ハザン省にある日本人が作ったコーヒー店



山崎  あけましておめでとうございます。山崎千佳子です。今年に入って初めてのハノイ便りです。今年もどうぞよろしくお願いします。

ソン よろしくお願いします。ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナム最北端のハザン省にあるコーヒー店についてお伝えします。

山崎 何か特別なお店なんですか?

ソン 日本人が作ったコーヒーショップなんです。

山崎 ええ?日本人経営のお店なんですか?

ソン 経営ではなくて初期投資をして、その後は地元の人に任せているんです。

山崎 初めて聞いた話です。ベトナム在住の方ですか?


ハザン省にある日本人が作ったコーヒー店 - ảnh 1
(写真:lavieauvietnam.com)

 
ソン   いえ、東京都に住む小倉 靖さん、61歳です。2015年にそれまで勤めていた会社を定年退職されました。

山崎 日本に住んでいるんですか?ベトナムに住んでいても、ハザン省を知らない日本人が結構いると思うんですけど、なぜそこにお店を作ったんでしょう?

ソン それについては小倉 靖さんが話してくれているんですが、まずハザン省について少し説明します。

山崎 初めにソンさんがベトナム最北端と言っていましたね。中国と接しているんですね。

ソン そうですね。中国の雲南省と国境を接しています。ハノイからはおよそ320キロです。車で行くと5時間くらいかかります。

山崎 前までは、もっとかかったんですよね?高速道路ですか?道路が整備されてとても便利になったと前にアンさんから聞いたことがあります。

ソン そうなんです。車やバイクでも行けます。でも、ハザン省の省都のハザン市から省内の各県に行くには、切り立った崖沿いの道を行かなくてはならないんです。

山崎 ええ?切り立った崖沿いですか?映画みたいですね。

ソン そうですね(笑)。これは「幸福の道」と言われる国道4C号線なんですが、道幅は狭くて、曲がりくねっています。切り立った崖の反対は、深い谷です。

山崎 それが「幸福の道」というのは、何なんでしょう?「勇者の道」とかならわかりますけど(笑)。

ソン この峠道で行けば行くほど、天空に向かっている感じがするんだそうです。

山崎 なるほど。怖い思いと引き換えに、高いところからすばらしい景色を眺められるということですね。ハザン省は自然豊かなところなんですよね。ソンさんは、行ったことはありますか?

ソン ないんですが、ハザン省には多くの見所があります。中でも、ドンバン岩石高原は有名です。

山崎 ユネスコから世界ジオパーク、地質公園として認定されたことろですよね。

ソン はい。2010年に認定されました。その他、ベトナム最北端を示すベトナムの国旗が掲げられた「ルンクーの旗の塔」もありますし、少数民族の生活文化を残すドンバン旧市街も趣があります。

山崎 そして、ソバ畑一面のソバの花も有名ですよね。

ソン そうです。秋にはソバの花、春には桃の花が咲き誇ります。

山崎 ドンバン旧市街は、少数民族文化が残るということですが。

ソン はい。ハザン省には少数民族のタイー族、ホア族、モン族、ロロ族など多くの少数民族が住んでいるんです。

山崎 興味深いですね。これだけいろいろな要素があると、ハザン省に引き付けられるのもわかりますね。

ソン はい。ここで、小倉 靖さんの話に戻りますが、小倉 靖さんはこの20年間、1年に1回、ベトナムを訪れて、様々な地方に行ったそうです。中でも、自然の美しさと人々の親しみやすさでハザン省にひかれたと言います。

ハザン省にある日本人が作ったコーヒー店 - ảnh 2
(写真:lavieauvietnam.com)


山崎 小倉 靖さんに話をうかがっていますが、ベトナム語で話してくださっていますので、それを改めて日本語にしています。

(テープ)

「ベトナムを初めて訪れたのは1995年、ホーチミン市への旅行です。北部に初めて来たのは1999年でした。東南アジアへの旅行が大好きだったんですが、20年前は日本人はベトナムについて何も知らなかったので、ベトナムを知りたいと思って来ました。初めて来た時に、食べ物がいろいろあって、人が親切、活気のあるところが気に入りました。」

山崎 2002年からは毎年ハザン省を訪れているという小倉 靖さんですが、ハザン省のルンクー地区にコーヒーショップを作ることを決めます。2013年のことです。小倉 靖さんの話です。こちらもベトナム語で話して頂いているので、それを日本語にしています。

(テープ)

「ハザン省には多くの少数民族が住んでいますが、ロロチャイ族の人を支援することにしたのは、この民族の親しみやすさです。ザオ族やモン族など他の少数民族と比べると、ロロチャイ族は人口が少なく、この民族の文化もあまり知られていません。ロロチャイ族の集落を魅力的な観光地にして、その伝統文化を保存したいのです。」


ハザン省にある日本人が作ったコーヒー店 - ảnh 3
(写真:vnexpress)


山崎 小倉 靖さんはこの慈善活動について、地元の人に生計を立てるノウハウを知らせることが1番だと考えているそうです。

ソン そして、ルンクー地区に住むロロチャイ族の住民に、コーヒー店の経営を勧めました。2億ベトナムドン、日本円でおよそ100万円を投資して、木製の椅子やテーブル、コーヒーカップなど必要なものを揃えたり、トイレを作るなどして、コーヒー店を開きました。

山崎 そういったハード面だけでの支援ではないんですよね。経営者夫妻に、簡単な英語やコーヒーの入れ方、お茶、ジュースの作り方なども教えたんだそうです。

ソン そして2015年、ベトナム語で「極東」という名前のコーヒーショップが開店しました。

山崎 北極南極の「極」に「東」で極東、ですね。

ソン はい。地元のロロチャイ族の土壁の家が店舗になっています。カウンターと5つの小さいテーブルがあって、温かい雰囲気のコーヒーショップです。常連客の一人(Hoang Thi Pao)はこのように話しています。

(テープ)

「小倉 靖さんは、200年前に建てられたロロチャイ族の集落で一番古い土壁の家をコーヒー店にしました。古い家ですが、小倉 靖さんのアドバイスで、広くて、今風のコーヒー店になりました。店のメニューには、コーヒーの他に抹茶オレなどもあります。ハザン省で、抹茶の飲み物があるのはこの店しかありません。若い人たちや観光客の好みに合うと思います。」

ソン小倉 靖さんは他にも、ロロチャイ族の地元住民が観光としてのホームステイを受け入れるための家の建築にも投資しています。床面積540平方メートルの土壁の家作りです。

山崎 投資というと、そのお金はいつか返してもらうんでしょうか?

ソン いえ。返済の必要はないそうです。寄付ですね。

山崎 ええ?寄付ですか?なかなかできないことですよね。ちなみに、小倉 靖さんが投資したコーヒーショップは、ハザン省のどの辺にあるんですか?

ソン ルンクーの旗の塔のある山のふもとです。ここを訪れる観光客にとっても、ちょうどいい休憩所になっていると思いますし、地元の経済が活性化していく一歩になると思います。

山崎 本当にそうですね。小倉 靖さんは会社を退職してからは、1か月に1度、ハザン省を訪れているそうです。こういういい話がどんどん増えていくと、すばらしいなと思いました。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ベトナム最北端のハザン省にある日本人が作ったコーヒー店についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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