中国の全国人民代表大会(全人代)で5日に示された2017年の成長率目標は「6.5%前後」にとどまり、中国経済の成長減速が容認される形となりました。昨年の成長率の実績は6・7%で、1991年以降、最も低かったですが、今年の目標値はさらにそれを下回わりました。
中国の全国人民代表大会
合理的な目標
全人代で、李克強首相は今年の施政方針をまとめた政府活動報告の演説で、「脱グローバリズムや保護主義の傾向が強まり、不安定・不確定な要素が増している」と述べ、保護主義へと転換しようとしている国をけん制しながらも、中国経済への大きな影響を認めました。そして、昨年と同様、2017年の輸出総額の目標を出していません。
李首相はまた、重工業地帯の景気悪化や、都市部の不動産価格急落などの国内問題を指摘しました。こうした背景の中で、中国政府は2017年の成長率を6.5%前後にするという目標は合理的であると評されています。
重点的な課題
成長目標の引き下げは3年連続です。中国は中・低度の成長を「新常態」(新しい普通の状態)と呼んで国民に理解を促し、高成長時代から安定成長への軟着陸を目指していますが、政府は成長率の急落を恐れて、減税や金融緩和で景気にてこ入れし、インフレの恐れも指摘されます。中国は成長至上主義から完全に脱皮し、経済の質の向上に向けた構造改革に本気で取り組むべきです。
李氏は、克服すべき課題として、「経済・金融分野のリスク要因が無視できない」と語っています。その上で、今年取り組むべき重点課題として(1)過剰生産の解消や国有企業債務の削減(2)行政の簡素化と市場優先(3)国民消費で内需拡大(4)技術革新(5)環境対策-などを列挙しました。
中国は鉄鋼などの過剰設備の廃棄を進め、輸出と投資が中心の高成長から、消費など内需主導の安定成長への着実な転換を目指していますが、世界2位となった中国経済が、急減速することなく、構造改革を進められることがと期待されています。