テイ族・ヌン族・タイ族の民謡「テン」の保存を目指す取り組み

(VOVWORLD) - 北部山間部に暮らす少数民族テイ(Tay)族、ヌン(Nung)族、タイ(Thai)族の民謡テン(Then)の儀式が2019年12月に、(ユネスコ)国連教育科学文化機関によって無形文化遺産として認定されました。これは民謡テンの儀式の価値を認めるものであり、この儀式を維持・保存するためのモチベーションともなっています。
テイ族・ヌン族・タイ族の民謡「テン」の保存を目指す取り組み - ảnh 1民謡「テン」の歌い手

民謡「テン」はテイ族、ヌン族、タイ族の文化生活と切り離せないものです。これらの民族の言葉で「テン」は天地の「天」という意味ですから、テンを歌う人は村人を代表して、神様に豊作と幸福、豊かな生活を祈る人のことをいいます。

天候に恵まれることを祈る民謡テンのほか、長寿、男女の情愛、幸運などを祈るテンもあります。祭典で演奏されるテンのほか、日常生活で歌われているテンは故郷の旅情や人々の美しさを讃えるものもあります。

民謡テンは山岳地帯の多くの地方で歌われていますが、それぞれの地方によって少し違います。ランソン省の民謡テンは切ないメロディですが、トゥエンクアン省の民謡テンのテンポは速く、そして、ハザン省の民謡テンはゆるやかなリズムです。

テンの儀式は、これらの民族の生活の中での精神的な拠りどころとして欠かせないもので、彼らの人間観、自然界、宇宙観を反映しています。儀式ではテンの長老が供え物をし、病気の快癒や豊作、新年の幸運などを祈願して、民族の言葉で歌ったり、楽器を演奏したりします。女性が集団で踊る群舞もあります。

こうした民謡「テン」を維持・開発するためにどうすればいいのか、トゥエンクアン省チエムホア県タンアン村に暮らすベテラン歌い手ハー・トゥアンさんは常にこのことを考えています。トゥアンさんは自分の生涯をテンの維持・開発に注いでおり、80歳を超える現在も、若者に民謡を伝えようと努力の毎日です。トゥアンさんの話です。

(テープ)   

「かつては、テンの儀式を迷信と見なされたときもありましたが、現在はユネスコの無形文化遺産として認定され、とてもうれしく思います。そのため、若者にテンを教える教室を開くなどして、どうにかして我が民族の独自な文化を守りたいと思います」

テイ族・ヌン族・タイ族の民謡「テン」の保存を目指す取り組み - ảnh 2子どもに「テン」を教えているベテラン歌い手ハー・トゥアンさん

トゥアンさんの教室は若者が民謡「テン」への興味を芽生えさせるのに役立ち、その中の若者の多くは「テン」の歌い手となって、この民謡の維持・開発に貢献しています。

(テープ)

「私は以前から民謡「テン」の歌い方を習っていますが、より多くの歌を歌えるようにと、トゥアン先生の教室に入ることにしました。テイ族の一人としてこの民謡を守りたいからです」

一方、チエムホア県に暮らすベテランの歌い手、ハー・ゴック・カオさんは、テンの儀式は、高い芸術性のほか、教養でもあり、子どもの教育に役立つと述べ、次のように語りました。

(テープ)

「テンの儀式は、道義に反することを指摘し、親孝行や徳行などをするよう人間に働きかけるという役割もあります。私たちは、子ども向けの教室を開いており、これからも、さらに多くの教室を開こうとしています」

他方、ハザン省に暮らす歌い手グエン・スアン・ヒューさんは遠いところにいる若者にも教えるため、オンラインでの教室を開いています。ヒューさんの話です。

(テープ)

「現在は、オンラインでの教室を開いていて、ホーチミン市の人も参加してくれています。また、ユーチューブにも投稿していて、アメリカやドイツの人が興味を持ってくれ、習いたいようです。民謡「テン」は本当に素晴らしいですね」

テンの儀式が2019年に、ユネスコによって無形文化遺産として認定されて以来、テン教室やテンクラブがどんどん開かれており、テンの維持・開発事業の展望は明るいと言えるでしょう。

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