ベトナム中部にある古都フエは、ベトナム初のユネスコ世界遺産として世界的にも知られていますが、この20年、国際的な芸術祭となっているフエ・フェスティバルを開催することによってフェスティバルの都市としても有名です。

2018年のフエ・フェスティバル

ベトナムとフランスの両政府によって提唱されたフエ・フェスティバルは、2000年に初めて開催されました。それ以来、フエ・フェスティバルは２年毎に開かれており、今年は11回目となります。4月1日から6日にかけて行われる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、停止せざるを得ませんでした。しかし、ベトナムが新型コロナの抑制に成功したことを受け、フエ市は今年の8月28日から9月2日にかけて第11回フエ・フェスティバルを開催することにしました。今回のフエ・フェスティバルは、コミュニティへ向けての様々な活動を行うもので、観光客大勢を魅了することが狙いです。

首都ハノイから南へ６７０キロ、ホーチミン市から北へ１０６０キロ 離れたところにある中部のフエ市はベトナムの最後の王朝グエン朝の都として栄えていました。グエン朝の王宮を中心に、歴代13代にわたるグエン朝時代にできた建築物は今もなお、フエ市に点在しており、１９９３年にユネスコによって世界文化遺産として認定されました。古都フエ遺跡群の中には19世紀の初めにグエン（阮）王朝時代のミンマン王が建設した王宮が代表的な見所です。200年もの歳月を経た今もなお、この王宮には140の施設が昔のまま保存されています。

こうしたフエは世界的にも有名な観光地となっています。特に、フエ・フェスティバルが2000年に行われてからは、フエはより多くの観光客をひきつけています。フエ遺跡群はフエ・フェスティバルが行なわれる舞台となっていますが、このフェスティバルを通じて、フエ遺跡群の価値が広く紹介されるようになりました。

1回目のフエ・フェスティバルにはベトナムとフランスのアーティストや俳優などおよそ１千人が出演し、約４１万人の市民と観光客が楽しみました。そして、２回目となる２００２年のフエ・フェスティバルではフランス、中国、日本、韓国、インドネシア、タイ、ラオス、カンボジアから３３の芸術団と国内のおよそ１５００人のアーティストや俳優が上演しました。これまで１０回にわたり開催されたフエ・フェスティバルは世界の５０カ国と地域の芸術団の出会いの場となりました。これは世界におけるフエ・フェスティバルの地位の確立につながっています。

2018年のフエ・フェスティバルのアオザイファッションショー

今年で11回目を迎えるフエ・フェスティバルは、文化・芸術・観光のフェスティバルの誕生・発展20周年の道のりを記すものです。今回のメイン活動は、ベトナムの国民的音楽家である故チン・コン・ソン(Trinh Cong Son)の音楽会、フードフェスティバル、アオザイフェスティバル、大道芸などのイベントが含まれます。また、フエ遺跡保存センターがフエの5つの世界文化遺産を紹介する特別イベントを開催する予定です。このほか、組織委員会は様々な民間芸能活動の開催を促進させるとしています。

今年のフェスティバルの特徴は、地域コミュニティーへ向けて様々なイベントを行なうということです。大ステージでのイベントではなく、コミュニティーで行うことにしました。フエ・フェスティバルの開催にあたっているフエ・フェスティバルセンターのフイン・ティエン・ダット所長は次のように語りました。

（テープ）

「フエ・フェスティバルを、「コミュニティーの、コミュニティーによる、コミュニティーのための」ものにするため、本格的なステージで行われるイベントを減らします。その代わりに、フエ市の歩行者天国や中心部の通りでより多くのイベントを行おうとしています。これにより、より多くの市民と観光客がイベントを楽しめるようになると思います。」

また、ベトナムの民族衣装アオザイの発祥地とされるフエ市のイメージアップを図るため、アオザイのファッションショーを大規模で催すとともに、フェスティバルの開催期間中、フエ市民にアオザイの着用を呼びかける方針です。トゥアティエン・フエ省文化スポーツ局のファン・タイン・ハイ局長は、次のように語りました。

（テープ）

「今年のフェスティバルには、アオザイの披露会が行われるほか、フェスティバル期間中、フエ市でどこでもいつでもアオザイの姿が見られるよう、みんなにアオザイの着用を呼びかける計画です。」

新型コロナ収束後に開催される今年のフエ・フェスティバルは、新しい活力をもたらし、困難を乗り越えるよう激励するという大きな意義を持っています。