テイ族の兄弟関係を結ぶ独特の風習「Ket Tong」
(VOVWORLD) - 少数民族テイ族は、山奥の小さな村に暮らしているのが一般的なので、テイ族の若者は交流を広げ、新しい友達をつくる傾向があります。ある人と出会って、何回も付き合ったあと、類似点があれば、兄弟関係を結ぶ風習があります。「ケットン(Ket Tong)」と呼ばれるこの風習はテイ族の生活における人道的なものです。
テイ族の女性たち |
テイ族の言葉では、「ケットン」の「トン」は「仲が良い」そして「似通う」という意味があります。テイ族の人々は常に、類似点のある人と兄弟関係を結びたいのです。同じ年齢や同じ名前、同じ出身地、同じ志、同じ趣味などの類似点がたくさんあります。しかし、「ケットン」は男性同士か女性同士だけで、男性と女性との兄弟関係を結んではいけません。
「ケットン」の後、2人はもちろん、2人の家族も生活の中で互いに助け合い、悲しいときにも喜びのときにも分かち合うようになります。トイエンクアン省ナハン県に暮らすロック・ニン・タンさんは次のように語りました。
(テープ)
「『ケットン』の式は簡単ですが、その後の2人は、良いときも困難なときも、そして、悲しいとき、喜びのときも、いつも互いに分かち合うのです」
一方、ナハン県民族担当課の課長ホアン・フン・チャインさんは、兄弟関係を結ぶ2人は相手の家族を自分の家族と見なすべきできであると述べ、次のように語りました。
(テープ)
「相手の父親、母親、祖父母、兄弟を自分のそれと見なし、相手を呼ぶときは自分のそれと同様に、呼ばなければなりません。それは昔から伝わる風習なので、我が民族ならではのものとして必ず守らなければなりません。ケットンの後、二人は1、2年間ではなく、死ぬまで互いに訪れ合うことになります」
トゥエンクアン省に暮らすチャウ・ミン・ビーさんによりますと、二人は互いに頻繁に訪れ合い、プレゼントをします。プレゼントは物質的なものよりも精神的なものが多く、二人の強い愛情を表現するとしています。ビーさんの話です。
(テープ)
「訪れるときに、味の素や砂糖、お菓子などを贈るのが一般的です。これらは二人の愛情がいつも甘いものであるようにという希望の現われです」
「ケットン」の後、二人は子供たちに互いの親密な関係について教えることを大切にします。これにより、子供たちは親と兄弟関係を結ぶ人とその家族を大切にし、適切な行いをするようになります。二人とその家族にとってどこにいても何をしても「ケットン」による愛情は貴重で神聖なものです。また、親が亡くなった後も、二人の家族はその関係を維持します。これは、テイ族の文化的アイデンティティを深く示しています。先ほどのロック・ニン・タンさんは次のように語りました。
(テープ)
「たとえ、一人が亡くなった場合でも、両家の関係は何も変わりません。亡くなった人の子どもはまだ生きている人をお父さんと呼ぶのに対し、生きている人は亡くなった子どもを自分の子どものように面倒をみます。両家はその関係をそのまま保てるようにします」
現在、テクノロジーの発展により、兄弟関係を結ぶ二人はスマートフォンのビデオコールを利用して話せるようになりましたが、互いに訪れ合って愛情を示すのです。