文化遺産村の保存活動


山崎 こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナムの昔ながらの村、文化遺産村の保存活動をお伝えします。

山崎 村はランと言うんでしたっけ?そこの集会所はディンですよね。前にハノイ便りでやったのを覚えています。

ソン そうです。小規模の村をランと言います。専門家によると、石器時代、丘陵地帯に住んでいたベトナム人の先祖は稲作を行う為に、平野部へ移ってきました。土地を開墾して、灌漑システムを作り、堤防を築いたりしました。

文化遺産村の保存活動 - ảnh 1
ハノイ郊外にあるチェム村の集会所

山崎 全て、一から作ったんですね。全部手作業でしょうから、たくさんの人の協力が不可欠ですね。

ソン そうなんです。一人、二人や一世帯だけではできません。そこで、大勢の人が、一つの場所に集まって、暮らしながら働いたんです。そういった場所は、集落、ベトナム語でソム(xom)と呼ばれました。それの規模が大きくなってくると、ラン(lang)、つまり村となった訳です。

山崎 なるほど。わかりやすいですね。日本だと村と言うと、単なる行政単位というか、まあ1つのまとまりというイメージですけど、ベトナムの昔ながらの村と言うと、いろいろ特徴があるんですよね。

ソン はい。まず、村の一番外側には堤防があります。そして、村に入る門。中には、番組の初めに山崎さんが言った集会所のディンがあります。庭付きの家があったり、池などもあります。

山崎 ディンはその造りなども貴重で、国の文化遺産となっているものも多いんですよね。

ソン そうです。特に、歴史のあるベトナム北部は、文明や文化が早い時代からあったと言われています。現在、北部のホン川デルタ地域には、およそ3500の村があり、そのほとんどが200年以上の歴史を持っているそうです。千年以上という村もあります。

山崎 千年以上。というと、歴史的な建造物など多くの遺産があるんじゃないですか?

ソン そうなんですが、長期間に渡った戦争や厳しい気候、近代化を優先して開発などを行ってしまったことから、壊されたり、保存状態の悪いものが少なくないんです。

山崎 残念ですね。なかなか元通り、というのも難しいですよね。保存活動はどんな状況でしょう?

ソン はい。国は、昔ながらの村の保存を進めています。修復活動をしたり、外国からの援助も募っています。

山崎 あ、ハノイ便りでお伝えしましたね。日本のJICA国際協力機構や昭和女子大学の支援でディンの修復作業が行われたという。

ソン そうです。ベトナムの村の集会所で最も美しいと言われている北部バクニン省のディンバン村の集会所の修復です。2000年に、支援によって、大掛かりなものが行われました。

山崎 あとは「みんなできちんと守っていこう」という意識ですか?

ソン そうですね。遺産の保存に対する人々の認識がなにより大事です。それを広めていこうといういくつかのボランティアグループができていて、社会の注目を集めています。

山崎 これも前にハノイ便りでご紹介しましたね。ディンの保存活動を目的としているグループがいました。

ソン はい。「ベトナムの村のディン」というグループですね。

山崎 あ、そうでした。言われるとすぐ思い出します。他にも出来たんですか?

ソン そうなんです。「ベトナムの遺産村」というボランティアグループです。

文化遺産村の保存活動 - ảnh 2
「ベトナムの遺産村」の活動

山崎 ベトナムの遺産村。昔ながらの村全体の保存活動でしょうか?

ソン はい。このグループは2007年に、ハノイ建設大学の教師たちによって、小規模の研究グループとして立ち上げられました。

山崎 もともとは研究グループだったんですね。だと、その大学の先生と学生がメインですか?

ソン 今は、それ以外の若者が多く参加しています。このグループの創設者に話を聞いています。

山崎 はい。ハノイ建設大学のファム・フン・クオン教授の話です。

(テープ)

「誰でも歓迎のグループですから、建設・建築関係の人もいますが、そうでない人もいます。私たちは、昔ながらの村が好きで、そこを訪れたいという共通点を持っています。多くの人に伝統的な村を訪れて欲しいと思っています。自分達の熱意が広まって、たくさんの人に遺産村の価値と重要性を知ってもらい、その保存に対する意識を高めてもらいたいです。」

山崎 このボランティアグループ、ベトナムの遺産村は、村の建築物に関する座談会や現地調査など専門的な活動のほか、村の見学や村を題材にした絵のコンテストなど、一般の人が参加できる様々な催しも行っているそうです。

ソン 去年の9月には、北部ナムディン省のハインティエン村で、スケッチ大会が行われました。参加者は、村の集会所や寺、川、古民家などをモチーフに熱心に描いていたということです。出来上がった作品には、それぞれの題材である村の遺産に関する知識と思いが込められていたそうです。

山崎 そのスケッチ大会で最優秀賞を受賞した、ハノイ建設大学5年生の学生(レー・ヴァン・トゥン)の話です。

(テープ)

「私はハインティエン村の寺を描きました。ハノイの古い寺や建築物もたくさんスケッチしてきましたが、ハインティエン村の寺には、他とは違う門があります。村の穏やかな雰囲気の中で、心が落ち着いた状態でこの寺を見れば見るほど、その美しさをさらに実感できました。 」

山崎 ベトナムの遺産村グループは、月に最低1回は昔ながらの村の見学を行っているということです。また、フェイスブックなどを通じて、メンバーを増やしているそうです。

ソン 新しいメンバー(グエン・ティ・ジェップさん)にも話を聞いています。

(テープ)

「遺産村に詳しくなりました。村の貴重なものや建築物のほか、そこに住む人の習慣や生活様式についても、よくわかるようになりました。理解することで、伝統的な村を守っていくための多くのアイデアが出てくると思います。」

ソン ベトナムの遺産村グループは、北部のホン川デルタ地域にあるおよそ50の古い村を調査して、村の遺産に関する資料をまとめる予定です。

山崎 グループの創設者、クオン教授の話です。

(テープ)

「現在、国の遺産として認定されているのは、ハノイのドゥオンラム村と中部フエのフォックティック村だけです。これだけでは、伝統的な村の価値を示すことはできないと思います。より多くの村が国の遺産となるために、その資料作りに取り組んでいます。村の保存方法についても提案しますが、その中で最も重要なのは、地元の人々が主体になってやるということです。」

山崎 そうですね。いくら周りでいろいろ言ったりやったりしても、そこに住む人がどう考えて動くか、ですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ベトナムの昔ながらの村の保存活動をお伝えしました。そして、わたくし3週ほどお休みを頂きます。ハノイ便りは4月16日から復帰しますので、どうぞよろしくお願いします。それでは今日はこの辺で。


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