ロシアとEUとの関係が新たな緊張に直面している(写真:RIA)
ロシアと欧州諸国がウクライナ問題解決に向けた有効的な方策を探っている間に、EC=欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長は、EU軍の創設を呼びかけました。このことにより、EU欧州連合諸国の間にも対立発生すると同時に、ロシアとEUとの関係が悪化しています。
ユンケル委員長は、ドイツの新聞「ウェルト・アム・ソンター」の取材に対し、EU軍創設が「共通の安全保障・防衛政策を確立し、世界でEUが責任を果たす助けになる。加盟国や周辺国への脅威に対し、信頼感ある対応ができる」と述べました。特にロシアへの警告になると指摘し「EUの価値を防衛することを真剣に考えていることを示す」のを目的としました。
EUのビジョンと展望である共通防衛
ユンケル委員長によりますと、EU加盟国は冷戦終結後、ロシアの脅威がなくなったとして兵力や防衛予算を削減しました。加盟国を防衛するNATO北大西洋条約機構ではアメリカが財政の約7割を担うなど、アメリカに頼り切りになっています。2011年のリビア攻撃の際には欧州諸国に情報収集、偵察、監視能力や大規模輸送能力が欠如していることが露呈し、問題となりました。
EUでは、クリミアを編入したロシアに対して警戒感が高まり、防衛見直しの必要性も論議されています。EU加盟国でNATOに加盟していないスウェーデンやフィンランド周辺でも、ロシア軍の活動が目立っています。スウェーデン領海でロシア船籍とみられる潜水艦が出没し、ロシア軍機が領空に迫るなどの事態が起きています。
欧州にはNATOの軍がありますが、EUには常設の軍は事実上なく、6カ国がNATOに加盟していません。ウクライナ問題を機にロシアに対して脅威論が高まっており、今年6月のEU首脳会議では防衛政策の見直しを協議する予定で、軍創設が長期的課題になるようです。
対立発生
ユンケル委員長の提唱に対し、ドイツのフォンデアライエン国防相は「EU軍を持つことは私たちの未来だ」と支持を表明しました。一方、この提唱に反対する声も表明されました。イギリスメディアによりますと、イギリス政府は反対を表明しました。また、ブリュッセルを訪問中のパワーアメリカ国連大使は講演で欧州の防衛力強化、予算増加を求める一方、EU軍創設について「問題は形ではない。どう厳しい財政の中で防衛能力を維持するかだ」と慎重な考えを示しました。
ロシアの下院国防委員会のフランツ・クリンセビッチ委員は「EU軍が創設されれば、それは挑発的な動きになる可能性がある」と述べました。
ロシアと関連各国がウクライナ問題の解決策をいまだ見つけられない背景の中で、EUによるロシアへの制裁増加や、EU軍創設の提唱などはEUとロシアとの関係に悪影響をもたらすことでしょう。