軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進

(VOVWORLD) - 今、重要な時期を迎えています。IUU対策の強化月間です。そしてまもなく、ECの検査団がやってきます。ベトナムは国を挙げて取り組んでいます。海軍、海上警察、国境警備隊、漁業を監視する部隊。みんなが力を合わせて、厳しい対策を進めています。
MC:IUU。違法・無報告・無規制漁業のことです。この問題への対策は、やらなければならないというだけのものではありません。ベトナムの水産業の未来、そして国の信用がかかった、重要な課題なのです。
軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 1ラムドン省ムイネーの漁村に停泊する漁船。

ベトナムはこれまで、EC、ヨーロッパの欧州委員会から受けた勧告に、真剣に向き合ってきました。「イエローカード」という警告を早く解除してもらうため、様々な対策を続けてきました。

そして今、重要な時期を迎えています。IUU対策の強化月間です。そしてまもなく、ECの検査団がやってきます。ベトナムは国を挙げて取り組んでいます。海軍、海上警察、国境警備隊、漁業を監視する部隊。みんなが力を合わせて、厳しい対策を進めています。

今日の番組では、こうした取り組みをご紹介します。何ヶ月も続く海上パトロール。漁港での厳しいチェック。そして漁民への丁寧な説明。こうした活動すべてが、一つの目標に向かっています。ECの「イエローカード」を解除してもらうこと。そしてベトナムの水産業を、持続可能なものにしていくことです。

ルポルタージュ1:意識の変化

(国境警備隊の広報スピーカーの音声)

中部クアンガイ省のサフイン国境警備隊。ここでは「IUU対策の広報スピーカー」が大きな効果を上げています。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 2クアンガイ省ティンホア漁港に停泊中の漁船

スピーカーから流れるのは、IUU対策に関する法律です。ドゥックフォ村のヴォー・ティ・ホン・ハイさんは、その内容をしっかり覚えています。港での仕事を終えて家に帰ると、夫に伝えるのです。おかげでハイさん一家の漁船は、いつもルールをきちんと守っています。

ハイさん:「毎日聞いていますから、家に帰ると夫に教えるんです。まず、よその国の海で勝手に漁をしてはダメだということ。それから、港を出る時も戻る時も、必ず書類を出さなきゃいけないこと。そして、海に出ている間はずっと連絡を取って、船がどこにいるか報告し続けなければいけないこと。こういうことを伝えています。」

こうした広報活動は、サフインだけではありません。全国の国境警備隊が、パトロールの際にビラを配り、漁民に直接説明しています。

伝えているのは、ルールを守ることの大切さです。航海日誌をつけない、決められた海域を越える。こうした違反は、自分が困るだけではありません。水産業全体、そして国の信用も傷つけるのだと。

以前は、航海日誌をつけたり、監視装置をつけたりすることを、面倒だと感じる漁民もいました。でも今は違います。なぜそれが必要なのか、自分たちの責任は何なのか、よく分かるようになってきました。

漁民の声1(男性):「今はね、海に出るのにいろいろ必要なんですよ。船の検査証明書、操業の許可証、それから航路の監視装置、船がどこにいるか分かる位置情報システム、遠くまで行く時の通信設備。全部ちゃんと揃えないといけない。昔とは違います。今の漁師には責任があるんです。設備も知識も、きちんと備えないとダメなんです。」

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 3サキー国境検問所にて、入域手続きを行う漁民。

漁民の声2(男性):「私たちは海で生活していますからね。でも国が決めたルールは、しっかり守ります。魚を獲る時は、ちゃんと決められた海域でやります。境界線を越えるようなことは絶対しません。国が私たちのために色々整えてくれているんですから、私たちも頑張って沖に出て、ベトナムの海を守る。そういう気持ちでやっています。」

漁民の声3(男性):「うちの船はね、出る時は必ず国境警備隊に報告しています。今は監視システムもしっかりしていますから、変なことをしようなんて誰も思いません。みんなちゃんと守っていますよ。」

漁民の声4(男性):「私は毎回、航海日誌をつけています。港に戻ったら、すぐ国境警備隊に提出します。そうすると水揚げもスムーズなんです。監視装置も24時間つけっぱなしです。」

