(VOVWORLD) - ベトナムでは、お餅はほとんどの地方で作られますが、ハノイ郊外のトゥオンディン村のお餅「クアンガイン」が一番有名です。
ホアイ こんにちは、ホアイです。
ソン こんにちは、ソンです。今年の3月のハノイ便りで、ベトナムのお餅についてご紹介しましたね。
ホアイ そうですね。お米を主食とするベトナムと日本はお餅文化を持っていると言えます。その文化の中には相違点がありますが、類似点もたくさんありますね。
お持ちをつくっている女性たち |
ソン そうですね。ベトナムでは、お餅はほとんどの地方で作られますが、ハノイ郊外のトゥオンディン村のお餅「クアンガイン」が一番有名です。では今日のこの時間は、「クアンガイン」のお餅についてお伝えします。
ホアイ はい。3月のハノイ便りで、ベトナムのお餅をご紹介しましたが、今回はまた、簡単にご紹介しましょう。
ソン はい。まずお餅はベトナム語で「バインザイ」(Banh Day)といいます。ベトナムのお餅バインザイはモチ米を炊きご飯をよく潰してからつくるもので、お雑煮にする日本のお餅に似ています。
ホアイ ベトナムのお餅は丸いので、関西方面でみられる丸い餅に似ています。日本では、四角いお餅は焼いて食べる地域が多いようですね。これに対し、ベトナムではお餅を焼くという習慣がありません。茹でるだけです。
ソン そして、ベトナムのお餅はお肉を乗せて食べるのが一般的です。ベトナム風のハムを2枚のお餅の間にサンドイッチのように挟んで食べるので、「ハムはさみ餅」(サンドイッチのモチ版)と呼ばれています。こうした「ハムサンド餅」は多くの人にとって好きな朝ごはんになっているようですね。
ホアイ そうですね。日本のお餅とベトナムのお餅のもう一つの違いとして、日本のスーパーで売られているお餅は冷凍お餅ですが、ベトナムには冷凍がなく、ほとんどが手づくり、それも造りたてのナマ餅です。
ソン こうしたお餅はベトナム文化を支える一つの要素であり、ベトナムの昔話でよく登場しますね。
ホアイ そうです。お餅の誕生に関する伝説はベトナム民族の美意識を示すものだと評されています。その伝説をもう一度紹介しましょうか。
ソン はい。言い伝えによりますと、ベトナムの最初の国家とされるバンラン国の第6代フン王(雄王)には、20人の息子がいました。王は跡継ぎを選ぶために、息子達に世界中から珍しくて美味しい食べ物を探すよう命じました。王子たちは遠い所まで食べ物を探しに行きましたが、18 番目の王子だけは、夢に見た神様のお告げ通り、大地を表す四角いバインチュンと、天を表す丸いバインザイを作って、王に捧げました。それ以来、バインチュンと、バインザイはご先祖に捧げる神聖な供え物となり、旧正月テトの欠かせない料理となったのです。
ホアイ 実はバインチュンはもち米の中に緑豆の餡と豚肉が入っています。これをラーゾンというバナナの葉に似たゾンの葉で巻いて、10時間ぐらい茹でるので、お餅の一種ですね。
ソン はい。バインチュンとバインザイのほかにも、お餅は種類がたくさんありますね。地方によって形や味が異なりますが、その中のクアンガインお餅は最も有名なお餅の一つです。
ホアイ クアンガインお餅は、ハノイ郊外のトゥオンティン県トゥオンディン村の特産ですが、この村の中心にあるクアンガイン通りで売られていることから、その名前になりました。
ソン トゥオンディン村のお餅は500年の歴史があるとみられていますが、500年の間、お餅の作り方はあまり変わらないと言われていますね。
ホアイ そうですね。その美味しいお餅を作るためのコツは代々に引き継がれているんですね。
ソン そうです。クアンガインの餅は3種類あります。緑豆などを煮て砂糖を加えて絞った甘い餡の餅、挽き肉やシイタケなどを具にした餅、そして、餡などがない普通のお餅という3種類です。それぞれのお餅は異なる美味しさを誇っていますが、その共通点は、もち米から作られたお餅そのものの美味しさですね。
緑豆の餡 |
ホアイ そうですね。お餅の美味しさに最も必要な要素はそのもち米です。クアンガイン餅は、ハノイから南へ150キロぐらい離れたところにあるナムディン省ハイハウ県のもち米から作られます。この地方は美味しいもち米の産地として知られているからです。
ソン そして、緑豆を原料とした餡のあるお餅の場合は、緑豆を選ぶのもとても重要だそうです。クアンガイン餅の職人グエン・ティ・トゥアットさんの話です。
(テープ)
「餅づくり過程の中で、最も重要なのはもち米を選ぶことです。もち米はナムディン省ハイハウ県産でなければなりません。もち米を2時間水に漬けてから蒸します。そして、緑豆も重要です。タインホア省で採れた緑豆が一番おいしいですよ。」
ソン 餅づくりは大変なことのようです。クアンガイン餅の賞味期限は作ってから24時間以内なので、夜のうちに作らなければなりません。冬は夜9時ごろから作り始めますが、蒸し暑い夏は、腐るので、朝1時から作り始めるのが一般的です。
ホアイ クアンガイン餅のベテラン職人グエン・ヴァン・ヴィンさんは次のように話しています。
(テープ)
「トゥオンディン村のお餅はほとんど、クアンガイン通りの店で売られますが、売れていますよ。村には、お餅を作る世帯が50戸ほどあります。現在は機械を使うので、かつてほど大変じゃないです。我が家は毎日、約20キロのお餅を作っています。甘い餡の入ったあるお餅には、砂糖やココナッツ、ゴマ、バナナ油などがありますが、挽き肉などを具にしたお餅はお肉のほか、こしょうや玉ねぎを入れます。」
ホアイ こうしたクアンガインお餅を作るトゥオンディン村の人たちはいつも、その職業を誇りに思っています。特に、2002年に、この村の職人たちは、ベトナムの建国の祖フン王を祀るお祭りを機に、フン王にお供えする大きいお餅を作ったそうですね。
ソン そうです。このお餅はベトナム史上最大のお餅として認定されていて、トゥオンディン村の人たちの大きな誇りとなりました。先ほどの職人グエン・ティ・トゥアットさんの話です。
(テープ)
「2002年に、フン王にお供えしたお餅を作るため、村人が全員徹夜して心を込めて作りました。その重さは1800キロでしたが、1300キロのもち米を使いました。そして、旧暦の2月7日は村のお祭りで、それぞれの世帯は村の守護神にお供えするお餅を作ります。村人の健康と幸運、そして、この職業の繁栄を祈りますからね。」
ソン お餅はトゥオンディン村の誇りであり、村人の主たる生計でもありますね。500年の歴史を持っているトゥオンディン村のこの職業はこれからも代々引き継がれることでしょう。ではおしまいに、「我が村のおコメ」をお聴き頂きましょう。
(曲)
「 」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ハノイの特産クアンガインお餅についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。