(VOVWORLD) - 蜜蝋で布の模様を描く職人技は北西部山岳地帯に暮らす少数民族モン族とザオ族によって代々受け継がれています。これらの少数民族の女性たちは、熟練した手と豊かな想像力を駆使して、蜜蝋を使ってカラフルで美しい模様が施される布地や衣装を作っています。民族のアイデンティティを保つために、モン族とザオ族の職人たちはこの職人技の保存と開発に力を入れています。
蜜蝋で布の模様を描く職人技で作られた布 |
モン族の衣装は手作りで、女性たちは布づくりからすべて自分たちの手で行います。衣装には思い思いの刺繍とろうけつ染めが施されます。丁寧に仕上げるため、一年に1、2枚しか作れません。蝋描きには蜜蝋が使われます。下書きも無しに、四角いマスだけを目安にして,正確な幾何学模様を描いていきます。銅版の隙間に蝋を溜め、蝋描き用の小刀で線を引きます。この小刀は、大小さまざまあり、描く模様によって数種類を使い分け、蝋の落ちる量によって、線の太さに変化をつけて模様を描いていきます。ほそく細かい模様を描くときは、小さな刀を使いますが、中に入る蝋が少ないため、何度も何度も小刀を蝋につけ、めまぐるしく描いていきます。
その後は、蝋描きした布を染める藍染の作業です。蝋で文様を描いた布は、一度水に浸し、藍液に10分程度浸けておきます。布を取り出すと、空気に触れることで、徐々に緑っぽい色から藍色に変わっていきます。30分程度したら再度、藍液に浸し、これを好みの色になるまで繰り返します。繰り返すごとに、モン族の民族衣装のような黒に近い濃紺になっていきます。染め終わった布は、熱湯に入れ、蝋を取り除き、よく水洗いして乾燥させ、長い藍染めの作業が終わります。ホアビン省マイチャウ県パコ村の職人ソン・イ・タインさんは次のように語りました。
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「モン族は、蜜蝋の熱を保ちながら布地に絵を描くことができるように、黄銅でできた小刀を使用します。生地の端に合わせて1つずつの模様を描きます」
娘さんにこの職人技を教えている職人ソン・イ・タインさん |
モン族と同様、ザオ族の蜜蝋で布の模様を描く職人技は昔から伝わるもので、今もなお大切に保たれており、日常着にも使われています。特に、この職人技の原料である蜜蝋も村の財産となっています。カオバン省グエンビン県ホアイカオ村に暮らす職人バン・ティ・リエンさんは次のように語りました。
(テープ))
「私の村には蜂がたくさん生息する洞窟があります。これらの蜂の巣は、蜜蝋を採取してザオ族の女性の衣装を作るために、昔から村人によって大切に守られています」
現在、モン族とザオ族は、蜜蝋で布の模様を描く職人技を保存することに加えて、この職人技で応用性の高い商品を作るための協同組合などを設立する取り組みをしています。しかし、この取り組みは国の支援を必要としています。職人サム・ティ・ティンさんの話です。
(テープ)
「私は少数民族の人で、国が蜜蝋で布の模様を描く職人技を始め、全国の少数民族の伝統文化の保存と開発をさらに支援するようにという願いを持っています」
一方、「ベトナムの54民族のコミュニティ」というグループの担当者カオ・トゥアン・ニンさんは、同グループは少数民族の伝統的な職人技によってつくられる商品のPR・消費の促進を目指すために設立されたと述べ、次のように語りました。
(テープ)
「当グループはベトナムの少数民族のコミュニティをつくることを通じて、困難な状況にある職人を支援し、少数民族の職人技でつくられる製品を商品化するために取り組んでいます。また、これらの製品をより高い価格で販売し、より多くの人に製品を知ってもらえるようにしています」
モン族とザオ族のこの職人技を楽しんでいる市民 |
モン族とザオ族のこの職人技は先ごろハノイで初めて紹介されました。「ベトナム女性博物館によって行われた「蜜蝋・藍色」をテーマとしたイベントでは、来場者は、モン族とザオ族の職人が蜜蝋で布の模様を描く職人技を披露することを賞賛するだけでなく、自らで蜜蝋で布の模様を描くこともできます。来場者の話です。
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「私はベトナムの各少数民族の文化が好きです。モン族のほか、すべての少数民族の文化にも興味を持っています。これからも少数民族の文化が大切に保たれることを期待しています」
「モン族とザオ族の蜜蝋で布の模様を描く職人技を紹介する今回のイベントはとても印象的です。この職人技の披露を楽しむとき、想像しながら少しずつやっていく、とても丁寧な仕事だなと感じました。生地に蜜蝋を塗るのは民族特有の文化だと思います」
社会全体の取り組みと支援により、モン族とザオ族の蜜蝋で布の模様を描く職人技は末永く保存されるだけでなく、この職人技でつくられる製品が商品化され、少数民族の収入増加にも役立つものと期待されています。