ブイ・ヴァン・アンさん、60歳。漁師歴36年以上のベテランです。中部ザライ省クイニョンドン地区のリーホア集落で暮らしています。

そのアンさんの船が今、海に出られません。出港するための条件を満たしていないからです。船の設備が基準に達していないのです。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 4国境警備隊員に説得され、解体待ちのため帰港する
ブイ・ヴァン・アン氏(左から2人目)。

ザライ省では、同じように出港できない船が424隻もあります。アンさんは、そのうちの一人です。

アンさんは、よく理解しています。もし無理に出港したら、どうなるか。罰金です。そして操業停止です。でも問題はそれだけじゃありません。今、地域全体でイエローカード」を解除してもらおうと頑張っている。その努力に、水を差すことになってしまうんです。だからアンさんは、指示に従っているのです。

アンさん: 「うちの船のエンジンがね、検査に通らなかったんですよ。これじゃあ、漁に行けません。操業を止めるしかない。言われた通りにしています。船は岸に戻して、停めてあるだけです。」

今年に入って、海沿いの国境警備隊が動きを強めています。漁船への立ち入り検査を増やし、管理を厳しくしています。

国境警備隊は、幹部を沿岸の集落に配置しました。各地にあるIUU対策チームに加わって、活動しています。地元の行政府と一緒に、漁師さんたちにルールを守ってもらうよう、声をかけて回っています。

そして、港でのチェックも厳しくなりました。特に問題なのが「3ない」船です。船の登録がない、検査を受けていない、操業の許可証もない。こういう船には、絶対に出港させない。そう決めています。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 5ザライ省国境警備隊の隊員が、漁民に対し、操業条件を満たさない場合は漁に出ないよう誓約を求めている様子。

ザライ省の国境警備隊、グエン・クオック・ヒエップ中佐の話です。

ヒエップ中佐: 「私たちは、住民の皆さん、特に船の持ち主や船長さんに、誓約書にサインしてもらっています。『ルールを守ります』という約束ですね。条件を満たしていない船は、出港させません。これは徹底しています。おかげで最近、私たちが担当している海域では、違反は一件も起きていないんです。」

国境警備部隊などの断固とした取り組み。それに加えて、漁民自身も自主的に、互いに規定遵守を監視し合っています。ザライ省デーギー村の漁民、フイン・ミン・キエムさんは、地域の他の漁民とともに海上の船団連帯グループに参加しています。互いに漁業の持続可能な発展を守るよう注意し合っているのです。

キエムさん: 「境界を越えて漁をしない、操業は厳格に行う、違法操業はしない。外国で獲った魚は輸出できません。大変な信用失墜になります。私自身もここの住民もIUU対策規定を非常によく守っており、外国での漁など決してしません。」

今、多くの漁場で漁民は自主的にVMS、船舶監視システムを24時間稼働させ、海域境界を常に確認しています。新しい規定を把握して、国境警備隊、海上警察、漁業監視隊の指導を厳格に守っています。多くの漁民は、海洋資源の保護における自分たちの責任を、より明確に理解していると話します。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 6ザライ省国境警備隊が実施する、
IUU対策の啓発強化期間の様子。

適切な海域で、許可された量を漁獲する。それはIUU違反を避けるだけでなく、将来の世代のために漁場を守ることにもつながります。さらに、漁民は規定を守ることで得られる実際的なメリットも実感しています。沖合に出る際の安全性の向上、遭難時の支援の受けやすさ、そして透明な原産地追跡を求める企業への水揚げの容易さです。

意識から行動へ。漁民の前向きな変化は今、ECの「イエローカード」解除という共通の目標達成、そして責任ある近代的で持続可能な漁業の構築に向けた、重要な基盤となっています。

(音楽)

導入: 最近の漁民のIUU対策に関する意識の明確な変化。その背景には、海軍、海上警察、国境警備隊、漁業監視隊といった関連部隊の多大な貢献があります。この取り組みについてさらに詳しく知るため、ベトナム海上警察副参謀長、ダオ・バー・ヴィエット大佐にお話を伺いました。

インタビュー

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 7ダオ・バー・ヴィエット大佐

記者: IUU問題を解決するには、漁民の意識を変えることが大切です。海上警察は、漁民の意識を高めるために、どんな活動をしていらっしゃいますか。

ヴィエット大佐: 海上でのIUU対策の中心として、私たちは首相や国防省、海上警察司令部の指示を厳格に実行しています。軍の各部隊と協力体制を作っています。同時に、地方行政府や報道機関と連携して、漁民への法律の教育を強化しています。どこで操業していいのか、IUUとは何か、違反したらどんな罰があるのか。こうしたことを伝えて、漁民の意識を高めているのです。

