(VOVWORLD) -アメリカは6月1日から鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せします。アメリカにとってEU、カナダ、メキシコは主な鉄鋼の輸入先で、輸入全体の4割を占めています。
ジャンクロードユンケル委員長
(写真:THX/TTXVN)
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アメリカのトランプ政権は5月31日、EU=欧州連合やカナダ、メキシコから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を発動すると発表しました。通商交渉で圧力をかけるため5月31日まで適用を一時的に猶予してきましたが、譲歩を引き出せないと判断して猶予を打ち切りました。EUなどは対抗措置を打ち出す構えです。中国に加え、欧州とも貿易摩擦が激しくなるのは避けられません。
アメリカは6月1日から鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せします。アメリカにとってEU、カナダ、メキシコは主な鉄鋼の輸入先で、輸入全体の4割を占めています。国際市況に影響を及ぼすほか、鉄鋼メーカーや鉄鋼を使う自動車メーカーも事業戦略の見直しを迫られます。
大統領が掲げる「米国第一」主義の表れ
アメリカ商務省はさる2月、鉄鋼とアルミの輸入増で国内産業が弱り、防衛装備品の調達など安保上の脅威になっていると認めた調査報告書を公表しました。対策として、それぞれ3つの輸入制限案をトランプ氏に勧告しました。実際にどのような輸入制限を発動するかは同氏の最終判断に委ねられていました。商務省の提案には、すべての国からの鉄鋼輸入に最低24%、アルミに最低7.7%の関税をかける案がありました。トランプ氏の判断は提案を上回る水準となりました。トランプ氏が強硬策を打ち出す背景には、2018年秋の中間選挙を見据えて保護主義的な貿易政策を打ち出し、雇用創出を支持者にアピールする狙いがあります。
自由貿易にマイナス影響を与える
今回発表された輸入関税は、鋼板、板用鋼片、コイル、アルミニウム圧延品や鉄管、鉄鋼アルミニウム原料など、アメリカの製造業、建築業、石油産業で広く使われている製品に影響を与える恐れがあります。
トランプ政権の今回の鉄鋼とアルミニウムに対する追加関税を前にして、メキシコ、カナダ、EUはこの追加関税が「単純で純粋な保護主義だ」と批判しました。すぐに報復関税の導入を発表しました。イギリスは、これまで数週間にわたり交渉してきたにも関わらず、アメリカの関税導入が決定したことに「深く失望している」と述べました。
欧州委員会のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は「世界貿易にとって悪い日」になったと述べました。また、同委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長はアメリカの措置について「全く受け入れられない」としました。
ユンケル委員長はEUに「選択肢はない」としたものの、WTO=世界貿易機関に紛争処理手続きを申し入れると共に、アメリカの輸入品に対し対抗関税を課すとも付け加えました。このように、現在、アメリカとEUとの関係が長年来、最悪になると言えることでしょう。