1世紀の歴史を目撃してきたホーチミン市のオペラハウス
ホーチミン市に足を運ぶ観光客はフランス風建築様式を持つ建物を簡単に見かけることができます。その中で、市内の中心地にあるオペラハウス(市民劇場)もその一つです。
このオペラハウスはホーチミン市のレロイ通りとドンコイ通りが交差する場所にあり、一直線で長いレロイ通りの遠くからでも、ひと目で確認できる位置にあります。
このオペラハウスはフランス統治時代の1898年にオペラハウスとして建てられたものです。19世紀末、フランス第二帝政から第三共和制へ移行した頃の影響を色濃く反映した重厚なバロック建築です。フランス式の都市設計で、主要な通りの起点、目印として大型建築物を配置するビスタという考え方で設置されています。
ホーチミン市の建築家グェン・ヒュ・タイ( Nguyen Huu Thai) さんは次のように語りました。
(テープ)
「フランス人がこの町に来た時、この町をヨーロッパの近代都市として建設する決意があります。特に、フランス人は大規模な道路を建設するなど、主要な通りの起点目印として大型建築物を配置することを好んだのです。このオペラハウスはその建築物の一つです。当時、フランス人が建設した多くの建築は西洋諸国と東洋の建築物が調和された建築様式を持っていました。」
かつてのオペラハウスは、フランス時代からベトナム社会主義共和国、サイゴンからホーチミンへ至るまでの歴史が凝縮されているように思います。建設当時、正面や内部の装飾、調度品はフランスから運ばれて設置されています。第二次大戦後、フランスから独立を果たしたベトナム共和国は分裂し、南北の内戦状態へ陥ります。その時代、南ベトナム共和国政府の下院議員の国会議事堂として使用されるようになります。立法の場に相応しくないと判断されたのか、外観や内部は簡素に改装され、彫刻や調度品は全て撤去されてしまいました。
1975年の南部完全解放の後は、戦争で受けた屋根のダメージなどが修復され、市民のための劇場として利用されました。そして、1995年、サイゴンの市政300周年を記念して、1998年に創建時の復元を開始、改装された外観や撤去された彫像や彫刻、装飾品を復元配置し100年前の姿がよみがえっています。観客席は、約1,800席あります。
現在、ホーチミン市のオペラハウスは市民劇場としてコンサートやバレエ、演劇などの公演で使用されています。また、これはホーチミン市の魅力的な見所の一つです。北部港湾都市ハイフォンの観光客 グェン・アイン・トゥ( Nguyen Anh Tu) さんは次のように語りました。
(テープ)
「このオペラハウスはホーチミン市におけるフランス風建築様式の美しさを示す建築物の一つです。この建築は周りの風景にとてもマッチしています。特に、夜になると、ライトアップされるのでさらに見事に見えます」
ホーチミン市のオペラハウスはこの1世紀におけるホーチミン市の歴史の道のりを目撃してきた建築物であるだけでなく、今日のホーチミン市のシンボルの一つとされています。