朝鮮民主主義人民共和国で36年ぶりに開かれていた朝鮮労働党大会は9日、第1書記を務めてきたキム・ジョンウン氏を、新たに設けたポスト「党委員長」に選出して閉会しました。 党大会が閉会した翌日に、大勢の市民が参加した祝賀パレードは「キム・ジョンウン時代」の本格的な幕開けを内外にアピールする形となりました。
優先課題
今回の朝鮮労働党大会で選出された新しい指導部のメンバーの顔ぶれを発表しました。幹部の多くが引き続き名を連ねており、大幅な世代交代が見送られ、安定した政権運営が優先されたものとみられます。
また、大会で行われた党規約の改正で、核戦力開発と経済建設を同時に進める「並進路線」が盛り込まれ、委員長が「党を代表し、全党を指導する党の最高指導者」と位置付けられたことも判明しました。さらに、2016年から2020年期の経済発展5カ年計画では国民の生活水準の改善や社会主義の建設を目指す政策の完備が進められるとしています。
そして、南北朝鮮の関係に関して、キム氏は国家統一を最重要な任務に位置づけるとともに、韓国との関係改善に向けて、相互尊重を図った上で、対話や交渉を進める必要があると訴えました。
国際世論の評価
朝鮮労働党第7回大会で打ち出された路線は韓国から前向きな反応を受けていません。韓国国防省は9日の発表した声明で、「韓国と国際社会は朝鮮の核戦力開発を受け入れない。朝鮮が核開発を止めない限り、強硬な制裁を続ける」と強調しました。また、キム・ジョンウン氏が提唱した軍事対話を拒否するとともに、朝鮮側に対し、挑発的な行動を中止し、核放棄に向かうよう呼びかけました。
今回の大会は日本や、アメリカ、フランス、中国などの注目も集めています。日本の菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、「現時点で、この党大会の全体の詳細が必ずしも明らかになっていない。引き続き、韓国や、アメリカをはじめとする関連諸国としっかり連携を取りながら情報収集や分析に努めていきたい」と述べました。
一方、岸田外務大臣は「朝鮮は、国連安全保障理事会の決議や、6者協議の共同声明、日朝平壌宣言を順守することなく、核・ミサイル開発を継続する姿勢を示しており、日本についても一方的な主張を行ったことは受け入れられない。引き続き、対話と圧力、行動対行動の原則に基づいて、諸懸案を包括的に解決していくことを求めていきたい」と語りました。
他方、フランスのアナリストらは「この大会を通じて、キム氏は体制固めをさらに進めた形だ」と分析しています。新たに設けた委員長ポストへの就任は、党中心の国家運営を行い「建国の父」とされる故金日成(キムイルソン)主席の姿と自らを重ね、権威付けを図ったものとみられています。