(VOVWORLD) - 先週、アメリカのトランプ大統領とEU=欧州連合のユンケル欧州委員長は関税など貿易障壁の撤廃を目指す通商交渉を開始し、アメリカが検討中の自動車とその部品の輸入制限の発動を控えることで合意しました。双方間の貿易関係の緊張が続いている中、これは望ましい兆しと見られています。
米欧は工業製品の「関税ゼロ」を目指すものの、自動車分野は例外とする方針です。今後の米欧の通商交渉では高官級の作業部会を設置し、自動車を除く工業製品について「関税ゼロ・非関税障壁ゼロ・補助金ゼロ」の具体策を検討します。
化学品や、医薬品なども検討対象で、実現すれば、包括的な自由貿易協定に発展する可能性があります。会談で、両首脳は、世界貿易機関の改革を目指すことなどで合意しました。
貿易戦争の背景にある問題の解決を図る狙いで、アメリカ政界は「素晴らしいニュースだ」と評価しています。ただ、フランスを中心にEU内で期待が大きかったアメリカによる鉄鋼・アルミ追加関税の撤回は今回の合意に盛り込まれていません。
また、EUは中国の報復関税で打撃を受けるアメリカ産大豆や、トランプ氏が求めていたLNG=液化天然ガスの輸入拡大を容認しています。まずは、トランプ氏に譲歩することで、自動車の輸入制限発動を棚上げし、「貿易戦争」回避を優先させた格好です。
OECD=経済協力開発機構によりますと、アメリカが共同歩調を求めるEUも関税引き上げに踏み切り、アメリカ・中国・欧州の貿易コストが10%高まった場合、世界の貿易量は6%、世界のGDPは1.4%押し下げられます。主要国が同時成長を遂げた世界経済は、腰折れの危機に立たされることになります。
こうした中、今回の欧米首脳会談の結果は積極的な兆しと見られています。「貿易戦争」の回避を訴えてきたドイツのアルトマイヤー経済相は「多くの労働者が救われる」と喜びをあらわにしました。ただ、アナリストらは、「アメリカとの通商交渉を巡ってはEU加盟国から反発が出る恐れもあり、交渉が順調に進展する保証はない」と指摘しています。