(VOVWORLD) - 「ドンホー」木版画をユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録するための申請書作成はまもなく始まるようです。
ホアイ こんにちは、ホアイです。
ソン こんにちは、ソンです。先ごろ、文化スポーツ観光省は、北部バクニン省の有名な民間絵画である「ドンホー」木版画をユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録するための申請書作成に関するバクニン省人民委員会の提案に賛成しましたね。
ホアイ はい。ドンホー木版画は、バクニン省トゥアンタイン県ドンホー村の村人の伝統職業であり、礼拝と祝福用の絵のほか、歴史、昔話、人間の生活などをテーマにしていますが、現在、この版画制作の職人と版画を楽しみたい人がとても少なくなっていることから、消滅の危機に直面しています。
ソン そのため、今回ユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録することはこの版画の保護を強化することが狙いです。今日のハノイ便りは、そんなドンホー版画とその保護についてお伝えします。
ドンホー版画「ネズミの結婚式」 |
ホアイ まず、ドンホー版画についてご紹介しましょう。
ソン はい。ベトナムでは、木版画を制作する地域はいくつかありますが、やはりバクニン省のドンホーが一番有名ですね。
ホアイ 世界的にも知られていると思います。ドンホー版画は、ハノイから東へ35キロのところ、バクニン省ドンホー村のもので、そのまま名前になりました。ドンホー村は200世帯ほどの小さな村です。
ソン 北部の諺には「所帯を持つお嬢さんよ、僕と一緒にドンホー村に来てね、僕の村には美しい川も木版画もあるよ」と言うのがあります。この諺はドンホー村の美しさやベトナムの精神を表すものです。
ホアイ ドンホー版画は16世紀頃からあると言われています。そして、17世紀から18世紀にかけて、版画の制作が最も発展したといわれています。
ソン ドンホー版画は、元々お正月を彩る版画として飾られてきました。昔、貧しかったベトナム人の各家族はせめてお正月だけでも華やかに彩りたいという思いから生まれたと言われています。ベトナムの生活、風物詩、教訓、風刺などが描かれ、ベトナム語を表記するために漢字を応用して作られた文字、チュノムで書かれた文字が添えられた版画もあります。
ホアイ ドンホー版画独特の価値はその木版と色彩、及び、版画のモチーフにあります。その中には、原材料が全部環境にやさしいという価値があります。紙は木の皮から、色は海のカキや石、花から取れます。また、印刷用の版は木製ですからね。
ソン そうですね。ドンホー版画は18のテーマがあります。具体的には、祀りごとの絵、歴史、人間の生活、昔話のテーマなどがあります。例えば、順調畜産を祈るため、豚や鶏の版画をかけます。そのほか、豊かな生活を祈願して『栄華・富貴』という絵がかけられます。また、春、夏、秋、冬の四季を描いた版画集も人気がありました。
ホアイ ドンホー版画を見ると、昔の庶民の日常生活、民間遊戯、生産活動、祭りなどを理解することができますね。また、ドンホー版画を通じて、日常生活の教訓や善悪を教えますが、ドンホー版画は見る人によって、様々な見方ができます。年齢や生活経験により、理解の仕方も違いますね。
ソン そうですね。例えば、豚の版画は繁殖力のある親豚と子豚を描き、「子孫繁栄」を表現しますが、農民の立場から見ると、飼育用の子豚の選び方を教える版画とされていますね。
ドンホー版画「親豚と子豚」 |
ホアイ そうですね。ドンホー版画は手すきの紙に版木を使って5色刷りしますが、これは「陰陽五行」という東洋哲学の原理を示しています。
ソン また、色合も植物から採った4~5色の天然素材で手刷りです。50年間にわたり、ドンホー版画を作っている職人グエン・ティ・オアンさんの話です。
(テープ)
「朱色を作るため、レンガを磨きます。黒色を作り出すには、竹の葉を燃やします。黄色はエンジュの花の蕾から作られます。緑には柔らかい木を画材にするなど、すべては天然素材です。」
ソン そして、版画に使われる紙は「ゾー」という木の皮から作られています。ゾー紙と呼ばれています。ゾーという木は、ベトナム北部のクアンニン省、トゥエンクアン省、タイグエン省にしかありません。この木の皮はやわらかく、丈夫な上、墨などで書いても、色褪せしにくいと言われています。
ホアイ いいことずくめの素材ですね。
ソン そうなんです。さらに、ゾー紙の色の乗りを良くするために、特製糊を表面に塗ります。そうすることで、普通の手すき紙にはない、独特の光沢が出るんです。
ホアイ ゾー紙に、砕いた貝殻ともち米を混ぜて作った糊を塗ると白くなります。日差しに当たると、少し干すだけで固くなります。でも、風が吹くと、すぐだめになってしまうんです。ゾー紙の作り方はシンプルですが、難しいみたいですね。
ソン そうですね。こうしたドンホー版画はベトナムならではの文化の一つとされていて、外国人にとっても魅力的なものとなっていますが、消えてゆく恐れがありますね。
ホアイ そうですね。昔はドンホー村の多くの人が木版画制作に携わっていたんですが、現在は版画で生計を立てている家は2軒だけになってしまいました。戦争の影響や、版画の需要が少なくなっていることが理由です。
ドンホー版画作りを体験している生徒たち |
ソン こうした事態を前に、ベトナム政府は、この版画の保護に力を入れています。
ホアイ 2013年には、ドンホー版画が国の無形文化遺産として認定されました。版画制作に関わる人が少なくなっている中で、国のこの認定は重要ですね。
ソン そうですね。そして、先ごろお話ししましたように、「ドンホー」木版画をユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録するための申請書作成はまもなく始まるようですね。
ホアイ もし、このリストに登録されれば、ドンホー版画の保護事業は国際社会からより大きな支援を受けられるようになりますね。伝統的な民間絵画の研究者グエン・フー・ベトさんは次のように話しています。
(テープ)
「ユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録することは重要な意義があります。まずは、ドンホー版画の保存・開発に対する人々の認識を向上させることです。また、伝統文化の保存に関する世界各国の技術と経験を活用してドンホー版画の保存を一段と強化することができると思います。」
ホアイ これから、ドンホー版画は、外国人がお土産として買うだけでなく、昔のように、庶民が正月に家を飾るために買うようになることを期待しだいですね。ではおしまいに、一曲をお送りしましょう。
(曲)
「 」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ドンホー版画とその保護についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。