ベトナムの革命音楽

(VOVWORLD) - フランスとアメリカに抵抗した戦いで、革命音楽は民族解放精神を支えてきたと言われています。
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山崎 こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン こんにちは、ソンです。先週のハノイ便りで、ベトナムの音楽についてお伝えしました。

山崎 はい。これまでのベトナム音楽を振り返りました。ベトナムの音楽史の始まりから現在のベトナムポップス、Vポップまで、それぞれの音楽がどうやってできたかとその特徴について、ご紹介しました。

ソン その中でも、ニャックカックマンはベトナム音楽史で欠かせません。

山崎 革命音楽ですね。長い戦争から革命音楽が生まれたんですよね。

ソン そうです。フランスとアメリカに抵抗した戦いで、革命音楽は民族解放精神を支えてきたと言われています。今日のハノイ便りは、先週より掘り下げて、そのニャックカックマン、革命音楽についてお伝えします。

山崎 革命音楽の誕生は、1945年くらいでしたか?

ソン はい。およそ80年にわたってフランスの植民地だったベトナムは1945年の8月革命に勝利して、9月2日に独立を宣言しました。そのため、革命音楽は1945年に始まったとよく言われていますが、実は初めての革命音楽とされるのが、1930年に作られた「赤軍とともに歩もう」という歌なんです。

山崎 通説より大分早い時期ですね。

ソン そうですね。これは1930年にべトナム中部で起きたゲティン・ソビエト蜂起への参加を呼び掛けた歌です。ゲティンはゲアン省とハティン省の意味で、ソビエトはロシア革命の時にできた評議会の名前です。そのソビエトをモチーフに農民や労働者、知識階級が起こした抗議運動です。

山崎 なるほど。だから歌のタイトルに、ロシアの軍隊の赤軍が入ってるんですね。

ソン そうです。でも、この歌がよく歌われたのは1945年からなんです。

山崎 やはり、独立宣言という重要な出来事があったからですね。それで、革命音楽は1945年に始まったと言われている訳ですね。

ソン はい。その革命音楽にも3つの時期があるんです。最初は1945年から1954年までです。第一次インドシナ戦争の時期です。

山崎 1945年にベトナムが独立を宣言した後も、それが認められなかったんですね。

ソン そうです。そのため、1946年から1954年まで戦争になりました。この時期の前半に作られた歌は、1930年代に始まった新しい音楽という意味のタンニャックの影響を大きく受けました。

山崎 先週もやりましたけど、タンニャックは、それまでの伝統音楽とは違う音の作りなんですよね。今の一般的な音楽と同じ、1オクターブに7つの音が含まれる西洋音階を使う音楽ですね。

ソン はい。タンニャックは曲のテーマも恋愛などを歌っていて、メロディーも優雅な感じでした。この流れがあったので、初期の革命音楽は革命の精神がテーマですが、曲調はエレガントなものが少なくなかったんです。

山崎 なるほど。いきなりガラッとは変わりませんよね。段々変わってきたんですか?

ソン はい。後半の歌はメロディーが強い感じで、聞いている人を元気づけるものが多くなりました。革命音楽の次の時期、第二段階は1954年から1975年までです。

山崎 アメリカとのベトナム戦争の時ですね。

ソン そうです。この頃になると、優雅な曲調はなくなって、戦いを鼓舞する歌詞が使われました。

山崎 戦争が激しかったからですね。

ソン そうですね。第二段階の革命音楽は、侵略者との闘いを歌っています。国民と兵士たちを奮い立たせて、ベトナム共産党やホーチミン元主席、民族の英雄を称えたりする内容です。

山崎 いわゆる軍歌、ですね。

ソン そうです。そして、革命音楽の3番目の時期は、ベトナム戦争が終わった1975年から1990年頃までとされています。

山崎 国が戦後復興、元気になっていく時期ですね。

ソン はい。国やふるさと、労働精神などを称賛する曲が多いです。この時代の曲のもう一つの特徴は、民謡や伝統音楽をベースにしているということです。

山崎 なるほど。その流れはわかりますね。平和や安定を求める曲調でしょうか。そして、そこから、1990年代に入ると、Vポップの誕生になるんですね。

ソン そうですね。欧米のポピュラー音楽の影響を受けて、ベトナムのポップスが発展してきました。

山崎 革命音楽を聴く人も少なくなっていったんですね。

ソン はい。でも、ここのところ、革命音楽に興味を持つ人が増えているんです。学校の文化祭や歌のコンテストでよく歌われるようになりました。

山崎 何ででしょう?何か理由があるんでしょうか?

ソン それについて、南部にあるキエンザン省の学生が話しています。

(テープ)

「私の学校の芸術活動では、革命音楽は重要です。国について考えさせられます。革命音楽を聴くと、愛国心が強くなるという気がします。平和な時代に生まれた私達は、革命音楽の一部しか理解できないと思いますが、歌う時は心を込めて歌います。革命音楽は今でも価値があるものだと思います。」

ソン この数年、革命音楽の新しい流れが出ていると言われています。

山崎 革命音楽はなくなったんじゃないんですね。どんな流れですか?

ソン ベトナム東部海域、いわゆる南シナ海問題が深刻になってから、国の海と島をテーマとした曲が多く作られているんです。

山崎 ベトナムの領有権を守ろうという歌ですね。

ソン そうです。国民も関心を持っていて、メディアでもよく取り上げられています。海と島に関する多くの歌を作った作曲家の話です。

(テープ)

「戦時中は、そのままの気持ちを曲作りに反映できますが、今の時代は、工夫や努力が作曲家に求められています。もちろん、状況に関わらず心を込めて曲を作りますが、戦争がない今は、身近なものをテーマにしています。例えば、海と島に関する曲では、離島に駐屯している兵士とその家族の話などを取り上げます。平和な時の兵士達も多くの犠牲を払っていることを伝えたいと思っています。」

ソン 時代とともに革命音楽も変わっていますが、その存在は以前と同じようにベトナム人の心にあります。

山崎 そうですね。平和な時代だからこその革命音楽に対する気持ちを話していた学生のコメントが印象的でした。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ベトナムの革命音楽についてお伝えしました。そして、ソンさんとお伝えしてきたハノイ便りですが、来週からはソンさんとホアイさんの担当になります。私は、おしゃべりタイムと日曜FMを担当します。まだVOVのお手伝いはさせて頂きますので、リスナーのみなさん、よろしくお願いします。それでは今日はこのへんで。


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