(VOVWORLD) - 今日のハノイ便りは、水上人形劇の普及に励むある演者の取り組みについてお伝えします。
山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。先月ハノイ便りで、ベトナムの水上人形劇をエジプトでがんばっている女性についてお伝えしました。
山崎 そうですね。面白い話題でした。演目もエジプトの昔話などで、人形も自分で作っているということでしたね。
ソン はい。今日のハノイ便りは、再び水上人形劇についてなんですが、今日はベトナムでの取り組みについてお伝えします。
山崎 本家でもがんばる話ですね(笑)。
ソン そうです。水上人形劇についてはハノイ便りでも何回か取り上げていますが、今日もまず簡単にご紹介します。
山崎 私も詳しくなってきました。ベトナム独自の民間芸能ですね。11世紀頃に生まれて、ベトナムのホン川デルタ地方で発展してきました。初めは、農業に携わる人達の遊びとして始まったんですが、その後、村の祭りなどで上演されるようになってきました。
ソン こうした水上人形劇は世界的に有名で、多くの人を引きつけていますが、この劇を普及させるのは難しいそうです。
山崎 かなり特殊なものですからね。水中、腰までつかって、竿で人形を操って、腕も相当疲れそうですね。
ソン はい。重労働で、高度な技術も必要です。
山崎 あと、舞台作りの条件も難しそうですよね。池など、ある程度、水のあるところでないとできないという。
ソン そうです。水のある環境もそうですけど、水上人形劇の舞台設営が大変なんです。まず、舞台の設備が大きくて、重いんです。そのため、地元以外での公演では、舞台の運搬と組み立てが大変です。
山崎 だから、幅広い普及が難しいんですね。
ソン そうなんです。そこで、水上人形劇をベトナムだけでなく、世界にも紹介したいと思った水上人形劇の演者が、簡単に作れる舞台を考えたんです。今日の主役のファン・タイン・リエムさん、52歳です。
リエム氏
|
山崎 人形劇の演者なんですね。プロだと、いろいろなアイデアがあるでしょうね。
ソン はい。リエムさんは、水上人形劇が盛んなホン川デルタ地方のナムディン省出身で、家が代々、水上人形劇に関わってきました。
山崎 と言うと、小さい頃から、自然と水上人形劇に親しんでいたんですね。
ソン そうです。リエムさんは、職人として人形を作ったり、演者として人形を操る他、劇のディレクターとしても活躍しています。
山崎 水上人形劇のことなら何でもおまかせあれ、ですね。で、リエムさんはどんな舞台装置を作ったんでしょう?
ソン サイズを小さくしたんです。通常の舞台は少なくとも横幅が5メートル、奥行きが4メートルぐらいあるんですが、それが横幅は120センチ、奥行きはわずか80センチです。
山崎 それはかなりコンパクトですね。元の5分の1、4分の1くらいですか?
ソン そうなんです。運びやすくなっています。
山崎 シンプルな工夫ですけど、ベストかもしれませんね。リエムさんの話です。
(テープ)
「一番大変なのは舞台の運搬です。伝統的な舞台だと、輸送費がかなりかかります。それは水上人形劇の普及の妨げとなっています。劇団を招待したいと思っても、数十人のスタッフと重さ数トンの設備などを運ぶ費用がかかるので、できないことがあるんです。そのために、舞台を工夫しました。このミニ舞台なら、例えば、ちょっと余裕のある人だったら、私をアメリカに招待することもできますよ。」
山崎 120センチ幅で奥行き80センチのミニ舞台。運搬方法はどのようになりますか?
ソン 一つの箱に入れてバイクで運びます。
山崎 ええ?バイクですか?そんなにコンパクトなんですね。
ソン そうです。10分ぐらいで舞台を片付けられます。ミニ舞台に使われる人形もミニで、高さは20センチほど。普通の人形の5分の1ぐらいです。ミニ舞台は一人の演者でもできるそうです。
山崎 それだと、本当にどこでもできますね。
ソン そうなんです。この16年間、リエムさんはそのミニ舞台を持って、ベトナム各地や日本、韓国、イタリア、ポーランド、アメリカ、フランスなど多くの国を回ったそうです。
山崎 いいですね。百聞は一見に如かず、ですからね。お客さんは喜ぶでしょう。
ソン そうですね。リエムさんはハノイ市内の自宅でも水上人形劇を行っているんですよ。
山崎 へええ。でも、そのミニ舞台だったらできますね。
ソン はい。ここ数年、国内外の水上人形劇の愛好家から注目を集めています。毎週、4、5回の公演があるからです。
山崎 ハノイのどの辺にあるんでしょう?郊外ですか?
ソン いえ、中心部です。カムティエンという通りの狭い路地裏にあります。
山崎 そんなところにあるなんて、初めての人はびっくりするでしょうね。にぎわってますか?
ソン 自宅での公演は1回30分で、観衆はスペースの関係で、多くても15人程度しか入れないんですが、盛況のようです。
山崎 ハノイには立派な水上人形劇場がありますけど、リエムさんのおうちだと近くで見ることができて、また別の楽しみ方ができそうですね。
ソン そうなんです。注目すべきは、お客さんも公演に参加できることです。それから、人形作りも見られるそうです。
山崎 それはおもしろい。飛び入り参加ですか。人形の操作なんてなかなかできないですから貴重ですね。
ソン そうですね。人形劇では、伝統的なものの他に、交通安全や、環境保護、海と島の領土に関するものなど現代的なテーマも扱っています。
山崎 オールマイティーなリエムさんならではの劇ですね。子供を連れて見に行くという男性(グエン・テ・コアさん)の話です。
(テープ)
「狭い路地裏にあるんですが、外国人もよく来ていますね。週4、5回の公演はすごいと思います。この自宅での他に、いろいろなところでも公演を行っているんですよ。人形も作って売っています。リエムさんの水上人形劇は魅力的です。そうでないと、観光客は来ませんよ。」
山崎 リエムさん大活躍ですね。ベトナム国内での水上人形劇の普及、そして、外国ではベトナム文化のPRをしているということになりますね。
ソン そうです。水上人形劇で、1番有名な演者として知られています。
山崎 リエムさんについて、民族文化保存開発研究所所長(ホアン・チュオン)はこう話します。
(テープ)
「ベトナムならではの水上人形劇を国内外に幅広くアピールするため、リエムさんはミニ舞台を考えました。最初は、海外でもこれが効果的だとは思わなかったでしょう。しかし、ベトナムだけでなく、多くの国でもミニ舞台で公演ができて、たくさんの人を引き付けているんです。」
山崎 舞台を小さくする、というのは非常にシンプルな考えなんですが、その結果はとても大きなものが返ってきましたね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、水上人形劇の普及に励むある演者の取り組みについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。