アメリカとキューバは、1961年に中断した外交関係の完全回復に向けて積極的な姿勢を示しています。アメリカのオバマ大統領とキューバのラウル・カスト ロ国家評議会議長は、2013年12月に南アフリカで行われたマンデラ元大統領の追悼式の際、歴史的な握手を交わしたのに続き、今年の4月11日、中米パ ナマで開かれた米州首脳会議の会場で非公式に会談しました。
首脳会談は1961年の国交断絶以来初めてのことです。半世紀以上にわたり敵対してきた両国の関係は、歴史的転換点を迎えています。
歴史的な握手(写真:ロイター)
歴史的な会談
パナマでの首脳会談の前、アメリカとキューバはそろって、相手の相違点を尊重したうえで、両国関係に残されている全ての問題をについて善意で協議する用意があるとのメッセージを発信しました。
パナマに行く前に、キューバのラウル・カストロ議長はオバマ大統領との電話会談で、人権と報道の自由を初め、隔たりが大きい問題についても話し合う用意があると確認しました。一方、オバマ大統領は、両国関係の新しいページが切り開かれたと明らかにしました。
両首脳は、両国にはまだ、深くて大きな違いがあり、国交正常化には時間がかなりかかることを認めましたが、外交回復の重要性を確認しました。
オバマ氏は米州首脳会議で演説し、キューバとの国交回復について「われわれは過去にとらわれてはならない。未来志向でいく」と意欲を示しました。
敵であったアメリカとキューバの関係が改善されたことは国際社会から高く評価されています。国連のパン・ギムン事務総長は、キューバのカストロ議長が21年ぶりに米州首脳会議に出席したことはこの地域の長年の希望であると強調しました。
ベネズエラのマドゥロ大統領は、カストロ議長の出席はラテンアメリカとカリブ諸国の最大成果であるとの考えを示しました。コロンビアのサントス大統領も、アメリカとキューバの関係回復は、米州の長年のけがを和らげていると評価しました。
全面的外交関係の回復には時間が必要
アメリカは、キューバとの関係回復を決めてからキューバに対する制裁を解除しています。例えば、アメリカ人によるキューバへの渡航規制の緩和や、アメリカ人によるキューバでのクレジットカード使用禁止の解除などです。
また、両国の直接電話回復に関する合意書が今年の2月に締結されました。それに続く3月に、アメリカ財務相はキューバとの取引関係を持っている60の会社と個人に適用された制裁も解除しました。アメリカ企業はキューバの民間部門に投資できるようになりました。
しかし、アメリカとキューバの国交正常化を妨げているのは、アメリカがキューバをテロ支援国家として指定している問題です。オバマ大統領は、キューバのテロ支援国家指定解除を目指すアメリカ国務省の提案に同意しましたが、決定権はアメリカ国会が持っています。
現在、アメリカでは、アメリカとキューバの外交関係が完全に回復されれば、アメリカが政治的にも経済的にも大きな利益を受けるとの声があがっています。また、アメリカがこの50年間とっていた対キューバ敵対政策は実際問題として効果が余りありません。
そのため、アメリカ国会はキューバのテロ支援国家指定を解除する可能性があると期待されています。それにしても、半世紀以上にわたって敵対してきた両国関係の完全回復には時間がかかりそうです。