大切なのは、中央だけが頑張ればいいというものではありません。地方や関係部門だけでもありません。何より、漁民自身が理解することです。これは自分たちの生き残りがかかった問題なのだと。ECの検査の時だけ取り繕えばいいというものではないのだと。イエローカードを解除することこそが、本当の意味で持続可能な漁業への第一歩なのだということを。

記者: ベトナムはイエローカード解除に向けて努力しています。ECの検査も近づいています。海上警察は最近、どのように取り組んでこられましたか。

ヴィエット大佐: 今回のECの検査は、イエローカード解除を決める絶好のチャンスです。ベトナムは様々な努力をしてきました。漁業の法律を整備し、外国の海での違法操業を防ぐ対策を実施し、水揚げされた魚の原産地を追跡できるようにし、違反の取り締まりを強化し、広報活動を進め、各部隊の連携を強めてきました。

海上警察は、国全体の取り組みの中心として、責任を果たしています。私たちは包括的な施策を進めてきました。

第一に、広報と法律教育の強化です。漁民に、違法操業の害と、ルールを守る利益、そして違反した時の罰則について、よく理解してもらっています。

第二に、関係部隊、地方行政府、報道機関との連携強化です。岸から沖まで、漁船を管理・追跡・監視する一貫したシステムを作り、海で操業するすべての漁船を確実に監視できるようにしています。

第三に、現場でのパトロールです。漁船の操業を厳しく管理し、監視システムとの接続が切れた船を追跡し、違反船を厳しく取り締まり、隣の国の海への違法な侵入を防いでいます。

第四に、地方行政府との連携による厳格な管理です。出入港する船、特に「3ない」船や長期間戻らない船を厳しく管理し、違法操業に関わるあらゆる行為を徹底的に取り締まって、高い抑止効果を上げています。

第五に、軍の各部隊や地方の機関と協力して、IUU対策の集中期間を設けています。そして第六に、海上警察全体でIUU対策を推進するキャンペーンを始めました。

記者: 海上警察は、漁船を追跡してIUUを防ぐために、どんな技術を使っていますか。

ヴィエット大佐: 今、ベトナム海上警察は最新の監視技術とデータ分析システムを導入しています。海上警察の船、指揮センター、各部隊に装備されていて、違反行為をすぐに見つけて対応できます。

指揮センターでは、様々なデータを集めて分析しています。定期的にチェックして、違反の疑いがある船、リスクが高い船を見つけ出します。そして海上パトロール部隊に情報を送って、すぐに検査・確認・対応できるようにしています。

長距離レーダーは、昼でも夜でも、悪天候でも目標を見つけられます。赤外線カメラは海上の漁船の動きを記録します。船舶自動識別装置、いわゆるAISシステムは周りの船を識別・追跡します。こうした装備で、パトロール部隊は周囲の漁船の状況をすぐに把握して、違反があればその場で対処できるのです。

今後は、電子偵察システムをさらにアップグレードします。ビッグデータの分析システムを完成させ、衛星やドローン、AIなどの技術を組み合わせて、違反行為の監視能力を高めていきます。ベトナムの海を守り、治安を維持し、漁業を持続可能なものにしていくために。

記者: ありがとうございました。

(音楽)

ルポルタージュ2IUUイエローカード解除への断固とした取り組み、持続可能な漁業の発展へ

(現場音:港での汽笛、魚の計量音、職員の書類検査の声)

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 8ソクチャン省国境警備隊幹部が、
IUU対策の遵守を漁民に呼びかける様子。

全国の主要な漁港で今、変化が起きています。クイニョン、カマウ、フーイエン、キエンザン。どこでも厳しい管理が行われているのです。

船が出る時も入る時も、チェックします。航海日誌を確認します。監視装置がついているか、操業の許可証はあるか、確認します。水揚げされた魚はどこで獲れたのか。それを管理し、追跡できるようにして、ラベルを貼ります。水揚げの量も確認します。こうした作業が、今、スムーズに進んでいるのです。

全国で見ると、大きな進展がありました。漁船の登録です。ベトナムには約8万隻の漁船があります。そのうち99.8%から99.9%が、もう国のデータベースに登録されました。操業の許可証も、対象となる7万7千隻余りのうち、96%以上に発行されています。多くの省では、漁船への標識付けや許可証の発行が、100%終わっています。

