イスラム教シーア派の一派の攻勢で混乱が深まるイエメン情勢は隣国サウジアラビアなど中東・北アフリカのスンニ派諸国の連合軍が軍事介入してから、緊張が増しています。サウジアラビアとイランの代理戦争の様相を呈しており、シリアやイラクを含めて中東情勢はさらなる不安定化の危機にひんしています。
イエメンの多くの地方が破壊された(写真:AFP)
3月下旬以降、サウジアラビア軍などがフーシ派への空爆を実施しており、民間人の犠牲が拡大しています。WHO=世界保健機関は7日、情勢が悪化するイエメンで3月19日から4月6日にかけ、戦闘などによる死者が推定540人以上に、そして、負傷者が1700人になったと発表しました。
終結のめどが立たない紛争
イエメンは、半世紀にわたる長い争いの歴史から、統治不能な国家だとみなされてきました。策略家で実力者だったサレハ前大統領はイエメンで30年にわたって最高指導者の座に君臨しましたが、2011年の「アラブの春」で失脚しました。
サウジアラビアはサレハ氏の後任として副大統領だったハディ氏を支持し、ハディ氏はその後、二大勢力である南部のスンニ分離独立派と北部のシーア派系「フーシ」がボイコットした国民投票で大統領に承認されました。
包括的な権限移譲を確実にすることを目指した国民対話では、2014年秋にフーシの武装勢力が首都サヌアを制圧し、大きな不信感があらわになりました。ハディ氏を辞任に追い込んだ後、フーシは紅海や南部沿岸の都市アデンに勢力を広げています。
影響力争い
イエメンの有害さには、さらに構成要素があります。国際テロ組織アルカイダ系の地元組織が南部と東部で強力な地盤を築き上げています。過激派「IS=イスラム国」は今月、サヌアのモスクで死者を伴う爆破事件を起こし、フーシを戦闘に駆り立てました。
イエメンの武装部族を起源とする軍は、先週後半にイエメンを脱出したハディ 暫定大統領の勢力と、いまやフーシと連携するサレハ前大統領派の2つに分裂しています。サウジアラビアや同国と連携するスンニ派諸国はイエメンへの介入で結集しましたが、これはイランによる関与への派生的な動きです。
これらの国々はイランとその代理がアラブ地域で影響力を拡大したことに警戒を強めています。イランは、バグダッド、ダマスカス、ベイルートで影響力を確立しました。アラブの4つ目の首都サヌアでのフーシとの連合を通じて、イランはかなたの地を支配しているようです。
さらに、アメリカがイラクのティクリートでイランの支援を受けるシーア派勢力の側に立って空爆しながら、アメリカと同盟関係にあるサウジアラビアがイエメンでイランと連携するシーア派勢力を空爆することは、この地域がいかに混乱しているかを示しています。
これらの動きにより、今後もイエメンだけでなく、中東・北アフリカ地域全体の緊張情勢が増していくとの懸念が出ています。