生徒たちの感想を調べるために、アンケートを行いますが、これらを通じて、生徒たちがすごくいい体験をしたということがわかりました。」

機会がありましたら、是非、フエへ足を運んで、陵墓の美しさとその価値を実感してみてください。