イランとアメリカや、イギリス、フランス、ロシア、中国、ドイツとの核合意に関して、18日、IAEA=国際原子力機関は報告を出し、「イランは核合意における取り決めを遵守している」と明らかにしました。これは、イランの善意に対する国際社会の評価を示すものとみらています。しかし、イランにとって、この合意の履行は多くの試練に直面すると指摘されています。
イランのある核施設(写真:
PressTV)
2015年7月14日、イランとアメリカなど6カ国による、核問題に関する「最終合意」が発表され、イランのウラン濃縮活動の制限や、それに伴って過剰となる濃縮設備の削減、イランに対する査察のありかたおよび制裁措置の軽減・撤廃などが合意されました。
合意履行の利益
合意に従って、イランは、ウラン濃縮などの核開発活動を縮小・制限させています。具体的には、遠心分離器の縮小や、ウラン濃縮度の制限、濃縮ウラン保有量の制限などを進めています。核合意の履行のためのイランの努力はイランに対する警戒感が高かったイスラエルにも評価されています。
イスラエル側は「近い将来において、イスラエルを脅かす要素がなくなっている」と楽観視しています。イランの核合意履行は同国に大きな利益をもたらしています。国際社会の対イラン制裁解除が伝わると、停滞してきた国民経済の復興を期待するイラン国民の声が高まりました。
また、イランは、制裁解除前に凍結された1000億ドル相当の資金にアプローチできるようになりました。一方、制裁解除前からドイツなど欧米諸国の指導者や企業代表のテヘラン詣でが始まりました。ロウハーニー大統領も欧州諸国を訪問するなど外交を活発化しています。イランは核合意後、外貨獲得源の原油生産は今年4月段階で日量350万バレルを越え、制裁前の規模に近づいてきました。
特に、イランの輸出額は20%増となっており、今年9月までの外国投資額は50億ドルを超えました。さらに、イランは国際社会における孤立状態から脱出し、欧州諸国や、トルコとの関係を改善し、ロシア、中国、インドなどとの関係を強化しています。
試練
しかし、この核合意は多くの試練に直面しています。アメリカ上院は先ごろ、12月末で期限を迎えるイラン制裁法を10年間延長する法案を賛成多数で可決しました。トランプ次期大統領はイラン核合意に反対しており、上下院で多数派の共和党も核合意破棄を求めます。
これに対し、イランのロウハニ大統領は、「イラン制裁法の延長は、核合意に違反するだけでなく、アメリカ政府の信頼失墜につながる」と指摘したうえで、「相手側が合意を守るかぎり、イランも合意を守り続ける」と述べました。そのほか、人権や、テロ対策などの問題に関するイランとアメリカとの不一致は核合意の履行にマイナス影響を与えると懸念されています。
こうした中、アナリストらは、「イランの積極的な姿勢は核合意の成功と地域の平和、安定に貢献しているが、今後の道のりは容易ではない」との見方を示しています。