職業の創始者を祀る集会所~ハノイ旧市街の貴重な遺産
(VOVWORLD) - 人間は文化遺産を作り出します。人間もその文化遺産を保存し、伝統的な価値を次世代に伝えます。ハノイ旧市街の魂を守ることにより、ハノイの歴史が若い世代に受け継がれていくことでしょう。
ハノイでは、千年以上の前の歴史を誇るお寺や、神社、集会所などの神聖な空間が今までも保存され、旧市街の貴重な財産となっています。しかし、それらの遺跡は様々な浮き沈みを経てきたので、変化を見せています。今週のハノイ便りでは、ハノイ旧市街の貴重な遺産である職業の創始者を祀る集会所をご紹介します。
15、16世紀ごろ、北部ハイズオン省ダンロアン村の人たちは、ハノイのハンダオ通りにやってきて、染物業を始めました。当時のハンダオ通りは、布や繊維製品などで有名でした。現在、この通りではダンロアン村の創始者と染色業の創始者を祀る集会所「ホアロクティ」がまだ残っています。ホアロクティ集会所の宮司チン・ティ・トアンさんは次のように話しました。
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「100年前に建立されたこの記念碑には、染色業に携わっていたハイズオン省出身の7家族の名前が書いてあります。彼らは、ハノイにやってきてから、職業の創始者を祀るため、この集会所を建てたといわれています。その7家族の子孫により、集会所は今のようにきれいに修復されました。」
昔、旧市街にあった112軒の宗教・信仰的な施設の中には、60軒の集会所が残っていますが、そのうち、元の状態が保たれ正面から見分けることができるのは10軒しかありません。それらは、刺繡や、鍛冶屋、扇子作り、雑貨業などの伝統職業の創始者を祀る集会所です。
ソンさんの家族は百年以上、鍛冶屋の創始者を祀るローレン集会所の境内に住んできました。ソンさんは、父親と同じ、この集会所の宮司です。ソンさんの話です。
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「フランス植民地時代に、父親や祖父は、ロンビエン橋の建設のため、ここに連れられてきました。そのあと、自分で鍛冶屋を始めました。この通りの数十世帯が鍛冶屋をしていたので、鍛冶の創始者に認定されました。この集会所を保存するため、政府の要求があれば、土地を提供する用意があります。」
一方、消えてしまった集会所もあります。ハンティエク集会所はその一例です。ハンティエク集会所の境内には、ガジュマルの木とトラの神様を祀る社しか残っていません。
ベトナム美術大学の画家グエン・テー・ソンさんは、10年前に、旧市街にある伝統職業の創始者を祀る集会所を視察し、「私は共通の家を探す」というプロジェクトを行いました。今まで残ってきた集会所の写真を数百枚撮ってきました。グエン・テ・ソンさんは次のように話しました。
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「お寺は、仏様を祀るため、神聖な空間です。お寺の回りに住んでいる人々だけでなく、コミュニティ全体にとっても、意義深い存在です。一方、集会所は、市民の共通の家とみなされてきたので、歴史の激しい浮き沈みの中で、傷つきやすく、ほかの目的に使用されてしまった場合もあります。」
幸いにも、こうした中、刺繍の創始者を祀るトゥティ集会所や、雑貨屋の創始者を祀るキムガン集会所などが復元されました。それは、フランスのトゥールーズ市が10年間以上実施したプロジェクトの成果です。
また、旧市街にある集会所で芸術活動を行うことは、これらの集会所がコミュニティ文化センターになることにつながり、これらの遺跡の保存問題の解決策と見られています。ハノイ旧市街管理委員会のチャン・トゥイ・ラン副委員長は次のように語りました。
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「ハンバク通りにあるキンガン集会所では、毎年、伝統職業ウィークを開催します。そこで、伝統手工芸品を紹介するだけでなく、ハノイ郊外にある職業村出身の職人らが交流し、職業の創始者に感謝することを目指し、複数のイベントを行っています。」
人間は文化遺産を作り出します。人間もその文化遺産を保存し、伝統的な価値を次世代に伝えます。ハノイ旧市街の魂を守ることにより、ハノイの歴史が若い世代に受け継がれていくことでしょう。