これは国全体で取り組んだ成果です。ファム・ミン・チン首相が陣頭指揮を執っています。毎週、各省庁を集めて会議を開いているのです。11月13日の会議で、チン首相は次のように語りました。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 9ファム・ミン・チン首相

チン首相:「各省庁、地方の責任者は、しっかりと責任を果たさなければなりません。もし漁船の違反を再び許し、イエローカード解除を遅らせたら、政府と首相に対して全責任を負うことになります。IUU対策強化月間、これを全力で実施しなければなりません。違法操業を直ちに終わらせる。何としてもです。ベトナムの水産業を持続可能なものにするため、国の名誉のため、国民の利益のため、責任ある漁業、原産地が追跡できる漁業、これを実現しなければなりません。」

政府の取り組みに加えて、最新技術も活用されています。軍系の通信大手Viettelが、漁船の監視システムを整備しました。このシステムでは、すべての漁船がどこで操業しているか、リアルタイムで把握できます。地方で集めた情報は中央とも共有されます。もし船が海域の境界を越えそうになったり、位置情報の信号が途切れたりすれば、すぐに警告が出る仕組みです。

ベトナム人民軍副総参謀長、レ・クアン・ダオ氏は次のように述べています。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 10ベトナム人民のレ・クアン・ダオ副総参謀長
ダオ副総参謀長: 「軍通信グループViettelは、国境警備隊および農業環境省と連携し、現在存在するすべての船舶のデータをデジタル化しました。同時に、公安省と協力して公安省の国民管理データのデジタル化を進めています。今後は漁港での電子申告を通じて、出入港を完全に管理できるようになります。」

Viettelのシステムは、漁業管理を大きく変えました。漁船の動きをリアルタイムで把握できるようになり、管理は格段に近代化しました。これでベトナムは、ECが求めるIUU対策の要求に、一つ一つ確実に応えていくことができるようになったのです。

海上警察には「漁民とともに」という取り組みがあります。来年で9年目になるこのプログラムは、確かな成果を生んでいます。海上警察が漁民に寄り添い、ルールを丁寧に伝える。その結果、漁民は安心して沖合に出られるようになりました。ルールを守った操業が、結果的にベトナムの海を守ることにもつながっているのです。

国防省IUU対策指導委員会委員長をつとめるベトナム人民軍のタイ・ダイ・ゴック副総参謀長は次のように述べています。

軍が協力してIUU対策に取り組む - ベトナムの主権保護と、漁業の持続可能な発展を推進 - ảnh 11ベトナム人民軍のタイ・ダイ・ゴック副総参謀長

ゴック氏:「軍は今、地方行政府や関係部隊としっかり連携しています。広報活動を強化し、法律の教育も進めています。船の持ち主、船長、漁師さんたち、みんなに国の法律を守ってもらう。その意識を高めることに力を入れているのです。そして国境警備隊や海上警察と一緒に、『3ない』船、条件を満たしていない船ですね、こうした船は厳しく管理して、操業を止めさせています。」

ECの『イエローカード』を解除してもらうため、沿岸地域でも動きが活発です。漁業をやめる人には、別の仕事への転換を支援します。古い船は解体します。ルールを守れない船の持ち主にも、他の仕事に転職できるよう手助けしています。国が持っている漁船のデータも、正確なものに整理し直しています。

こうした取り組みで、成果が出始めています。軍と地方行政府が協力することで、違反は大きく減りました。漁民もルールを守って操業するようになりました。そして何より、漁民が安心して海に出られるようになったことが大きいのです。ECのイエローカード解除に向けて、国全体で協力する体制が整ってきました。

(音楽)

MC:IUU、違法漁業の問題。これは単に魚の獲り方の問題ではありません。海の安全、国の信用、漁民の暮らし、すべてに関わる大きな問題です。

だからこそ、政府も地方も、そして軍も、みんなで取り組んでいます。特に軍の役割は重要です。広い海を監視し、ルールを守らせ、領海を守る。軍が積極的に動くようになってから、違反は大きく減りました。漁場も落ち着いてきました。

そして何より大切なのは、これからです。漁民が安心して、ずっと漁業を続けられる。そんな環境を作ること。その土台が、今、できつつあるのです。

(番組終了)

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