テイグエン地方のドラ文化

(VOVWORLD) - ドラの音は、人の心や思いを表しています。人間の悲しみ、喜び、怒り、期待などを示したり、テイグン地方の歴史を物語ったりします。

山崎 こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン こんにちは、ソンです。山崎さんは、ドラはわかりますか?

山崎 楽器のドラですか?吊り下げられた円盤みたいなのをばちで叩いて音を鳴らすものですよね?

テイグエン地方のドラ文化 - ảnh 1

ソン そうです。この前、テレビでドラの演奏を見たんですが、とてもおもしろかったんです。ベトナム中部高原地帯のテイグエン地方に住む少数民族の伝統的なものでした。

山崎 それは、ユネスコの無形文化遺産になっているものでしたっけ?

ソン そうです。テイグエン地方の少数民族の重要な文化の一つです。

山崎 確か、ベトナム中央高原におけるゴングのなんとか、長い名前なんですよね(笑)。

ソン そうですね(笑)。ゴングの文化的空間、です。今日のハノイ便りは、そのテイグエン地方のドラ文化についてお伝えします。

山崎 ユネスコに登録されているのはゴングという言葉ですけど、ドラの方がよりわかりやすいですね。

ソン はい。ちなみにユネスコの無形文化遺産には2005年に登録されました。

山崎 そのドラの文化はいつ頃からあるんでしょう?

ソン 専門家の話では、いつからというのは特定できないものの、3500年前から4000年前に生まれたという説があります。

山崎 中部高原地帯というと、具体的にどの辺になりますか?

ソン はい。コントゥム省、ザライ省、ダクラク省、ラムドン省、ダクノン省の5つの省になります。

山崎 ドラの文化は少数民族のものということでしたけど、何族でしょう?

ソン テイグエン地方には17の少数民族がいますが、バナ族、ソダン族、コホ族、エデ族、ザライ族など、この地方に住むほとんどの少数民族の文化です。テイグエン地方の最も特徴ある共通文化と言えます。

山崎 へえ。この地方のほとんどの少数民族の文化。それだけ、昔から人々の生活に根差してきたものなんですね。

ソン そうです。ドラの音は、人の心や思いを表しています。人間の悲しみ、喜び、怒り、期待などを示したり、この地域の歴史を物語ったりします。

山崎 すごい。まさに音で語る、ですね。歴史も表現できるなら、人の一生もドラの音で表せそうですね。

ソン そうなんです。テイグエン地方では、新しい命を迎える儀式や亡くなった人を神の世界へ送る儀式をはじめ、さまざまな冠婚葬祭にドラがよく使われています。

山崎 ドラは何か仲介役ということなんでしょうか?

ソン はい。人間と神との橋渡し役で、ドラを通じてその二者が感情や意思を交わすことができると信じられています。

山崎 だから、地元の人にとって、ドラは欠かせないものなんですね。ベトナム民間文化研究所の元所長(ゴ・ドク・ティン)の話です。

(テープ)

「テイグエン地方の人にとって、ドラは神とのコミュニケーション手段です。儀式などでは、ドラは人間の代弁者で、人の願望を神に届けるという役割を担います。」

山崎 ドラの文化は、その地方の信仰と言えるかもしれませんね。

ソン そうです。地元の人は、それぞれのドラの中に神が宿っていると考えています。ドラが古ければ古いほど、その神の力は強くなります。

山崎 というと、代々受け継がれたものが、より価値があるんですね。

ソン はい。貴重な財産です。親から子へと渡されます。昔は、ドラが2頭の象、あるいは20頭の水牛に相当する時代もありました。

山崎 すごい。その例えはわかりやすいですね。ドラは冠婚葬祭に欠かせないということですが、どのように使われますか?

テイグエン地方のドラ文化 - ảnh 2

ソン 祭りの主役となります。よく見られるのは、地元の人がドラの音とともに大きな火を囲んで踊ったり、地酒を飲みながら会話するというものです。

山崎 BGMと言うと軽い感じがしてしまいますが、ドラで大切な雰囲気が作り出されますね。

ソン はい。神が宿るドラの音は、神秘的な感じをもたらします。

(テープ・ドラ演奏)

山崎 ドラの音ですね(感想)。

ソン テイグエン地方で数千年の歴史を持つドラ文化ですが、信仰的な面と、そして楽器としての演奏は芸術性が高いと言われています。

山崎 ドラは1種類ではないですよね?いくつぐらいあるんでしょう?

ソン たくさんあります。民族や地方によって、特徴も違います。1つ1つ打つものもありますが、セットでの演奏が多いです。2つから12、あるいは、ザライ族のドラのように18から20個ものドラセットを一斉に打つこともあります。

山崎 ドラセット。私、ドラは単純にゴーンという音かと思っていましたけど、トーン、音階を持ってるんですか?

ソン はい。テイグエン地方のドラの楽団は、オーケストラのような構成になっているものがあります。様々な音色でいろいろな曲を奏でることができます。

山崎 これも、へえー、ですね。オーケストラのようなと言うと、それぞれが違う種類のドラを担当するんですか?

テイグエン地方のドラ文化 - ảnh 3

ソン そうです。1人が1つずつ自分のドラを持つんです。ばちを使うドラもあれば、ばちがないドラを持つ人もいます。サイズによって音色も違うので、そのハーモニーは非常に芸術的です。

山崎 なるほど。意外でした。シンプルな打楽器かと思ったら、その音やリズムは様々なんですね。

ソン はい。数千の演奏パターンがあると言われています。あらゆる儀式で使われるバリエーションを考えると、それぐらいです。

山崎 数千。そんなにあるんですね。先ほどのベトナム民間文化研究所元所長(ゴ・ドク・ティン)の話です。

(テープ)

「テイグエン地方のほとんどの少数民族にはドラ文化がありますが、その打ち方、特に音色はかなり違います。そのため、音を聞けば、どこの民族のドラかすぐ分かります。こういった音のバリエーションが、テイグエン地方のドラ文化の豊かさにつながっています。」

山崎 ドラ文化の保存活動はどうでしょう?順調ですか?

ソン (コメント)

山崎 ユネスコの遺産に登録されても、それを守っていくのはなかなか簡単ではないかもしれません。他の伝統文化とともに、がんばって守って行ってほしいです。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ベトナム中部高原地帯テイグエン地方のドラの文化についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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