バナ族の伝統的な斜めがけバッグ – 男性の誇り高きアクセサリー

(VOVWORLD) - ベトナム中部高原地帯テイグェン地方、特にこの地方の祭りの場では、小さくて鮮やかな伝統的な刺繍バッグを肩に掛けた男性たちに出会うでしょう。この地の先住民族バナ族の男性にとって、バナ語で「クテップ(K'thep)と呼ばれるこの斜めがけバッグは、シャツ、腰布、頭巾と並ぶ伝統衣装の重要な一部なのです。
バナ族の伝統的な斜めがけバッグ – 男性の誇り高きアクセサリー - ảnh 1「クテップ(K'thep)」バッグをかけているバナ族の男性

バナ族の男性の生活は常に移動を伴います。農地や畑での作業、そして伝統的な打楽器「銅鑼」の演奏と、多忙な日々を過ごします。そんな彼らにとって、この斜めがけバッグは日常生活や芸能活動に欠かせない存在となっています。

かつての伝統的な装いは、腰布に裸の上半身または半袖の上着、そして頭に頭巾を巻くというものでした。しかし、こうした装いには荷物を置く場所がほとんどなく、パイプや装飾品、指輪、ブレスレットなどを持ち歩くのは困難でした。そこで生まれたのが、斜めがけバッグ「クテップ」なのです。

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「このバッグには、パイプ、タバコ、その他の個人的な持ち物を入れます。祭りや儀式の際には必ず身につける必要があり、女性は使用せず、男性だけが携帯します。女性は通常のスカートとシャツ、背負い籠を使うだけですが、男性はバッグ、刀、そして銅鑼を持ち歩きます。」

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「銅鑼を演奏する際、このバッグは絶対に必要です。腰布を着ている時は荷物を置く場所がないため、すべての持ち物をこのバッグに入れて運びます」

「クテップ」バッグの製作には、驚くほど繊細な技術が必要とされます。正方形で約20センチメートルの小さなバッグには、両面に精巧な装飾が施され、完成までに約1か月もの歳月を要します。興味深いことに、この繊細な作業は女性の仕事とされています。

バナ族の伝統的な斜めがけバッグ – 男性の誇り高きアクセサリー - ảnh 2伝統的な織物を作っているバナ族の女性

ザライ省クバン県トトゥン村に住む職人、ディン・プリー氏は、バッグの製作には女性の並外れた忍耐と技術が求められると述べ、次のように語りました。

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「テイグェン地方では、バッグ作りは男性の仕事ではありません。織り、染色、糸作りはすべて女性が担当します。使用する色は黒、赤、白、黄色の4色です」

バッグの外側と肩紐には、森、山、川、集会所、墓地などバナ族の日常生活に根ざした情景が緻密に描かれています。黒を基調とした衣装に、白と赤の色彩が鮮やかなアクセントを添えるバックです。バナ族の解釈によりますと、白と赤は生命力、向上心、情熱、愛、願望を象徴し、黒は大地、生命の芽吹き、自然の包容力を表現しているのです。先ほどのディン・プリーさんはさらに次のように語りました。

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「このバッグを完成させるには、実に1か月もの歳月を要します。織りは非常に手間のかかる作業で、一枚の伝統的な織物から5〜6個のバッグを作ることができます。その後、職人は個人の好みに応じて装飾を加えていきます」

さらに、多くの職人は労働や森での経験から得た動物の姿を織り込むことで、バッグに独自性を与えています。鳥や熊の足跡、大空を舞う鷲の姿など、自然との密接なつながりを物語るモチーフが刺繍されるのです。職人ディン・プリーさんは次のように語りました。

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「装飾模様には、森の中の花や葉、菱形や四角形の形状、さらに動物の足跡も含まれます。彼らは犬の足跡のような模様を織り上げます。森の中に見えるものは、すべてそのまま模様にするのです」

これらの装飾は、バナ族のバッグに唯一無二の魅力を吹き込んでいます。シンプルでありながら深い意味を持つ彼らの感性は、自然を手本とし、独創的で新鮮な形を生み出し、バナ族固有の文化的アイデンティティを鮮明に表現しているのです。

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