ロシア兵ら2人が死亡したクリミア半島での衝突を巡り、ロシアとウクライナ双方とも戦闘態勢の強化を鮮明にしています。2014年にロシアがクリミア半島を併合して以降、最悪の事態となっており、両国関係は再び一触即発の危機にあります。
ロシアのプーチン大統領(写真:Sputnik)
非難の応酬
(FSB)ロシア連邦保安局が10日、ウクライナ南部クリミアで、ウクライナによる「テロを阻止した」と発表しました。FSBによりますと、今月6日から8日にかけ、クリミアに入ろうとしたウクライナ軍の特殊部隊員らと複数回、銃撃戦となり、ロシア側の2人が死亡したということです。また、その際、爆発物なども押収し、未然に「テロを阻止した」と発表しました。
ロシアのプーチン大統領は、「ウクライナ国内の危機から国民の目をそらすために行われている」とウクライナ側を非難しています。また、プーチン氏はウクライナとの交渉を続ける意味がないとして、アメリカや欧州各国に対して、ウクライナに行動を改めるよう圧力をかけるべきだと呼びかけました。
一方、ウクライナ当局は、ロシア側の話は「虚偽の情報だ」と反論し、ロシアの主張を全面否定しています。ウクライナのポロシェンコ大統領は、ロシアはこの事件を利用してウクライナを軍事威嚇しようとしていると非難しました。
緊張エスカレート
ロシアのプーチン大統領は、軍や関係閣僚にクリミアの安全対策を強化するよう指示を出したのに対し、ウクライナのポロシェンコ大統領もクリミアとの境界付近などで即応態勢を整えるよう指示し、緊張が高まっています。
こうしたなか、ロシア国防省は11日からクリミア沖の黒海で、軍の兵士およそ400人と10隻以上の船、それにヘリコプターが参加してテロ対策の訓練を始めたことを明らかにしました。訓練ではクリミアの軍港を拠点とする「黒海艦隊」への破壊活動を想定し、機雷の捜索や撤去の訓練が行われているということです。
また、ロシア国防省は12日、クリミア半島に最新鋭のロシア製対空ミサイルシステムS400を配備したと発表しました。
そして、ロシアのメドベージェフ首相は12日、ウクライナとの国交断交の可能性について「望んではいないが、関係を回復するほかの手段がない場合、プーチン大統領がそうした手段を取る可能性もある」と述べました。
こうした状況を受け、国連の安全保障理事会は11日、ウクライナの要請に基づいて非公開の緊急会合を開きました。会合のあと、記者会見したウクライナのイェルチェンコ国連大使は、ロシアとウクライナとの現在の状況を、2008年に発生したロシアとグルジアの武力紛争につながった状況と比べ、ウクライナに対するロシアの武力行使の可能性を示唆しました。
しかし、ロシアとウクライナの間に武力紛争は起きにくいとの意見が政治専門家の多くから出されています。それにしても、ロシアとウクライナの緊張が長引く可能性は高く、ロシアの欧米諸国との関係改善に悪影響を与えることでしょう。