イラク軍は19日、アメリカの支援を受け、過激派組織IS「イスラム国」が支配するモスル西部の奪還作戦を開始しました。イラクでのIS拠点の一掃を目指していますが、市西部には国連の推定で約75万人の民間人が残り、ISも激しい抵抗を続けているため、作戦は難航する可能性があります。
モスル西部へ進軍しているイラク軍(写真:AFP/TTXVN)
首都バグダッドから北西へ約400キロ離れたところにあるイラクの第2都市モスルは、イラク北部とシリア東部を結ぶ戦略的な位置にあります。モスル解放作戦は2016年10月17日から開始されました。この作戦の第一段階で、モスル東部の解放が優先にすえられ、モスルの3分の2が今年1月24日にISから完全に解放されました。
イラク軍 戦場で優位に
そして、イラク軍が、2月19日、アメリカ軍など有志連合の支援を受けながら街の中心部を流れるチグリス川の西側へ進軍する新たな軍事作戦を開始しました。イラク軍は、爆弾を積んだ車に突っ込まれるなど、IS側の激しい抵抗を受けたということですが、これまでに、ISが拠点としていたモスル南西部の6つの村を制圧したということです。
軍などの共同声明によりますと、連邦警察の部隊がモスル空港奪還を目指す作戦を主導しています。19日には空港から5キロ南の集落まで到達し、その際に配電所を制圧し、複数のIS戦闘員を殺害したということです。
しかし、西部の解放は東部よりはるかに困難を極めると見られています。なぜならテロリストの多くが東部の解放作戦で、西部に逃げたからです。このためイラク合同軍はこの段階で、多くの数のテロリストと戦わなければならないということになります。
人道危機の恐れ
モスル西部には、住民75万人が残っていると推定されていますが、国連は、モスルから出られずにいる市民の安全確保について懸念を表明しました。リズ・グランデ国連人道調整官は、市場が閉鎖され、食料や燃料不足が発生していると指摘しました。最大で40万人が避難民となる可能性があるということです。
そして、慈善団体のセーブ・ザ・チルドレンは19日、35万人の子どもが身動き取れずにいるとみられると述べました。また、モスル西側に取り残された家族が「脱出しようとすると、IS側に処刑される」と話しているとして、市民が、自力で脱出できない状況だとしています。セーブ・ザ・チルドレンのイラク担当ディレクターのクリバイエロ氏は、イラク軍やアメリカ軍などに対し民間人の脱出ルートをできるだけ早く構築するなど、子どもたちを含む一般の市民を守ることに全力を尽くすべきだと訴えています。
モスル西部の解放作戦は難航するかもしれませんが、ISの一種の終焉となるでしょう。