インドのモディ首相は、14日から就任後初めとなる中国訪問を開始し、習近平国家主席の地元で会談を行い、首脳どうしの信頼醸成とともに、経済分野を中心に関係強化を図ることにしています。これは両国の互恵の経済関係の強化に寄与するものとみられています。
14年に会った印中首脳(写真:AFP)
近年、両国の首脳らは頻繁に相互訪問を行ってきました。この12年間、インドの首相が4回にわたり中国を、また、中国の指導者らも6回にわたりインドを訪問してきました。モディ首相は、14日から16日までの日程で中国の西安、北京、上海の3都市を訪問し、まず西安で習近平国家主席と首脳会談を行います。中国の首脳が外国からの訪問客を地方で出迎えるのは異例です。
過去の問題
この数十年間、インド・中国関係は国境紛争により、複雑に推移しています。1950年代から60年代に中国とインドの領土紛争が発生しました。1962年の本格的軍事衝突を指す場合もありました。中国とインドが争う主要な地域は西部国境のカシミール地方と東部国境のアルナーチャル・プラデーシュ地方です。
カシミール地方は、インドとパキスタン、中国が領有を主張しています。中国が実効支配しているのはアクサイチン地方で、インドはカシミール地方全域の領有を主張しています。インドのモディ首相は今年2月20日、中印国境東部区間の係争地域を訪問しましたが、翌日、中国外務省は中国駐在インド大使を呼び、抗議しました。
経済関係
国境紛争があるものの、両国は常に経済関係の強化に力を入れています。統計によりますと、両国間の貿易額は年平均29%増加しています。特に、投資関係も強く発展しています。昨年の習近平国家主席のインド訪問の際に、中国は、工業団地の建設などのために今後5年でインドに対し200億ドルを投資すると発表しました。
一方、インドは、国内鉄道の近代化に向け、今後5年で1370億ドルを投じる計画。鉄道網建設には中国や日本、フランスなどが受注に向け名乗りを上げています。インドと中国の人口や、経済の規模から見れば、両国が経済関係の強化を重視することはわかりやすいといえます。しかし、これまで、この関係は両国の潜在力と願望にまだ相応しくないと評されています。
協力の強化
今回の訪問で、モディ首相は、インド経済の再生を最優先課題に掲げ、最大の貿易相手国の中国を重視していて、習主席との会談で、インドへの投資拡大や、インフラ整備への協力を求め ることにしています。
また、インド側は中国がインド洋への進出を加速させるのではないかと警戒感を抱いており、モディ首相はこうした問題も提起するとみら れます。一方、習主席は、陸上と海上で新たなシルクロード経済圏を築く構想を提唱していて、古代のシルクロードの起点だった西安での会談で、構想へのインド側の協力を呼びかけるとみられます。
アナリストらによりますと、中国の首脳が外国からの訪問客を地方で出迎えるのは異例ですが、西安がある陝西省は習主席の地元に当たり、去年9月にモディ首相のふるさとでもてなしを受けたことへの返礼として、西安市内の名所も案内するなど、首脳どうしの親密ぶりを演出します。そのことからみれば、今回のモディ首相の訪問がインド・中国間の信頼醸成に大きく貢献するのは間違いないだろうとしています。