アメリカのケリー国務長官は4日間にわたる中央アジア5カ国の歴訪を終えました。アメリカ国務長官が1度の外遊で全中央アジア5カ国を歴訪したのは今回が初めてで、同地域での影響力拡大を狙っているとみられます。
今回、ケリー氏はキルギス、ウズベク、カザフスタン、タジク、トルクメニスタンの全5カ国を歴訪しました。1日、ウズベキスタンの古都サマルカンドで、ケリー氏は中央アジア5カ国の外相と会談し、5カ国の外務省と米国務省による定例協議の枠組み「C5+1」を立ち上げることで合意しました。アフガニスタン情勢や、中央アジアでの影響力拡大を目指すロシアを見据え、アメリカは安全保障や資源・エネルギーなどの分野でこの地域との連携を強化したい考えです。
安全保障協力は第一の課題
ケリー氏の中央アジア歴訪はロシアがアフガニスタンに拠点を置くイスラム過激派の危険な活動は全地域に波及する恐れがあると警告した後、行われたものです。
ケリー氏と5外相は会談後に共同声明を発表し、イスラム過激派の台頭するアフガン情勢が「地域の安全と安定にとっての重要な要因だ」と指摘しました。テロや大量破壊兵器の移動、麻薬密輸といった「国境を越える脅威」に対応するため、協力を深める方針を示しました。
中央アジア諸国では、アフガンからイスラム原理主義組織タリバンや、過激組織「イスラム国」の分子が流入することへの懸念が強まっています。中央アジアを 「勢力圏」と見なすロシアはこれに乗じ、基地を構えるタジキスタンやキルギス以外にも軍事関係を拡大する動きを見せています。
影響力の拡大を狙う
2001年9月の米中枢同時テロ後、アメリカはアフガンでの対テロ戦の拠点としてキルギスとウズベクに空軍基地を開設し、ロシアもこれを容認しました。しかし、2005年にはウズベクが、2014年には対露接近を強めたキルギスが基地を閉鎖し、アメリカ軍は中央アジアでの足場を失った経緯があります。
5カ国のうち、ウズベクとトルクメンはロシア主導の集団安全保障条約に加盟しておらず、ケリー氏も両国への訪問を重視しているとみられます。トルクメンでは、同国からアフガン経由で南アジアへと天然ガスを輸送するパイプラインの建設を後押しし、両国の連携を誇示する公算が大きいです。
ロシア政権はここにきて、アフガンからイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」などの分子が流入する危険性を声高に主張しています。基地を構えるキルギスやタジク以外とも軍事関係を強化する思惑だとされます。中央アジアでは中国の経済進出が活発で、米露も交えて影響力を競う三つどもえの構図となってきました。